
「百条委アンケートは匿名で何回も回答できるので信用できない」は誤り
「百条委アンケートは匿名で何回も回答できるので信用できない」という指摘があるが、これは統計調査と勘違いした誤り。
パワハラ調査のアンケートは、数値や比率を評価する統計調査とは異なり、多くの手がかりを得る情報収集が目的なので、カウント数ではなく内容で評価する。匿名での実施も回答者が不利益を受けない為である。
従って、匿名や複数回答であっても何ら問題はない。寧ろ匿名実施は一般的に推奨される方法であり、複数回答も内容が同じなら1つと扱われるだけである。
そもそも百条委は、回答をもって事実確定とはせず、必ず証言等で事実検証しているので、アンケートの回答だけを見て信憑性を疑うのは間違いである。
問題にするなら、百条委ではなく、統計調査のように割合を報道したメディアの方である。
【解説】
厚労省は「匿名」を推奨している
「記名」は個人が特定され不利益を被る可能性が疑われると実態を把握できないことがあるため「匿名」での実施が推奨される。
また、匿名である以上、同一人物による複数回答は避けられないので、「匿名」は「複数回答」を許容している。
◾️厚生労働省 パワーハラスメント対策導入マニュアル(第4版) 参考資料「アンケート実施マニュアル(第2版)
「アンケートは原則として無記名で実施します」
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/pdf/pwhr2016_manual_ref_2_enquete_manual.doc

回答内容は必ずヒアリングで事実検証される
百条委のアンケート調査報告書に記載されているように、パワハラ調査の回答は必ず証言で検証され、回答内容だけで事実確定はしていない。
◾️兵庫県職員アンケート調査報告書
「個々の回答内容の真偽は今後の調査によって明らかにすべきもので、回答内容をもって事実確定としない」
https://web.pref.hyogo.lg.jp/gikai/iinkai/index/tokubetsu/bunsho/documents/bunsho_questionnaire1011_01.pdf

法令上、アンケート実施等の調査義務がある
パワハラ相談を受けた場合、企業には法令上の調査義務が発生する。隠れた類似案件を炙り出す為、通常は一斉アンケート調査等を実施する。
◾️厚労省指針
「 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること」を企業に義務づけている。https://jsite.mhlw.go.jp/saitama-roudoukyoku/content/contents/001983316.pdf
◾️LigalRight
https://legalright.co.jp/questionnaire/

問題は百条委ではなくメディア
問題にするなら、統計調査のように割合を報道して表現を誇張したメディアの方である。
◾️日経新聞(2024/9/4)
「兵庫県知事『パワハラ』42%見聞き」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF049090U4A900C2000000/
