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OR逆転裁判コラム②「シナリオ(ムジュンのつくりかた)」

※今回は分量が多いため《タクシュー節》はひかえめです
※本家の軽いネタバレと、OR裁のトリックに関するネタバレがあります。




「《タクシュー節》を盛れなくても裁判は作れるが、
 ロジックを組めないと裁判は作れない」‥‥

逆転裁判では、プレイヤーは「ムジュンの指摘」しかできません。
そしてムジュンは”点”にすぎないため、これをロジックという“線”で、《真相》までつなげないと、プレイヤーは「推理」に参加できないのです。

テキストは無理ならあきらめてもいいんです。
トリックは無理なら古典ミステリから引用すればいいんです。
でも、ロジックをあきらめると「裁判」として崩壊します。
そもそも法廷バトルは論理の戦いです。ピンチもチャンスも逆転も、すべてを《論理》で表現しなければなりません。

証人に延々と無意味なウソをつかせて、尋問回数を5回くらい稼いだあと、弁護士がトツゼン、無から真相を“発明”する。
最後にとってつけたような「発想の逆転」をしたあと、
ふてぶてしく笑って完‥‥。

ふつうに逆転裁判を作ると、かならずこうなります。
長玉も最初の半年はこういうシナリオばかり書いてました。
ムジュンの指摘がただの尺稼ぎにしかなっておらず、
指摘してもゼンゼン《真相》に近づかない。
かと思ったらトツゼン弁護士が《真相》を発明してしまう。
いったいプレイヤーはなんのためにムジュンを指摘したんだ‥‥?
だったら最初から《真相》を発明すればいいのでは‥‥?

1話は別にいいんです。最初から真相解明に向かっていけるので。
でも2話と3話は基本的に「2日制」の裁判を書く必要があります。
この「1回目」の裁判がむずかしいのです。
真相は解き明かせないけど、真相に近づかなきゃいけない。
つまり真相に向かうための「積み重ね」ができないと、「1回目」の裁判にシナリオ的な意味を持たせられず、上記の「尺稼ぎ裁判」が生まれます。
これができない場合は、裁判を1日制にまとめたり、2日それぞれで別の事件を扱う方法もありますが、二次創作ならやはり王道を往きたいですよね。

そこで裁判のつくりかたを
①「ムジュンのつなぎかた」
②「ムジュンのつくりかた」
③「シナリオのつくりかた」
④「アイデアの出しかた」
にわけて、研究していきます。

①【ムジュンのつなぎかた】
本家1-2「逆転姉妹」のムジュンを例にセツメイします。
軽微なネタバレなので、気になる方はバックしてください。

「被害者は”左”に逃げた」という小中の証言に、
「被害者は”右”に逃げた」という梅世の証言をつきつける。
 →小中は現場から被害者を見たため、左右が逆転した。
 →小中がハンニンである

「右と左」というシンプルなムジュンから、
「真犯人」があばかれるというショーゲキ的な展開。
‥‥これが「ムジュンのつなぎかた」の”お手本”です。

ムジュンを指摘するのはプレイヤーのシゴト。
ムジュンを説明するのは作者のシゴトです。
ここでただ「アハン‥‥カン違いだったよ」と返すだけだと、シナリオが進まず、ただの尺稼ぎにしかなりません。

また、作中でムジュンを説明するのは弁護士だけではありません。
検事が冴えた反論でムジュンをつぶしてくることも、
ハンニンが新たな言い逃れをしてくることもあります。
つまりピンチやチャンス、逆転といった「法廷バトル」の攻防を、ムジュンの説明によって産み出すのが、逆転裁判のシナリオ作りです。

ムジュンをいかに「シナリオ」へとつなげるか。
これが逆転裁判のシナリオ作りのキソだと思います。


②【ムジュンのつくりかた】
・「ムジュンそのものの面白さ」
まずは本家逆転裁判の攻略チャートでも見に行って、好きなムジュンを20個ほど書き出してみましょう。
「右と左」「2時と4時」のような、証拠品ファイルに直接ムジュンする単語があるやつは、難易度がひくいです。これだけだとゲームとしては発展性に欠けます。

「停電していた=ビデオは見れない」とか「骨つきステーキを食べた場合=骨はちゃんとのこる」みたいなロンリを1段はさむ必要のあるムジュンは、難易度も一段あがります。こういうムジュンを作れると、ムジュンの「難易度」に幅ができて、一気にゲームらしくなります。

