合格体験記
受験期の話をする前に、受験なんて一切考えていなかった頃の話をまずしたいと思います。これは、僕が受験勉強をするにあたって大事にしていた考え方の根底にあるとても大事な話です。その話はあとでします。
まず言いたいのは、定期考査は高2の後半や高3といった受験期を除いて、副教科までいい点数を取りに行くべきだということです。理由は大きく3つあります。
1つ目はやる気の起きない教科を勉強する練習です。国公立(特に理系)志望の子には特に意識してほしくて、というのも国公立の受験は教科数が多くまた更に自分の嫌いな教科、やる気の起きない教科も含まれることがあり、その時の予行練習になるからです。副教科の勉強のやる気は起きないと思います。でも受験においてはそういったやる気がそがれる教科もやらなければなりません。その時の準備として定期考査という小さい場でそういう教科の勉強をする体力をつけるよう意識してほしいと思います。
2つ目はこれも特に教科数の多い国公立志望の子に意識してほしいのですが、多くの教科を並行して勉強する練習になるということです。受験勉強において、各教科のペース配分を決めるのは本当に難しいです。自分の立ち位置を正確に把握している必要があるからです。でも、定期考査のような小規模のテストであれば、どの程度自分ができていてどれくらい勉強するべきか把握するのは難しくないと思います。そのような練習をしておくのはとても大切で、これができないと受験勉強は効率よく進みません。
3つ目は点の取りやすい勉強の仕方の経験を積めることです。勉強の仕方は各教科によって少しずつ違うのは確かですが、その核となる部分は基本同じです。その核は人によって少しずつ違うと思っているので自分で見つけてほしいのですが、それを見つけることができれば勉強の方針はぐっと見えやすくなるはずです。受験のことを考えていないうちに副教科をチャンスととらえてその経験を積む機会に変えてください。せっかくやるなら意味のあるものにしてほしいと思います。
もう1つ言いたいのは、定期考査の勉強はなるべく暗記ではなく後々受験になったときに利用できるように考え方を把握するように勉強するということです。これは特に数学に言えるのですが、定期考査の勉強で直前になって必死にテスト範囲の問題だったり内容を暗記しようとするのが目につきます。それでテストを乗り切れたとして、受験となったらまたやり直すことになるわけです。それが時間の無駄であるということは容易に理解していただけると思います。やるからにはのちのち自分が楽できるようなやり方でやっておくほうがいいと思いますし、受験ではこの勉強の仕方が基本で、受験でこの勉強の仕方ができない人で志望校に合格できた子は見なかったので今のうちに習慣化しておくのが最善かなと思います。
以上をまとめると、定期考査は受験の予行練習だと思え。ってことです。定期考査の存在意義はここにあると思っていて、これができていなければたとえ点数がよかったとしてもその価値は下がってしまうと思います。実際僕は受験勉強を始める以前は定期考査の直前に勉強することと課題以外は一切勉強していませんでした。それでも東京大学に合格できたのはこれらをきっちりやっていたからだと思います。
僕は、率直に言って受験勉強を始めるまでは定期考査直前だけ勉強すれば点数とれるやん。と思っていたので定期考査直前だけしっかり勉強することにしていました。最初は二週間前ほどから一日8時間とかやるようにしてなんとか全体の得点率を90%弱に保っていたのですが、勉強のコツがわかるようになってからは、テスト前は一日8時間とかやっていた気もしますが、テスト期間中は一日3~4時間の勉強で点数を同程度に維持できていました。これもずっと練習!と思ってやっていた結果だと思います。
ここから受験勉強について話していこうと思います。僕が受験勉強を始めたのは高校2年生の6月でした。これは東京大学受験生としては相当遅いと思います。それでも現役で合格できたのはこれから書くことを自分で気づいて意識できたからだと思います。
