THE プレゼンター「事前準備」と「伝え方」をマスターしてコミュニケーションの精度度をUP!
この記事は、こんな方にオススメ
プレゼンで人前で話したり、イベント登壇したりする方で、「伝え方のポイント」について、悩んでいたり興味関心のある方
はじめに
こんにちは、デザイナーのOsamu Satoです。
この記事を書いている現在(2018年12月)。近づく年の瀬に、1年を振り返っているところです。
個人的な話ですが、今年は「初のCSS Nite登壇」を経験させていただき、「人に伝えるって難しいなぁ」と痛感した一年でした。
今回は、この登壇を通じて考えた「伝え方ポイント」について書いてみようと思います。
(あくまで私個人の「準備作業についての私見」であって、セッション内容や、イベント全体・運営についてのお話ではありません)
もくじ
・はじめに
・登壇したイベントについて
・1.「事前準備」のポイント
1-1. プロジェクト全体の「完成形」をイメージする
1-2. 最初から正解を狙わない
1-3. 仕上がりを疑う
1-4. スライドが擦り減るほど練習する
・2.「伝え方」のポイント
2-1. コミュニケーションの低カロリー化
2-2. 聞き手の「これまで」に寄り添う
2-3. 言葉に体温を持たせる
2-4. デザイン的な配慮
・3.おわりに
登壇したイベントについて
CSS Nite LP57「All About XD」についてご存知の方は、読み飛ばして大丈夫です。
全国各地で様々なセミナーイベントが開かれていますが、その中の1つに、Web制作のクリエイター向けのセミナーイベント「CSS Nite」があります。
そのCSS Niteで、今年(2018年)の春、CSS Nite LP57「All About XD」という、セミナーイベントが開かれました。
アドビ社の「Adobe XD」という、話題のUI/UXデザインソフトにフォーカスした回で、「ソフトの基本操作」や「ソフトを使用した事例」などを全8セッション(各:25分)で取り上げ、主にWeb制作会社や事業会社の方(約300名)が参加されました。
>筆者が登壇したフォローアップページ
>CSS Nite LP57「All About XD」
>CSS Nite
>Adobe XD
では、ここから本題です。
1.「事前準備」のポイント
準備のポイントは、大きくは以下の4つになります。
1-1. プロジェクト全体の「完成形」をイメージする
1-2. 最初から正解を狙わない
1-3. スライドが擦り減るほど練習する
1-4. 仕上がりを疑う
カンタンに言うと、
全体の大枠を考えて、「作って直して」を何度も繰り返して、徐々にディティールを詰めていく、という進め方です。
これは、デザイナーの仕事の進め方に、とてもよく似ていますね。
では、順を追ってお話しましょう。
1-1.プロジェクト全体の「完成形」をイメージする
自分の担当パートだけでなく、プロジェクト全体を俯瞰する作業です。ただ俯瞰するだけではなく「プロジェクトが最高になった状態=完成形」をイメージするのがポイントです。
プロジェクトの一番理想的な状態をイメージすることで、クライアント(主催者)とユーザー(来場者)の、どんな期待・要望に、どう答えれば良いかが見えやすくなる他、プロジェクトにおける自分の役割も見えてくるので、とても重要な作業です。
今回のセミナーイベントの理想的な状態とは、「ソフトのユーザーと、ソフト使ってもらいたいアドビ社と、イベント主催者の3者が、皆幸せになること」。つまり「Adobe XDの素晴らしさがユーザー(来場者)に理解され、ソフトのユーザーが増えることでアドビ社が喜び、ユーザーの業務が改善されること。また、セミナーイベントの満足度も高く、CSS Niteの価値も高まる」ということになるでしょう。
具体的に何をするか。
①知る:どんな歴史があるのか
②見せ方:どんな風に見せ/見えるのか
③魅せ方:何を得ると満足するのか
これらを考えます。
①知る:どんな歴史があるのか
プロジェクトには、それまで歩んできた歴史があります(新規の場合を除く)。市場において何を評価されてきたのか、何を守り、何に価値を見出してきたのか。これらを把握しておくことで、クライアントの評価ポイントや、ユーザーの期待値との誤差を減らせるので、準備作業を助けてくれます。「作業している今」だけに捉われずに、プロジェクトの過去への敬意と、未来への展望も視野に入れておきましょう。
今回主催のCSS Niteは、
1. 10年以上も続いている、業界では有名なセミナーイベント。