そして写真のムジュン点の指摘はさらに難易度があがります。
尋問とちがって指摘できるポイントが無限にあるからです。
(本家の詰みポイントも、だいたい写真がらみです)

最初は「好きなムジュン」をならべるだけでもいいと思います。
そのムジュンを線でつなげて、裁判にできれば上出来です。

裁判の序盤はスタート地点だけ定まってることが多いので、
ムジュンから「裁判の展開」を組み立てることが多いですが
中盤以降は「真相」というゴールから逆算してムジュンを作ることが多いです。
なのでムジュンを作れるようになったら、次は「逆算してムジュンを作る」技術の習得にもチャレンジしてみましょう。


・「真相につながるムジュン」を逆算して作る
長玉の場合、まずは「ハンニンの作った状況」をそのままユカイ刑事にしゃべらせて、ムジュンをボンヤリ考えます。
たとえばOR裁2話なら、真相の「○○○穴」と「屋上からの転落」のちがいから、必ず何らかのムジュンが生まれます。
「被害者が屋上に行ってない」とか、「穴を掘ったタイミング」とかです。
これをムジュンとして指摘させたあと、序盤なら水冬検事に反論させて、終盤なら水冬検事を打ち負かします。
前半の法廷の尋問1、2、6がこれに当たりますね。
とくに尋問6の「○○○穴」につながるムジュンはかなり気を使いました。
「◯◯◯穴が明かされるには、どんなムジュンが必要だろうか‥‥?」と考えて、あの形に行きつきました。

・中盤のムジュン
モンダイは「あいだ」の尋問です。
2話だとズブヌレ氏の尋問3~5がこれにあたります。
OR裁はトリックの都合で「物証」オンリーの謎解きになってしまいましたが、本来は目撃証言もダイジな「手がかり」です。
トリックとはまた別の、人間関係のナゾにせまるムジュンを配置してもいいし、3-3のように「トリックに間接的につながる」ムジュンを配置して、真相解明への伏線としてもいいと思います。

ダイジなのは、ムジュンを指摘することで シナリオがちゃんと進むこと。
最初のころの長玉は、どうしても真相とまったく関係のない、証人の個人的なかくしごとを暴くシナリオを書きがちで、執筆中はずっと「ちがう、なんかちがう‥‥!!」とウンウンうなってました。

その反動で、今度は《物証こそすべて》という思想にそまり、OR裁ではハンニン以外にウソをつかせる展開をトコトン避けました。
ただ、本家1-3の九太くんのような、ミリョク的なウソをつく証人もたくさんいます。本来はもっと「ウソ」の可能性も追究すべきでした。

ちなみに、OR裁の3話と5話は「物証オンリー」「あとだしゼロ」「ロジックの積み重ねのみで真相に到達する」という《思想》を全面に押し出したシナリオです。
つまり「尋問1でAを立証する」「尋問2でAからBをみちびく」「尋問でBからCをみちびく」‥‥これをくりかえして、ロジックの積み重ねで《真相》に到達できれば、道中の尋問もすべて「意味のある」ものになるはずだ!! ‥‥と考えたのです。

結果は‥‥このフクザツな論理図です。

「あんなクソ長い主張、ダレもおぼえられんさ‥‥」
ロンリ(タテ) × 時系列(ヨコ)の2次元のギロン


マネする人はまずいないと思いますが、いちおう《敗因》を分析します。

巧先生は、1のコラムで「アリバイとか、時刻表といったフクザツな要素をなくしたい」「《今どこにムジュンがあるか?》だけを考えれば進めるようにしたい」とおっしゃっていました。

対してOR裁のギロンは、「ロジックの積み重ね」が、「時刻」の数だけ存在します。
たとえば5話では
 A「ガラスが外に落ちてる(内から割られた)」
→B「侵入にはカードキーが使われた」
→C「つまり風力発電は動いてた」
→D「よって《東棟》から事件は目撃できない」
‥‥と4段もロンリを積み重ねます。
検事はこのロジックに対して、ABCDのどれをつついても反論が成立してしまいます。
だから「ロジック」をタテ軸、「時刻」をヨコ軸にとった「二次元」の図でないと、表現できない論戦になってしまったのです。