受験を始めてまず最初にやってほしいことは勉強の楽しさを知ることです。受験初期は何の圧力にも縛られず自由に勉強ができる期間です。教科は何でも、手の付けやすいもので構いません。知識が増えてできることが増える!という喜びがわかると受験勉強は少しだけ楽しみに変わります。(本当に勉強が好きでない子は英語がおすすめです。単語を少し覚えるだけで目に見えて成長がわかります。)
僕は受験勉強を始めた直後に夏休みがあったので、その期間は文化祭準備をしつつ毎日8時間ほど、簡単な英語の本や英字新聞を読んで単語も強化しつつ、数学の典型題を解きまくる。といった勉強をしていました。僕はそれがものすごく楽しかったですし、そこで築き上げた基礎は受験の最後の最後まで活かされたと思います。
ここからは高3を迎える受験生へ話をしたいと思います。理系の視点から書くので、文系の人は適宜読み飛ばし、考え方だけ押さえてほしいと思います。
理科は早めに始める
受験する学校のレベルにもよると思いますが、これは本当に意識したほうがいいと思います。なぜかというと、受験において合格を決めてくれる教科が理科だからです。受験するとわかりますが、英語や数学はみんなできるかみんなできないかのどっちかに偏ることが多く、自分と同レベルの受験生と同程度に取れればいいってことになります。(逆に言えばここで失敗したら終わりなので失敗はできません。)じゃあどこで受かるかといえば理科で差をつけるわけです。理科は同レベルの受験生でも出来が大きく変わります。この教科で安定して点数を取れるようになれば受かる確率はぐっと上がります。そしてこの教科は天才でない限り直前で一気に上がるような教科ではないと思っています。長期にわたって演習を行うことで経験を積み、より多くの知識を得るとともに公式の運用やその成り立ちを理解することで結果がついてくる教科だと思っているので、理科こそ早めに始めるべきだというのが僕の意見です。
僕の話をすると、僕は物理化学の選択で、特に物理が得意だったので高2の夏休み明けからは本格的に勉強して、12月に名問の森を始めました。そして自粛期間は始まった3月頃には旧帝や東京一工レベルの問題もかなり解けるようになっていたのでほとんど完成していた気がします。なので自分は高3に入ってから化学を重点的に取り組むことができ、結果としてかなりやりやすかったと思います。物理は夏の東大模試で偏差値60~70ほどあったので慌てることなく演習を積み、そのまま最後まで行けた気がします。直前にといた過去問は安定して42~50点くらいだった印象です。逆に化学は常に切羽詰まった状態だった印象で、夏の東大模試は点数が60点満点の4点、偏差値35という状態から秋の東大模試までに実力をつけて25点の偏差値55くらいまで上げて、受験の直前の過去問では35~50点程度とれるようになっていました。この間の勉強の話についてはこの後話をします。
共通テストをどう乗り切るか
難関国公立志望の人にとってこれは大きな問題だと思います。目標800点として、それを達成できるように足りないところだけ補うのが一番効率いいのではないかなと思います。やはり国立は二次勝負ですし一次で頑張って共通のあと力尽きてしまうのが危険なので、2月に向けて合わせていくのがいいと思います。
せっかくの体験記なので自分の例も書きたいと思います。自分は模試で国語は8割程度、英語が9割程度、理系教科も8~9割程度とれていたので、世界史以外の教科の共通テスト対策は12月後半になってから始めました。点数的に安定していなかった国語と化学は、駿台の問題集を買ってそれをやりこみ、集中して知識の詰め込みを行いました。逆に安定していた数学や物理、英語は試行調査の過去問以外一切解きませんでした。確かに不安はありましたが問題解いたら点数とれるからやっても時間の無駄だろうという判断のもと、国語化学世界史に集中しました。それで結果がどうだったのかといえば、自信のなかった国語が9割、数学は満点、物理96点に対して化学77点、世界史59点とふるわず、英語もよくなかったこともあって800点には届きませんでした。化学は直前は安定して90点取れていたので自信はあったのですが本番うまくいかなかったという印象で、世界史は本当に勉強頑張ったのですが一向に点数が上がりませんでした。