2. 登壇される方々も、毎回、有名な有識者たちばかりで、内容のレベルも高い。
つまり、ブランド力をもったセミナーイベントなので、来場者は申し込む段階で既に一定の信頼と期待値をもって申し込みます。
そのため登壇者は、完成度の低いセッションをしてブランドイメージを崩すようなことは、許されないと言えるでしょう。(いや、本当にプレッシャーでした。。。)
②見せ方:どんな風に見せ/見えるのか
自分の制作物が「どんな空間で使われるのか・受け取られるのか」を確認します。いわゆる「納品サイズの確認」ですね。
当日、素晴らしいパフォーマンスをしていても、それが聞き手に見えていなければ意味がありません。そうならないようにするために、当日のパフォーマンスで「自分やスライドがどう見えるか」を知っておきましょう。
スライドは見えにくくないか
プレゼンやイベント登壇の場合、スライドを用いることが多いと思いますが、スライド作りにもコツがあります。
・スライドの文字の大きさ
会場の広さ、スクリーンの大きさ、聞き手とスクリーンまでの距離は把握しておきましょう。座席によっては、見えにくかったりするためです。
スライドに使う「文字の大きさ/太さ」も可読性には重要な要素なので、あまり小さい文字/細い文字は、使わない方が良いです。
会場写真などがあれば、実際にスライドを合成してみて、文字が読めそうかどうかを、予め確認してみるのがベストだと思います。
・スライドの要素配置
スライドはプロジェクターの投影都合などで、端の方が切れてしまうことがありますので、端に重要な要素を配置しないようにしましょう。
特にスライドの下の方は「前の人の頭で見えない」ことがあるので、より注意が必要です。
実際の見え具合です。座席の位置によっては、見づらいですね。(もちろん、前の人に罪はありませんよ)
・会場の明るさはどのくらいか
イベント会場では、会場の照明を落として、ステージだけ明るくするケースが多いです。この場合、スライドが白背景に黒文字だと白の面積が広く、強い光を見続けることになり、見る側は眩しくて疲れてしまいます。(例:部屋の照明を消して長時間TVを観ていると、光が強すぎて目が疲れてしまうのと同じですね)そのため、会場によっては、スライドの色使いに配慮してあげると親切ですね。オススメは「黒背景+白い文字」です!
・座席に机はあるか
来場者には、メモを取る方もいます。机がない場合、メモが取れないので、後日配布する資料を手厚くした方がよい場合があります。この作業があるのとないのとでは、準備の工数が変わってくるので、会場は予め確認しておくと良いでしょう。
このスライドの見せ方については、後の"2.「伝え方」のポイント”でも触れていこうと思います。
③魅せ方:何を得ると満足するのか
仕事のプレゼンや、イベント登壇をする際、「聞き手が、何を聞きに来ているのか」という期待値を知るのはとても重要です。それを満たせたかどうかで、あなたへの評価が変わってくるからです。
なので、参加者がどういった方々なのかという参加者属性の情報は、事前に知ることができるなら知っておいた方が良いでしょう。
1. どんな悩みを持っているのか
2. どんなキャリアを経てきた方々なのか
3. 今後どうなりたいのか
今回の申込者の参加者属性をみると、Adobe XDについては、
・ソフト利用は初心者
・まだソフトを導入していない
が多い状況でしたので、初心者向けに内容調整しました。「ソフトの基本操作、具体的な使い所、導入メリット、使用事例」など。ただ、内容調整ついてはイベント全体の構成に関わってくるので、登壇者同士での調整が必要になります。
1-2.最初から正解を狙わない
目的に向かって動くとき、様々な作業が発生します。(今回は、資料データを集めたり、画面をキャプチャーしたり、など)
しかし、始めからその全ての作業を完璧に処理しようとすると、とても時間がかかりますし、途中で間違いに気づいたときに、やり直すのがとても大変になります。
そうならないようにするために、まずは全体のアウトラインを描くことから始めると良いでしょう。途中「ここには、こんな資料が必要」など細かいディティールについてはメモだけに留めておき、全体のアウトラインだけ埋めていきます。すると、足りない要素が見えてきたり、尺(時間)に収まらないことが見えてきたり、全体に関わる修正点が見えてくるので、先にこれらを潰しておくことができます。
このように、大枠から少しずつ準備を進めていきましょう。
1-3.スライドが擦り減るほど練習する