巧先生の書くシナリオは、ロジックの積み重ねこそあれど、いちど積み重ねたロジックを掘り返したりはしません。
よってプレイヤーは、ロジックの前後関係(タテ軸)も、時刻表(ヨコ軸)も気にすることなく、目の前のムジュンに集中できます。
本家のムジュンは点(0次元)であることがテッテイされてます。
対してOR裁のギロンは2次元のギロンになってしまいました。

パズルのような論戦は二転三転のギロンを作るのに大いに役立ちますが、「パズルだけ」にこだわりすぎると、大局を見失いますね‥‥。
ここはかなり批判されました。続編があったら、まずは「目撃証言」をちゃんと取り入れようと思います‥‥。

③【シナリオのつくりかた】
裁判の全体像は以下の《三段階》からなります。
A「検察の主張」を否定する。
B「真相」を解き明かす。
C「真犯人の反論」を否定する。
つまり裁判はマイナスから始まって、プラスに向かいます。


「検察の主張(A)」は、最初はハンニンのギソウ工作によって生まれた状況をそのまま読み上げます。
プレイヤーはそこにムジュンを指摘していくのですが、最初の尋問2回くらいは「検察の見せ場」にしても良いと思います。
たとえばOR裁では「カメラに被害者が映っていない」というムジュンに、水冬検事が凝った反論をくり出します。
最初から逆転してしまうと検事の強さが引き立たないので、序盤はなるべく検事を引き立てるシナリオを書けると理想的でしょう。
(長玉は本家の4-2の「被害者の向き」や、大逆転2-4の「ロウソク」の反論が好きなので、あれらをお手本にして書いています)

ただし、中盤からは徐々に「検察の主張」をくずしていく必要があります。
ここは「目撃証言」を少しずつくずしていくのが一般的ですね。
ギロンのたびに犯行方法の主張をコロコロ変える検事だと、「なんで起訴したの?」「事前に会議やってないの?」と感じてしまいます。
「犯行方法の軸は一貫させる」「枝葉だけ変える」というのが、個人的にイシキしている点でしょうか‥‥。

そして「1回目の法廷」の幕切れをどうするか。ここがイチバンむずかしいです。
たとえばOR2話では「○○○穴」の判明によって、水冬検事の「屋上からの転落」の主張が成立しなくなります。
しかし翌日の法廷で「被告人は《生き埋め》を計画していた」という《方針転換》が行われます。
この「裁判を1日あけるに値する主張」を作るのがむずかしいのです。
翌日の検事の「反論」のハードルもかなり高いです。
(2話の水冬検事は、当初は「モニターを橋にして落とし穴を渡ったんだ!」とかメチャクチャなことを言ってました)

ちなみに、2話3話のような「検事を打ち負かす」以外だと、こんな幕切れがあります。
a 別の新たな事件が発生する(1-5 3-2 5-ex 6-3 6-5)
b 法廷爆破、弁護士交代、証人失踪などで審理続行不能に(5-3)
c 証人が「被害者は空を飛んだんだ!」とか言い出す(2-3 3-5)
d そもそも裁判を1日で終わらせる(大レ全話 6-2 6-4)

私見ですが、3DS期の逆裁でaとdが多発したのは、どうも「2日制裁判を作るのがむずかしかったから」なのではないか、と思っています。
2日間の裁判に耐えうる真相を用意するのは、かなり負担が重いです。
二次創作であれば「王道の2日制裁判」だけでなく、これらの《変化球》にたよってみるのも手だと思います。


「真相(B)」を解き明かすパートはそんなにむずかしくないです。
ここはほとんど技術がいりません。だからみんな「1話」とか「1回目と2回目でそれぞれ別件を扱う裁判」みたいな「2日間にまたがらない裁判」は書けるんですよね。
ただし起点となる「トリックが判明するシーン」「真犯人が判明するシーン」は主人公が無から発明しがちなので、ここだけは「どんなムジュンからつなげるか?」をよく考えることをオススメします。


「真犯人の反論(C)」もそんなに高度な技術はいりません。
「真相」を解き明かすときは、だいたい細かい整合性を取らなきゃいけないんですが、この「整合性とり」を真犯人にやらせます。
つまり真相に対して犯人がツッコミを入れて、弁護士がセツメイする‥‥という形です。

ただし、そこから一歩踏みこんだほうが「真犯人とのバトル」も白熱します。
1-5の「証拠法」や検2-3の「時効」のような法律がらみの言いのがれ。
3-2や3-3のような「失言」をめぐる頭脳戦。
最後に「到叙ミステリ」らしいバトルを入れると、裁判がグッと華やかになります。