何が言いたいかっていうと、何が言いたいかっていうと、まあこれ言ってしまったらどうしようもないんですが本番はいつも通りはいかないってことです。普段うまくいってる教科がうまくいかないこともあれば、普段安定しない教科がびっくりするほどいい点数なこともあるんです。大事なのは自分が後悔しないか。です。もし仮に数学物理が悪い点数だったとしても練習できてたから本番できなかったのは運が悪かったと割り切れたと思いますし、化学や世界史もしっかり勉強はしていたので、実力を出し切れなかったor実力が足りなかった。と割り切ることができました。もしも心配という理由で化学や世界史に使った時間を数学物理に費やしていたら後悔は強かったと思います。しっかりと考えて自分で決めたやり方を押し通すほうが結果として納得がいくと思います。
受験勉強は「何をするか」ではなく「何をしないか」
僕が今回の文章を通して一番伝えたいことはこれです。これが伝えたくて文章を書き始めたといっても過言でないほどです。
受験は満点を目指すものではなく合格を目指すもの。ということは皆さんわかっていると思います。だからこそ、できないことをできないままにしておく勇気は必要だと思います。受験期はおそらく不安も多くいろんな人に悩みを相談しアドバイスをもらうでしょう。僕もそうでした。塾の先生や学校の先生、友達にもアドバイスをもらいましたが、その中で実際に実行したことは助言のうちの半分にも満たないと思います。それは単純に無視したとかではなく、ちゃんと自分の中で取捨選択したからです。助言はあくまで助言であって、1つのアイデアにすぎません。そのアイデアは自分ひとりで考えているうちは絶対に出てこなかったものだろうし聞く価値は絶対にあります。ですが実行に移すか否かは別の話で、自分が本当にやるべきかどうかを考えるのは常に怠ってはいけません。アイデアを取り入れたうえでやるべきことを取捨選択する。これを意識してほしいと思います。
実体験としては先ほど述べた化学の話です。僕が東大模試で偏差値35ことは先ほど言ったとおりです。その結果を受けて周りの人が絶対に言うのは「基礎に戻ってやり直したほうがいい。」ってことです。でも僕はその模試の直後から東大の過去問27か年を解き始めました。それは、自分は化学の基礎はできている。東大の問題に対する慣れが足りていないだけだ。という確信があったからでした。その根拠は河合模試で化学の偏差値が70ほどあったことにあります。それだけ取れているのに基礎ができていないわけがないし、実際基本的な問題を解いていても自分の基礎力不足は全く感じない。東大対策の演習を行えば必ず結果はついてくる。と考え実際にそれを行い、二か月後の10月の東大模試では偏差値が55程度まで上がりました。これもまだまだ低いほうではありますが、2か月で偏差値を20あげられたという自信は大きなものでした。
僕がこれを通じて言いたいことは、過去問をやれ!ってことでは全くありません。勘違いしてほしくないので強調しておきます。自分の身の丈にあった勉強を自分で考えてやれ。と言いたいのです。あそこで自分が周りに流されていたとしたら化学が受験までに完成せず落ちていたと思います。ですが、もしそこで基礎ができていなかったとして、無理に過去問を始めていたら、やっぱり受かっていなかったと思います。基礎練をやらないという選択を取るのは勇気がいりました。でもそれが自分にとって必要なことでした。「基礎練した上で過去問やろう!」と決断するのは簡単で、それをするに越したことはありません。ですが受験は時間との闘い、そんな悠長なことは言ってられません。熟考して自分に必要のないものを徹底的に削るのはめちゃくちゃ大事でめちゃくちゃ難しいものです。ですが、それをすることで合格に近づきます。考えることで今の自分を知ることができます。毎回勉強する前に目的を考えてみてください。本当に必要な勉強か?その勉強をして自分は合格に近づくのか?と。同級生を見ていてもそれを考えて勉強していた友達は少なかったように思います。みんな参考書を終わらせることで勉強していると安心し、そこに成長が見いだせていたのか僕には疑問です。僕は受験直前も一日8時間程度しか勉強していなかったし、ほかの子に比べたら勉強時間は少なかったと思います。でも誰より充実した勉強内容だったと自信があります。第一志望に受かっていった友人の多くもそれをやっていたように感じます。