準備ができたら、次は声に出して練習します。
しかし、喋るのが苦手でどうしても上手くいかない方は、台本を用意してみることをオススメします。ただし、本番では使わない練習用台本です。本番で台本を読んでしまうと、視線が下に向いてしまい、印象が良くないからです。
あとは、ひたすら繰り返し練習です。
ストップウォッチで測りながら「何分には、この部分まで終わっていなとマズイ!」など、ペース配分もメモしながら練習すると良いです(マラソンのペース配分を、何度も練習して、身体に染み込ませるのに似ているますね)。
1-4.仕上がりを疑う
「何度も繰り返し練習したし、もう大丈夫!」と、思うかもしれません。
しかし、声に出して練習してみると、言い回しに余計な単語が入っていたり、スライドの見せ方にも改善の余地が残っていたり…と、気付くことがあります。
私の場合は、短い言葉を選び直したり、スライドにも修正を加えたり、部分的には作り直したりもしました。
また、見落としや、もっと良い方法を探すのに1番良いのは「第三者にチェックしてもらうこと」です。自分の価値観(視野)では見えずらくなっていることでも、気づきやすいからです。
なので、「練習して、スライドを直して、練習して…」を、時間が許す限りやってみましょう。
「事前準備」については、以上になります。
ここからは「伝え方」についてお話ししていきましょう。
2.「伝え方」のポイント
伝えるときのポイントは以下になります。
2-1. コミュニケーションの低カロリー化
2-2. 聞き手の「これまで」に寄り添う
2-3. 言葉に体温を持たせる
2-4. デザイン的な配慮
2-1.コミュニケーションの低カロリー化
来場者は、登壇者が出す情報(資料やスライドなど)を、その場で初めて目にします。多くの人は、初めてのものを見るとき、そこに映る全てを認識しようとするので、すごく集中力を使います。なので、不要な要素を減らして「必要な情報を受け止めること」に集中できるように工夫する必要があります。
私はこの「情報を受け止めやすくする伝達方法」を「コミュニケーションの低カロリー化」と呼んでいます。
今回のセミナーイベントにおける「コミュニケーションの低カロリー化」とは、以下のような方法になります。
① 前提を伝える
② 聞き手の視線移動を減らす
③ 一気見せではなく順見せ
① 前提を伝える
最初にセッションの全体の流れを伝えます。
これは、心の準備をしてもらい、話を吸収するポイントをイメージしてもらうためです。
ビジネスシーンでも、
はじめに「相談なのですが。。。」と先に結論を聞くのと、
「これこれこんなことがあって、あーでこーで、これについての相談なのです」と、最後に結論を聞くのとでは、聞くときのカロリーの使い方が変わってくるのと同じですね。
また、取り扱う内容について「何を話し」「何を話さない」かを伝えておくとも大切です。これは、不足に対する不満を持たせないためです。
例えば、「こんな話を聞けると期待していたのに、話を聞き終わったら不足していた」というのと、最初に「これについては話しません」と伝えられるのでは、同じ情報不足でも、不満度が異なるからです。
② 聞き手の視線移動を減らす
1つの話をする時でも、1枚のスライドで解説しきれず、2枚3枚と続くときがあると思います。その際、前のスライドから引き継ぐ情報については、アニメーションなどで関連を見せてあげると、受け止める情報が減るので、カロリー消費を抑えられます。
スライド1枚1枚で情報が切り替わってしまうと、聞き手はその度に情報を受け取り直さなければならないので、とても疲れてしまうからです。
そういう意味では、Keynoteの「マジックワープ」の機能や、12月現在のAdobe XDの「自動アニメーション」の機能は、スライドを作るという意味で、非常に優秀だと思います。
③ 一気見せではなく順見せ
スライドの見せ方のコツとして、順番に見せるという方法があります。
これには、聞き手が情報を受け取るカロリーを抑えられる他に、こちらの意図通りに伝えられるというメリットがあります。
例えば、何かの関係図を見せる際にも、図の完成状態を一気に見せるのではなく、解説に合わせて何段階かに分けて順番に表示します。
2-2.聞き手の「これまで」に寄り添う
コミュニケーションをする際、一番気をつけて欲しいのが、この「聞き手の「これまで」に寄り添う」です。いくら素晴らしい情報を語っても、聞き手にとって受け取りにくければ、理解されず評価されないからです。
ちょっと難しいですが「コミュニケーション」を分解してみます。