④【アイデアの出しかた】
ここまでさんざん「技術」の話をしてきましたが、そもそも「核」となるアイデアがないとシナリオは書けません。

OR裁5話は「被告人がジッサイに刺している」という絶体絶命の状況(A)と「大車輪」(B)を同時に思いつき、そこから真犯人の反論(C)を逆算しました。
OR裁2話は「究極の盲点」のトリック(B)を先に作り、そこからギロンを作りました。
そして「少年法バリアをどう破るか?」(C)を考えた結果、過去の事件の真相(B)が生まれました。
OR裁3話は「テンプク」のトリック(B)と「終盤の二転三転」(C)をほぼ同時に思いつき、そこからギロンの展開を考えました。

AとBを核に作ったのが5話、
Bを核に現在の事件を作り、
Cを核に過去の事件を作ったのが2話、
BとCを核に作ったのが3話です。

どの局面を「核」にしても、かならずそれ以外の局面を「埋める」工程が必要になります。
「核」はアイデアですから、日ごろからウンウン考えてひねり出すなり、日ごろからアンテナを張るしかありません。
対して「それ以外の局面」は”技術”がいります。
「アイデア」は再現性がなく、作れば作るほど枯れていきますが、
「技術」は再現性があり、作れば作るほどみがかれるものです。

①②③は「技術」の話でしたが、この④は「アイデア」の話です。
「技術」とちがって、言語化はむずかしいのですが、いちおうアイデアを産み出す「型」だけは整理しておきます。

★《「ピンチ(A)」から考える》
だいたい「トリック(B)」とセットで考えることになります。
(初心者がトリックを単体で思いつくことはほぼないです)
 
「密室」とか「写真に犯行のようすが映ってる」とか、なんでもいいので思い思いの「ピンチ」を考えましょう。
個人的な「ピンチ」を際立たせるコツは、事件をシンプルにすることです。
現場がフクザツだと「被告人が殺した」以外の可能性がありそうに見えてしまいます。(例:OR裁の3話)

★《「真相(B)」から考える》
巧先生がよく言ってますが、「ミステリとしてのおもしろさ」はトリックにかぎりません。
動機でも伏線でもいいので、何か「核」となるアイデアがあるならば、ミステリにチャレンジしてみましょう。なければ古典ミステリの引用でもOKです。
ここでは、ミステリの「核」を色んな観点で分類してみます。

・「偶然のミステリ」と「必然のミステリ」
巧先生は「偶然のミステリ」の名手です。
本家だと3-3の動機や、3-5の「空を飛んだ被害者」、4-2の「被害者が屋台を引いていた理由」などが顕著ですが、「計画的なトリック」よりも「予期せぬ偶然」から生まれたミステリを書くのがバツグンに上手いです。
OR裁だと、5話の≪大車輪≫はモロに「偶然のミステリ」です。
このタイプのミステリは、「意外な動機」や「不可解状況」と結びつきやすいですね。
興味のある方は「亜愛一郎」シリーズでも読んでみるといいと思います。
巧先生の愛読書なだけあって、開幕の「DL2号機事件」からして独特な着眼点のミステリが展開されます。

対してOR裁の2話3話のトリックは「必然のミステリ」です。
計画的に「盲点」を突くトリックは、ミステリの王道とも言えますが、一方で凝れば凝るほど機械的になりやすく、評価されにくいジャンルです。
逆転裁判で求められているのは「おもしろい裁判」であって、「おもしろいトリック」ではありません。そこを履き違えて、トリックのおもしろさだけを追及してしまうと、プレイヤーからそっぽを向かれます。

トリックを追究するからには、「被告人しか犯人がいない」絶体絶命の状況にうまくつなげましょう。
また、計画犯ミステリは「真犯人の意図」が貫通しているため、「真犯人のキャラクター」をトテモ描写しやすいです。ここも上手くつなげるといいですね。

トリックの作り方のコツは「ギミック」を「現実の道具で“再現する”」ことです。
「90度回転する密室」が欲しいなら、「90度回転するモーター駆動ハウス」ではなく、「転覆した船」を用意します。手品のキホンは「かくす」ことです。
‥‥まあ、OR裁の船もたいがい「問題アリ」なのですが‥‥。

