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演出家の独り言


『さようなら、シュルツ先生』の稽古は9月1日から始まるのだが、その前に数回ワークショップをやる。昨日がその第1回目で出演者の約三分の二が参加。蒸し暑い夕方、稽古場に向って歩いていると、ピカッと稲光、ゴロゴロと遠くに低音の響き。1時間前に埼玉からやって来る役者から「ゲリラ豪雨で今、電車停まってて、遅れます」とのLINE。それが新宿にもやって来たんだな。稽古場に入ろうとすると、ピカッ、ドッカーン、ザーッ!とまさにゲリラ。ただ、稽古場の中に入ると雨音も雷鳴もさほど気にならない。良い稽古場である。

さて、今日のワークショップの課題はシュルツの小説『マネキン人形論』『砂時計サナトリウム』の中から「気になった仕草・身振り・セリフ」をやってみよう、というもの。「気になった」というのは「興味を引かれた」「やってみたい」ということでもある。

なかなか面白いシーンを見せてくれた役者もいた。テキストに書かれたセリフや内容を一生懸命再現しようとして、その「一生懸命な有様」だけが見えている者もあった。

役者は題材を与えると多くの場合、そこに書いてある「セリフ」を覚えようとする。私も役者をやっていた時はそうだったと思う。今、私は「とりあえずセリフはいい。覚えなくていい。動きを作りなさい。身振り・仕草をテキストから拾い、あるいは想像して、それをやってみる。その場面の空間とか相手役との距離とかをまず考えて、その後で何を言うのかを考える。人は必ずしも「何かをいうため」に行動しているわけではなく、芝居というか戯曲の場合は「セリフ」ばかりが書かれているから、「まずセリフを覚えなくちゃ」とブツブツやり始めるが、普段の生活において「何かを言わなくちゃ」と思って、行動していることはほとんどないのである。だから、まず役者も「行動を作る」ということが大事なのだ。その体に「セリフを載せていく」というふうに稽古をやっていきましょう。

てなことを、昨日は喋って、ワークショップを終え、表に出たら雨は上がっていて、だいぶ涼しくなっていた。一雨降った後の気持ちの良さよ。ビールの美味さよ。お疲れ様。


松本修 ( MODE 主宰 演出)



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