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辞めるのも責任 続けるのも責任
3日間の中日ドラゴンズ沖縄春季キャンプ取材が終わりました。北谷、読谷、北谷での3日間、総歩数42,000。よく歩きました。そして何よりじっと取材対象者を立って待ち続けました。よく頑張った、オレ(笑い)。
書きたいこと、伝えたいことはたくさんあります。きょうのnoteでは、落合英二2軍監督のことを書きます。ドラゴンズのコーチ就任要請を何度も断り、待ち続けた立浪和義監督に請われてヘッド兼投手コーチに就任するも、英二さんの役職はころころ代わり、チームは「6-6-6」。立浪監督と共に辞意を表明、ごもっともだと思います。しかし、就任した井上一樹監督はあきらめませんでした。かつてはお互いの家を行き来し、というより、井上選手が落合選手のご自宅を(勝手に)訪れ、ご夫人の料理でお腹いっぱいになっていた間柄です。車のナンバーもお互いの背番号にちなんだもの。井上監督があきらめるわけがありません。何の役にも立ちませんが、わたしも英二さんに「やりましょうよ、ここで辞めないでください」とLINEを送りました。予想通り「いやいや、どのツラ下げて…」との返信でした。英二さんはまた渡韓するつもりでした。かつて指導していたサムスン・ライオンズは、英二さんがドラゴンズを辞めることを心待ちに(変な表現ですが)していました。放っておかない人材なんです。でも、最後にもう一度ドラゴンズのユニホームでと心奮い立たせのは、立浪前監督からの「辞めるな、一樹を助けてやってくれ」という言葉でした。きのう、落合2軍監督は「タッさん(立浪さん)が『お前が決めろ』と言ったら、辞めていました。『辞めるな』というからなんとかもう一度と思ったんです」と教えてくれました。「どういう関係なのかもう言葉では説明できないし、みんなにわかってほしいとも思わない。でも『辞めるな』と言うから辞めなかったんです。これが本心です」。わたしには理解ができませんが、これがふたりの絆です。
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落合2軍監督は「誰が監督になっても揺るがない育成システムの構築」を目指しています。時の監督の方針に左右されることなく、一貫した「中日ドラゴンズの未来」へと続くレールを敷くことです。いままでドラゴンズは、よく言えば監督に全幅の信頼を置き、悪く言えばすべてをお任せしているように見えました。それではいけない。そのために若手選手を厳しく見極め、誰に何試合、何打席与えるかを明確にし、ふるいにかけていく。みんな平等ではなく、ドラゴンズの未来のために若手選手に厳しさを求めていく。そのために密なコーチ間の連携、現状報告も求めています。
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あと、意識しているのは「伝え方」です。「いまの選手は自分たちの現役時代より間違いなく情報量が多く、処理能力が高い。あと、体の部分部分を取り上げたらかなり鍛えられている。だけど、例えるとシャドーボクシングできれいにパンチを打つことばかりに意識がいって、相手がパンチを打ち返してくることが想定できていない。打ち返されると『どうすればいいんだ?』と困ってしまうことが多い気がする」と言います。なるほど、イチローさんが最近、データ偏重野球への警鐘を鳴らしています。「イチローさんがああやって発信してくれると、やっぱり選手は聞くんです。あれはすごく効果がありました」と落合2軍監督。データは揃っています。そのデータをどうすれば活かすことができるのか、それを選手にどう伝えるのか、そこが落合2軍監督の大きなテーマのひとつです。
でも、ユーモア精神溢れる落合2軍監督ですから、わたしは心配していません。きのうも鵜飼選手のバットのあちこちにボールの跡があったので「(バットと同色の)ペンで周りを塗って、芯だけに当たってるようにしとけよ」と言われ、鵜飼選手も大笑い。落合2軍監督への差し入れがあれば、それを全員でくじ引きにしてゲームとして楽しむ。当たったときにはなんと鐘がなるという本気っぷり。「根尾と金丸は当てると思ったんだよなぁ。あの2人、複数球団競合だよ。くじを当てて『やっぱり違うな〜』と言わせてほしかったよ」と。
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CBCテレビ若狭敬一アナの著書に「右も左も分からない取材現場で初めて声をかけてくれたのは落合英二さんだった」とありました。わたしもそうなんです。入社2年目、当時の主力選手で初めてわたしのことを名前で呼んでくれたのは落合選手でした。うれしかった。そういう気遣いの男です。
もっと書きたいことはありますが、きょうはこの辺りにしましょう。長くなりました。
辞める責任の取り方もあります。でも、続けていい形に持っていく責任の取り方もあります。わたしは落合2軍監督が後者を選んでくれて、本当にうれしいです。未来のドラゴンズのために、英二さん、よろしくお願いいたします。