無題
羊を数えても眠れない夜があっただから羊を殺した。
ささくれた指に刺さった麻縄の感触。
母親の遺書に添えられた、細胞分裂をするカエルの肧のブツブツとした図形。
ないはずの故郷に対して、朧気に抱く「懐かしい」という感情。
蛍光灯の光を反射する、爪に塗られたはげかけの黒いマニキュア。その中途半端に塗られた黒に、意味もなく「私みたいだね」って呟く午前4時44分。残念ながら44秒ではなかった。たぶん。
カンバスの描きかけの絵が「才能なんて虚構だ」と嘯いている。そうだね、と私は返す。
ボーイミーツガール、ガールミーツボーイ。
嗄れた痰のからんだ咳声で気だるげに歌う路上ミュージシャン。
本当は煙草なんか好きじゃないけど、不健康を謳歌するために吸ってるんだって言う19歳5ヶ月と13日。
獅子十六。発破六十四。掛け算を覚えるのはクラスの誰より早かった。
「チョコミント味?あんなの歯磨き粉じゃん。」というやり取りは一体この世で何度繰り返されているのだろうか。チョコミント解放軍。
私は谷川俊太郎にはなれない。