コミュニケーションにおいて、それぞれの「立場」と、持っている「情報」について着目すると、
話し手=新しい情報を持っている
聞き手=これまでの情報しかもっていない(=これまでのやり方の中にいる)
と言えます。
こう捉えると、既に前提(持っている情報)が異なるので、「聞き手に伝える」といのはそれ自体が「異文化コミュニケーション」だと言えるかもしれません。
今回のセミナーイベントのように、聞き手(来場者)にとって新しいこと(ソフトの使い方や機能)を伝えるとき、聞き手(来場者)は「まだ、これまでのやり方の中にいる」という事になるので「新しい(機能・使い方)」だけを語っても、そのメリットが届きにくいです。
では、この文化の異なる相手に対して「新しいこと」を理解してもらうためには、どうすればよいか。
それには「聞き手の文化=これまで」に寄り添い、その文化との比較や差分を使って話すことで「聞き手が吸収する量を減らす(=カロリー消費を抑える)」ことで解決できます。これには「伝える側」も「聞く側」の文化を理解していることが必要です。
ただし、ここで1つ注意です。
「私が想定した聞き手」というのは、語りかける相手の最前列にいるだけで、周囲にはたくさんの人がいます。特定の方だけに向けてチューンナップしてしまうのは良くないと思いますので、バランスを考えて準備しましょう。
2-3.言葉に体温を持たせる
話す時の言葉遣いについてですが、できるだけ「言葉に体温」をもって伝えると良いと思います。「言葉の体温」とは「取説に書かれているような専門用語で武装した話し方」ではなく「心情の変化を語るような話し方」を指します。
取説の場合、専門用語については理解されている(理解できていなくてもあとで読み返せる)のが前提ですが、プレゼンやセミナーイベントのように、1回の視聴で瞬間的に理解してもらうことが必要な場合、聞き慣れない言葉を使うと、聞き手は自分で理解できる言葉に変換しながら聞くことになるので、とてもカロリーを消費します。
例えば
「登録されたアセットを検索すると、該当するオブジェクトをハイライトします」
うーん、単語を知らないと、よくわかりませんね。
では、次の言い方はどうでしょう。
「このアセット、どこで使ったかな?を探すと、ここにあるよ、と教えてくれます」
同じ内容を説明していますが、だいぶわかりやすく感じるのではないでしょうか。
この話し方の勉強方法は、情報番組などで自分の聞きやすい解説をしている方を見つけて真似るのが良いと思います。
(私は昔、フジテレビの特ダネで、笠井 信輔アナウンサーが登場人物の心情の変化で解説していたのが、とても分かりやすかったので、そこが原点になります)
ただ、参加者の中には、専門用語で固めた方が入りやすい方もいるかもしれませんので、ここは好みの分かれる所かもしれませんね。
2-4.デザイン的な配慮
サンプルで使用する素材にも、情報量を最小限に抑える工夫が必要です。
例えばデモンストレーションをする際、すごく凝ったデザインサンプルを見せて「なんかいい感じ!」「凄い事ができそう!」という気分になってもらう事も、イベント的には大切な要素だと思います。
ですが、参加者は当日初めてそのデザインサンプルを目にします。意匠の複雑さや配置された要素の多さなど、受け止めなければいけない情報が多いと、聞き手は肝心の説明に集中できないと思います。なので、見た目の格好良さよりも、構造としてのシンプルさを優先しました。
また、デザイン的な配慮でいうと、配色にも気をつけるとよいでしょう。
「伝えたいことが一番目立つように」調整してあげると、聞き手はカロリーを使わずに観ることができます。
3.おわりに
いかがだったでしょうか?
偉そうに書いてきましたが、私も全てが成せた訳ではないですし、当然、足りなかった部分もたくさんありました。
ただ、今回、CSS Niteのような大きな舞台で登壇する機会をいただけたのは、とても幸せなことだったと思います。特に、準備期間〜当日は、主催者の方や登壇仲間の方々から、たくさん勉強させていただきました。ありがとうございました。
中でも嬉しいのは、登壇後の現在(2018年12月)でも、当時の関係者の方々との繋がりが続いていることです。これは私にとって、とても大切な宝物になっています。
2019年は、そんな仲間たちに恩返しをしつつ、「宝物」を集めるトレジャーハンターになってみるのも悪くないかな、と、思っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。