オードリー・ヘプバーンのドレスの色を調べて見えた『写真彩色』のあれこれ
はじめに
こんにちは。はじめましての人ははじめまして。
気になったことにはつい、首を突っ込んでしまうおサルと申します。
インターネットを漁っていたら、流れてきた2枚の写真…。
文化学園服飾博物館でヨーロピアン・モード展 - 「ローマの休日」オードリー着用ドレスなど展示 - FASHION PRESS
https://www.harpersbazaar.com/culture/art-books-music/g8037/audrey-hepburn-1950s-book/?slide=4
コレ、上の写真はピンクなのに、ヨーロピアン・モード展にてオードリーが着用したドレスとして紹介されたドレスは金色なんですよ。
…なるほど。確かにこのご時世、白黒映画のカラー写真は本物の判別ができない…。さらに言えば「ピンクが退色した結果ベージュになった」の可能性も捨てきれない。そこで、ネットの海で調べられる限りで調べてみました!
ちょっと待った。みんな知りたいのは「このドレスは本当に金だったのか?」でしょ?分かってます!!最初に結論を!
これに関して、以下リンク先の通り、「金色」で間違いなさそうです。
The New Must-Have Book for Audrey Hepburn Fans - BAZAAR.com
https://www.harpersbazaar.com/culture/art-books-music/g8037/audrey-hepburn-1950s-book/?slide=4
一件落着!!!…といきたいとこですが、
ここで「間違いなさそうです」という奥歯に何かが詰まってる物言いなのは理由があります。
今のご時世、ウラを取らないと安眠できない…。
上記リンク先は『Audrey: The 50s』という写真集発売時に内容をチラ見せする告知記事の4枚目のもの。会員制デザインブログの [Bazaar.com]による記事です。
「オードリー・ヘプバーンの50周年記念写真集」という位置づけのこちらに収録の写真なんだからまず大丈夫だろう、
とは思うのですが、気になったことは掘ってしまうのがおサルの性質でして。
ホンマに金色なんか?というのを、知恵袋や掲示板ではない、比較的裏が取れそうな情報ソースから裏取りしてみました。
『証拠1:日本の映画雑誌との合致』
調べ始めて行き当たったのはこちらのブログ『おしゃれ泥棒 オードリー・ヘップバーン!』さん。オードリー・ヘップバーンに関しての研究と雑談をされているそうです。
71.「ローマの休日」のスカートの本当の色は? - おしゃれ泥棒 オードリー・ヘップバーン!
https://audreykathleen.blog.fc2.com/blog-entry-40.html
こちらは同じ映画『ローマの休日』で使われたスカート(下記)の色についての記事。こちらには、雑誌『スクリーン』で使われている「ローマの休日」の本当のカラー写真として、以下の画像が載っています。
これ、先ほどの『Audrey: The 50s』の販促画像5枚目と同一写真なんですよ。
https://www.harpersbazaar.com/culture/art-books-music/g8037/audrey-hepburn-1950s-book/?slide=5
さらに、オードリー展で展示された本物(ブログ内写真あり)とカラーが一致しているとのこと。
専門の映画雑誌で『本物のカラー写真』として紹介されていた写真そのものが載っている、これはかなり信ぴょう性が高まってきましたね。
ちなみにこちらの記事では「当時から『ローマの休日』を告知するポスターでは資料がないため、オレンジや水色に塗られてきた」という非常に興味深いことが書かれています。(そのため、舞台などでも水色のスカートで演じられることもあるとか)
ほえー、『自動彩色』なんてのが出始めて注目されてますが、彩色、昔からあった文化だったんですね(そりゃそうだ。)
でも、「スカートの色が正しい写真が掲載されてるからって、ドレスはピンクかもしれへんやん…」という意地悪なあなた!!
分かりました。お見せしましょう。第二の証拠を!!!
『証拠2:メインデザイナーのデザイン画』
ローマの休日ぐらいの映画になると、有名デザイナーさんが衣装につくようなのですが、なんと、『ローマの休日』のデザイン画、現存しております。
イーディス・ヘッド(Edith Head)(アカデミー賞を8回、ノミネートに至っては35回というデザイナー)が手掛けたデザインはこちら。
Edith Head - wnyc.org
https://www.wnyc.org/story/115586-edith-head/
どうです。白を基調としているように見えますが、断じて「ピンクではない」んですよ。
(ちなみに、斜めにかけられたリボン部分は赤だったんですねー。おっしゃれー!)
ちなみに、WNYCはニューヨークの非営利のラジオなんですが、その他のEdith Headのデザイン画は画像掲示板でしか見つかりませんでした。
ただ、どのデザイン画も全く同じ配色だったことを追記しておきます。
布などに使われる染料よりも絵具に使われる顔料などの方が一般に退色しにくいので、恐らく間違いないでしょう。
と、いうわけで、文化学園服飾博物館で開かれた『ヨーロピアン・モード展』に出てきたオードリー着用のドレスは本物だし、ピンクから退色したわけではない、ということは多分間違いないだろう、と思います。
というわけで、モノクロの彩色そのものは実は昔から人類がやってきたよ、
白黒時代の奴は裏を取らないと
というお話でした。
とりあえず、『ローマの休日』については「オードリーのお腹部分にあるリボンの色が赤色かどうか」で白黒の後付け彩色かどうかを区別できるんじゃないかなぁ、と思います。
最後の最後でちゃぶ台返し
…と、結論付けたかったところで、最後の最後でえらい記事にぶち当たってしまいました。
オードリー・ヘプバーンとローブ・デコルテ - カイエ・デ・モード
https://cahiersdemode.com/audrey_hepburn2_roman_holiday2/#toc1
映画の中でのファッション史について専門に扱われる情報サイト様、カイエ・デ・モード様でピンク版のファッションをめいっぱい紹介。しかも、同じページでデザイン画も複数紹介…!
…、ひょっとして、ですが、金色版に加えてピンク版も2着、あります?それとも、手動彩色?締まらなくて申し訳ない。