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謙虚な気持ちで
沖縄県北谷町、読谷村で行われていた中日ドラゴンズの春季キャンプはきょう、打ち上げ。3月1日(土)にはバンテリンドームナゴヤでオープン戦。プロ野球開幕が近づいてきます。今季、中日の大きなポイントのひとつは、巨人に移籍したライデル・マルティネス選手の穴を誰が埋めるのか、でしょう。清水達也選手は順調に調整していますが、松山晋也選手は上半身の張りで少し調整が遅れています。抑えは誰が務めることになるのでしょうか?
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先日、わたしが沖縄滞在中に勝野昌慶選手に、ご自身の調整状況はもちろんですが、「ほかの投手」についても聞いてみました。「すごいですよ、やばいですよ。みんな150キロくらい投げています。リリーフ枠の競争、半端じゃありません」と半分、困ったような笑みを浮かべながら話してくれた勝野選手。そんな中で「この選手」と名前が出たのが藤嶋健人選手です。わたしも1月、ナゴヤ球場で藤嶋選手に話を聞きましたが、連日のようにブルペンに入り、かなりペースアップしての調整が目に留まりました。ただ、藤嶋選手自身は「キャンプインあたりで疲労のピークになって調子を落とし、そこから上げていくといい状態で開幕を迎えられるのでは」と目論んでいました。さて、現状はどうでしょう。
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いつも笑顔で明るい藤嶋選手。ブルペンでの熱投のあとわたしを見つけて「お疲れさまっす!」と声をかけてくれました。「キャンプイン前の2日間、実は全く何もしませんでした。何もしなくて大丈夫かなと怖い気持ちもあったんですけど。それでうまく調子が落ちてくれました。なのでキャンプイン当初は全然でしたけどね。これでうまく状態が上がってくるんじゃないかという手ごたえがあります」。ブルペンではうなるようなボールを投げ込んでいました。9年目の今季、選手会長に就任した藤嶋選手。3年連続50試合以上登板、この4年間の防御率は1点台2度、2点台前半2度。文句なしの数字です。今季もブルペンを明るく支えてくれるでしょう。
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ただ、わたしは聞いてみたいことがありました。それは「抑え」への思いです。藤嶋選手は2019年オフの契約更改で「守護神は目指さないといけないと思っています。チャンスがあるならやってみたい」と語っていました。ライデルがいないいま、絶好のチャンスでは?
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「あるわけないじゃないですか! 昔、言ってましたよね~(笑い)。バカですよ、バカ。ちゃんと実績を積み重ねてから言うものですよ。若気の至りです。お恥ずかしい」。
いやいや、もう実績を積み重ねているでしょう、ご謙遜を。藤嶋選手とわたしも長い付き合いなので、ちょっと意地悪な質問をしてみました。「ライデルの穴を埋める選手として清水や松山の名前が挙がり、自分はそう言ってもらえない。面白くないなと思ったりしないの?」
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「そんな気持ちはま~ったくない! 全くありません。僕なんかまだまだなんです。清水や松山の方が大変な場面で投げてきていますから」と一貫して、謙虚な言葉を続けました。あの明るい、無邪気な藤嶋選手が「大人になったな~」と、オジサンは感心してしまいました。頼もしい限りです。もう何年も前、わたしが担当している番組にゲスト出演した際、意図せず不適切な用語を口走ってしまった危うさはもう微塵もありません(あの時は焦ったよ…苦笑)。「期待されるポジションで、その役割を担えるよう準備するだけです」と、自信に満ちた表情で話してくれました。
藤嶋選手、素晴らしいスピーチです。あなたは本当のチームワークを構築するための、最重要選手のひとりです。