破水? 0205
予定日までまだ1ヶ月ほどある、ある日の朝だった。
「破水かも」
起き抜けの耳には聞きなれない言葉に、
一瞬、電話ボックスの中でわめき叫ぶ出川哲郎の頭上で弾ける水風船の映像が浮かんだ。
「尿漏れかな」
シシ落としのイメージがインサートされるのを
15フレほどでキレ良くカットし、ぼくは飛び起きた。
冷静に淡々と入院の身支度をする妻を傍に、
まずは顔を洗おう、いや顔なんて洗ってる場合か?
寝癖は?似合わないキャップでカイケチュ!なんで赤ちゃん言葉やねん!
とひとりワチャワチャしていた。
ボルボXC40で病院にむかう。
「あそこハイオク安いね」
破水中の妻はいたって冷静だ。
成育医療研究センターにつく。
コロナのせいでぼくは病院に入れない。
「じゃ、いってくるね」
2-3泊の旅行のノリで妻は救急搬入口を徒歩で通過していった。
安いハイオクでボルボを満たし、ぼくはこれからに備えた。