これを踏まえて、「量か質か」問題に対する自分の見解を言いたいと思います。僕は質だと思います。ですが、質というのはよく言われる「集中度」という意味ではなく、その内容です。その内容がどれほど自分にとって意味のあるものかということが、たくさんやること以上に大切だと思います。12時間かけて参考書を1周するより、自分のできない分野だけを2時間かけて一周し、その類題をほかの参考書で確認するほうが意味があると思います。それを常に意識して、考えて受験勉強をしてください。受験勉強に大事なのは優等生であることではなく賢明であることです。
次に受験当日の話をしようと思います。前日はめちゃくちゃ緊張していたし、ホテルでも勉強はほとんど手につかず、ゲームしたり動画を見たりして時間が過ぎていくのを待っていたような気がします。勉強できる人は勉強したほうがいいと思いますが、僕は緊張していて何もできそうになかったので娯楽で暇をつぶしました。そして夜、すでに推薦で国公立を決めていた同級生と電話で話をしましたが、そこで緊張が一気になくなって受験に挑むことができました。今となってはどんな話をしたのか、どんな気持ちでいたのかはほとんど覚えていないのですが、一つ言えるのは一緒に頑張ってきた同級生としゃべることほど安心することはないってことです。自分が頑張ってきたのをずっと見てきてくれた仲間と話をして自信を持って臨めたことは自分にとっては大きなことでした。さらに、自分は東大前期以外を一切受けてなくて落ちたら浪人!状態だったので後もなくて吹っ切れたというのもありました。受験中はいかに精神を安定させるかが一番大事なのでそれを意識してください。受かる実力がない人はそもそも受けに来ません。落ち着いたら受かれる程度の問題しか出ないとおもって落ち着いて説いてください。僕も焦りそうな場面はありつつその面持ちでなんとか冷静に解ききることができました。僕は結果的にあまり緊張せずに受験を終えることができたのですが、緊張はする!(模試の時は僕もずっとそうでした)って人もいると思うので一言いいたいと思います。受験問題を楽しんで解いてください。この問題設定面白いぞ。とか、こんな新パターン出してきたか○○大学!みたいな。できない問題も含め楽しんできてください。実力をつけてきたのであれば楽しんで解けば結果はおのずとついてきます。
最後に僕から伝えたいことをまとめて書きたいと思います。
勉強を楽しんでください。理想論ではありますが、勉強を苦痛だと思うのであれば受験することはお勧めしません。受験は勉強嫌いなまま頑張ってうまくいくほど楽なものじゃないです。ですが、勉強を楽しみに変えることができれば受験生活は充実したものになると思います。もちろん受験は結果も大事なので受からなければならないというプレッシャーは付きまといますしそれによって勉強から逃げたくなることはあります。ですが、それを乗り越えた先大学では縛られない自由な勉強が待っています。そこで本当に自分がやりたいことができるように今頑張ってください。自分のためだけに時間が使えてなおかつ周りがそれを積極的にサポートしてくれる環境なんて人生で一回あるかないかです。そんな貴重な経験を無駄にしないようにしてほしいと思います。
そして先ほども言いましたが、捨てる勇気を持ってください。捨てる勇気が持てない人は受験に失敗します。受験は勉強をすることが当然大事ですが、それ以上に戦略が大事です。ただ参考書の問題を解くのは目的地がどっちなのかわからないままとにかく車を走らせているようなもんです。ある場所に行くとき、その場所までどうやったら楽に早くいくか調べますよね?それと一緒です。合格への最短ルートを自分なりに探してみてください。続けていれば案外その取捨選択は楽に行えるようになるはずです。