ネットイベントでのパロディロゴは許されないのか
知り合いが運営している有志のネットイベント(インターネット上で開催され、同好の志が集まるイベント。参加費無料)で告知画像にパロディロゴを使っていたことに意見が上っていたというのでパロディロゴの使用は法的にどういうことになるのか調べてみた。
私は理系の大卒社会人で法律については専門外なので、『可能な限り妥当そうな書き手を選ぶ』『調べた文書を読み解く』ことに集中して書いていく。
そもそもの違法性について、弁護士事務所の記事。
以下のサイトを参考に違法性を考えてみる。
二次創作は法律違反? 著作権法違反となる行為を弁護士が解説—ベリーベスト法律事務所
https://funabashi.vbest.jp/columns/general_civil/g_others/4434/
一つ目は法律事務所が真っ向から二次創作の違法性について解説した文章だ。結論から言うと原作者による特別な許諾がなされていない限り、すべての二次創作は違法になる。紙面の大部分は違法となる法律とどこに違法性があるか、その場合の量刑について割かれている。
ただし、第4項第3節の『訴追には被害者の告訴が必要(親告罪)』から文章の風向きが変わる。
翻案権侵害や同一性保持権侵害は、いずれも、被害者などからの告訴がなければ公訴を提起することができない「親告罪」に該当します。
つづく第5項『まとめ』にもこうある
そのため、「違法二次創作物の電子販売などを大々的に行って、お金を稼いでいた」などの悪質なケースでなければ、訴追を受ける現実的な可能性は低いといえるでしょう。
ここでの論点は「著作権者が訴えなければ不問」という点だろう。
訴えられるかどうか、そこが争点になってくることが一番の重要ポイントだ。
パロディやオマージュは"許される"か、グッズ制作専門誌サイトのコラムから。
パロディで訴えられるケースはどのくらいあるのだろうか。以下『つくる窓口・オリジナルグッズコラム』サイト記事を参考にみてみる。法律問題も扱った専門誌のライターによる記事だ。
原作をもじったパロディやオマージュは許されるか—つくる窓口・オリジナルグッズコラム
https://tsukumado.com/column/2369/
ここでも、パロディと盗作の違いを解説しつつも法的に見ればどちらも『原作の翻案』として違法になることが書かれている。
ただ、現実的には例えばアイドルのライブでファンがアイドルの写真付き応援グッズを持ち込むことを事務所が告発しないように(こちらは肖像権の侵害にあたる)、著作権者が告発しないことでパロディの存在が緩やかに認められている。
告発されるリスク自体は常に存在し、実際の商品では例えば大阪土産の『面白い恋人』を北海道『白い恋人』が訴えた例などがある。
対抗商品としてパロディをするのは特に訴えられるリスクが高いのは確かにその通りだろう。
「混同を生じさせる」「紛らわしい」のはアウト。グッズ制作専門誌サイトのコラムから。
同じく『つくる窓口・オリジナルグッズコラム』より、不正競争防止法についてもまとめてこの記事を終わりにする。上記記事と同じ記者による記事だ。
知的財産権の抜け道を防ぐ不正競争防止法とは—つくる窓口・オリジナルグッズコラムhttps://tsukumado.com/column/2372/
不正競争防止法についての記事だ。これは、企業ロゴや商標を正規で使う際に生じるライセンス料を不当な方法で回避した場合や、看板を似せて混同を生じさせる、紛らわしいものを作った場合に対する法律だ。
ブランド名などを使って顧客吸引力にただ乗りした場合などもコレにあたる。
まとめ—ネットイベントのパロディロゴは訴えられるのか
最後に、インターネット上で開催され、同好の志が集まる参加費無料のイベントでのパロディロゴは犯罪なのかについて考えてみたい。
まずは、ロゴがパロディである以上、著作権法に照らし合わせれば違法行為であることについては間違いない。
ただし、第三者にとやかく言われる権利は無く、権利者(例えばロゴの版元)にのみ告発・起訴する権利がある。
不正競争防止法についても考えてみよう。今回のパロディロゴで言うと、『関連商品だと不当に誤認させて利益を得ていた場合』などは不正競争防止法に該当しそうだ。しかしながら参加費無料のイベントである以上、仮にロゴデザインで来場者が増えたとして"利益"としてカウントするのは難しそうだ。
そうすると著作権法で告発されるかどうかだが、これも告発の目は薄いと思われる。今回のロゴの使用先はあくまでイベントの実施説明であり、このイベントに人が流れたことで本来著作権者が受け取るべき利益を毀損するとはとても考えづらい。
よって、ネットイベントにパロディロゴを使うことで不興を買う、イベントそのものの人気を損なうことこそあろうが、『社会通念上許されない』と第三者が声を上げるのは行き過ぎであるのではないかという私の考えを記してこの記事を終わりにしたい。
余談ではあるが、恐らく、高校・中学レベルの学園祭やバザーのポスターといったものについても同じようなことがいえるであろうと思われる。
(これが数十万円の大学のサークル運営費を稼ぐためのポスターになってくると話が難しくなるだろうが、本稿ではそこについての考察は避ける。)
最後に念のために釘をさしておくが、著作権法は親告罪だ。パロディを扱う以上、著作権者に全ての権利が握られていることそのものは理解しておくべきだ。著作権者がノーと言えばノーだし、周囲がどれだけ焚きつけても著作権者が動かなければことは動かない。原作愛を示すため、原作の利益のために使うのでなければ、『危ない橋』であることに変わりはない。