[2023/12/2更新]
「ワクチンの有効性95%は虚偽で実際は0.84%」はミスリード。95%は率(RRR)、0.84%は差(ARR)で表した値。どちらも臨床試験で使われる指標で正しい数値だが、意味が異なるので単純比較はできない。
ワクチンの有効性は、率(RRR)で測るべきで、差(ARR)で比較すると判断を誤る。例えば、感染拡大して感染者が100倍になれば、発症率の差も100倍の84%になる。感染が拡大すると薬の有効性も上がるのは、何か変だなと気づくだろう。
0.84%を隠して95%だけを公表するのは意図的な誇張だとする意見があるが、それは算出方法の異なる2つの指標の意味を理解せず、数値の大小だけで比べた感覚論である。指標の意味を正しく理解していれば、0.84%が僅かな数値に見えても、全人口では約100万人の発症を防げることになり、決して有効性が低い数値ではないとわかる。
【解説】
テキサス州司法長官Ken Paxton氏がワクチンの発症予防効果95%は虚偽だとPfizer社を提訴したことからSNSで再燃した。これまでも同様のものが何度も繰返し拡散されてきたが、日本では2021年に以下の図でネットに拡散された。
正しい有効性の計算は以下になる。
一般に有効性の指標には、率(RRR)と差(ARR)の2つがあるが、薬の有効性は率(RRR)で測るべき。理由は、率(RRR)は環境や集団で変わるベースラインリスクに依存しないから。
ワクチンの有効性をARRで測ることの間違いは、以下のファクトチェックで指摘されている。
この誤解を生むARRの主張は、2021年に米国医師のRyan Cole氏が最初で、既に多くのファクトチェックで否定されている。
テキサス州の司法長官Ken Paxton氏は、トランプ前大統領と近しい共和党議員。過去にFBIの捜査を受けたり、証券詐欺疑惑で起訴されたり、今春には下院で収賄と職権乱用の容疑から弾劾訴追され職務停止(その後上院で否決)となった人物。2023/12/1に、原告をテキサス州として、Pfizer社を「ワクチンの有効性の説明が虚偽」と提訴している。
今現在も、武漢株1価ワクチンの当時の発症予防効果は、95%で世界のコンセンサスがある。
【追記】
ワクチンの有効性・安全性については自己でご判断ください。当方は、皆さんが正しい情報を基に判断できるよう、デマの指摘に努めます。