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運命とか立命とか宿命とか⑩

2020年 年が明け、息子は小学校入学を迎えようとしていました。4月に支援学校で入学式が行われる予定でいました。
1月、中国で新型コロナウイルスが発症。瞬く間に全世界に拡大し、国内でも感染者が増え、死亡者も増えてきました。あっという間に生活様式が一変し、4月には緊急事態宣言が発令され、家から出られなくなりました。ついに、入学式は延期という連絡が入り、「息子は小学校に通えるようになるのだろうか?」と心の中で考えていました。
ようやく、緊急事態宣言解除となり、5月に入学式を開催することになり、息子は無事小学生になることができました。息子の通う支援学校には、息子と同じように医療的ケアを必要とする子供が大勢います。
(※医療的ケア児(者)とは、呼吸器、喀痰吸引、胃ろうによる栄養摂取、など生活の中で医療的行為が必要とされる児童、成人のこと)
医療的ケア児でなくても、内臓の疾患があるなど、肢体不自由以外に重い病気を抱えている子供は大勢います。支援学校は看護師常駐で教育と共に医療面のサポートをしてくれています。ですので、コロナ感染拡大となり、学校は大きな局面にぶつかったと思います。子供たちの安全を第一に考え、どのように学校生活を送らせるようにしていったら良いか、先生方は仕組みを一つ一つ見直し、学校内で感染が拡大しないように必死に取り組んで頂いたと思います。息子のクラスには人口呼吸器を付けている子供もいます。私たち親も、例え、うちの子が感染したとしても、絶対に他のお友達には感染させないようにしなくては、、、という考えでした。
とにかく、未経験のことだったので、重症心身障害児で医療的ケア児の息子がコロナ感染したらどうなってしまうのだろう?という漠然とした不安ばかりありました。行政機関の方に、「医療的ケア児の感染症例って集まっているのか?どのような症状になるのか、などの報告はあるのか?」など聞いてみました。しかし、まだまだ始まったばかりの段階で保健機関も厚労省も目の前の情報収集で手一杯の状況でした。
会社の方も、対策を考え、感染防止対策マニュアルや社内で感染者が出た時の対応の方法などを役員で考え、社員と共有するなど、通常業務に影響が極力出ないよう対策していきました。
2020年当初、日々感染者が増加し、毎日発表される感染者数に翻弄されていました。誰もが初めての経験で、特に、重症疾患を持つ人や高齢者のいる家族は、自分が感染者になってはいけないと常に緊張感を持って生活していたのではないかと思います。やがて、7月頃になると、一旦感染者数が減少傾向になり、都心部に住む人たちが、田舎の別荘地やキャンプ地に集まるようになってきていました。世の中にはコロナを「風邪と一緒」とか「感染して免疫がつけば大丈夫」とか言っている人たちがいて、考え方は人それぞれなので、そのような言葉に対して賛成も反対もしませんが、ただ、やはり高齢者や重症疾患のある方々がコロナ感染で多く亡くなっているのは事実です。そういった方々を守るためにも、自分たちだけ楽しければOKとか、無症状だから大丈夫などといった考え方は控えて欲しいなと思います。
うちは、2020年からずっと県内から出ませんでした。2020年の間は学校からも利用している放課後デイサービスからも、遠出を控えるよう言われていましたし、家族で誰か一人でも県外に行く、もしくは県外の人との接触があれば、それを報告してくださいと言われていました。子どもたちを守るために、先生方も親たちも皆そのルールを守っていました。
ようやく最近、少し緩和され、わが家も3年ぶりに東京に行きました。昨年末、息子も私もコロナに感染し、息子は酸素濃度が下がったので、入院し、私も一緒に付き添いで減圧部屋に寝泊まりしました。息子は39度の高熱は出たものの後遺症はなく、1日で熱は下がりました。私も同じく高熱になり2日程たって熱が下がりました。その後、発症から10日経つ頃に退院をしました。コロナ病棟で部屋からは一歩も出れず、高熱の中、子供の医療ケアやおむつ替え、生活の全てを病室で私が行っていました。フラフラしながらでしたが、やるしかありませんでした。というのも、コロナ病棟の看護師さんたちは小児担当ではありません。おまけに、介助の必要な高齢者なども数人入院されているらしく、看護師さんたちは常に忙しく働いてました。そんな懸命な姿を見ていたので、私は自分のことと、息子のことはやらなくてはと思いました。
月日が流れて、以前ほどコロナ感染に対する危機感はかなり薄れてしまっているように感じますが、当初の頃のような漠然とした不安感は無くなりました。息子も一時期呼吸器を使用しましたが、通常生活に戻ることができて、保健師さんに聞くと、高齢者のように危険な状態になった医療的ケア児の報告はほとんどなかったと言っていました。
しかし、多くの方の命が失われ、そして後遺症に現在苦しんでいる方も大勢います。私自身はこれからもインフルエンザのように処方薬が使用できるようになるまでは、気を付けて生活していこうと思っています。

「運命とか立命とか宿命とか⑪」に続きます。


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