・「不可能状況」と「不可解状況」
「不可能状況」は、いわゆる「被害者が空を飛んだ」とか「遺体が怪獣に踏みつぶされた」とか「遺体が瞬間移動した」などの状況を指します。
こういう「不可能状況」は「計画犯罪」と基本的に両立しません。
なぜなら、壮大なナゾをのこす意味がまったくないためです。

なので「不可能状況」はほとんど「偶然のミステリ」の産物になります。
少なくとも「意図して不可能状況を産み出す」ことはほぼありません。
(例外は大逆転裁判2-3ぐらいでしょう)

あと、「不可解状況」に答えを出さない限り、検察側の主張も成立しなくなるので、仮説が飛び交う裁判劇との相性も悪く、扱いがむずかしいです。

本家2-3と3-5では、1回目の裁判のラストで証人が「不可能状況」を証言します。探偵パートの時点で出してしまうと、検察側がそもそも立件できないからです。
そして両者とも、検察側は「不可能状況」に答えを出しません。
2-3は「模型を作ったからあとでセツメイする」とだけ言った後、すぐトリックが解明されてしまうので、検察側が答えをヒロウしません。
そして3-5ではそもそも真相解明まではいったんムシされます。

つまり「不可能状況」を出してしまうと、仮説の応酬が封じられてしまうので、裁判劇の組み立てが一気にむずかしくなるのです。
長玉も3-5の「不可能状況」の謎解きが大好きなので、OR裁5話でチャレンジしてみましたが、まあトリックの大味なコト‥‥。
かなり扱いのむずかしい要素です。大いに研究の余地があると思います。

対して‥‥
「不可解状況」とは、いわゆる「屋台を引いて死んでいた男」とか「歌詞の見立て殺人」などです。
つまり「不可能ではないが不自然」な状況のことを指します。
これらの「不可解状況」は、検察側が答えを出さなくても判決を出せるので、裁判劇との相性も悪くありません。
また、「不可能状況」の答えが物理トリックになりがちなのに対して、「不可解状況」の答えは心理トリックになりやすく、仮説のハードルをそこまで引き上げないのも美点です。

【さいごに】
つかれました。もうなにも文章を書けません。
これ以上書くと長玉の《遺体》が自宅から発見されてしまいます。
現実世界にまでミステリを持ちこむワケにはいかないので、ここであきらめることにします。

いちおう書きたかった内容を章タイトルだけご紹介します。
「「ミステリ」をどう「法廷バトル」に落としこむか」
「逆転裁判4と5と6の比較」
「逆転裁判1と23の比較」
「大逆転裁判2とレイトン/大逆転1の比較」
「本家1-3と1-4の“ムジュンの魅せかた”」
「本家4-2の“ミステリの魅せかた”」
「証拠品を複数の視点から見る手法」
「パズルのようなギミックのつくりかた」
「ハデな仮説とリアリティの綱引き」
「法廷パートの新システムとゲーム性の関係」
「ゆさぶるとつきつけるのバランス」
「探偵パートの自由度と“詰み”の関係」
「サイコロックはなぜ“その場で解けない”必要があったのか?」

‥‥まだまだあります。「章」だけでも書ききれません。
たぶん本当にすべてのノウハウを言語化するなら、本家の全作品のテキストや尋問を「逐条解説」する必要があります。
文章におこすだけで1年はかかるでしょう。

ちなみに、長玉のノウハウはだいたい「4」をベースに抽出してます。
4は巧先生の技術が詰まっていて、トテモ好きな作品なのですが、
まあなんというか‥‥ファンの間ではフクザツな扱いの作品でもあります。

つまりこのノウハウを守るだけでは、プレイヤーの評価は得られません。
ただ単に裁判のクオリティが(長玉目線で)安定するだけです。
逆にこの「ムジュンとシナリオのリンク」ができてなくても、高評価を受けてる作品はたくさんあります。
ただ、個人的にはリンクできてるほうが、その後の技術の積み重ねが効くような気はします。

長玉は「ミステリとしてのおもしろさ」や「ロジックの美しさ」といった技巧におぼれがちです。
が、ダイジなのは「そのおもしろさを裁判にどう落としこむか?」です。
ミステリとして高品質でも、裁判としてつまらなかったらプレイヤーには受け入れられません。
裁判ゲームを作る者として、この精神は忘れずにいたいものです。

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