水に浮くトマトが不味いなら
オランダに来てまだ5日目。それでもかなりインプットできている気がするのは初めて展示会目的ではなく、打ち合わせやミーティング、ヒヤリングに来ているからだ。(相変わらずゆっくりする時間がないのは大反省。)
自分の商品や考えを一方的に伝える機会ではなく、知らないことを聞いて、感じて、学んで、そして時には提案をして、双方向的に価値のある時間になっている。気がしている。
俺はまだ思い描いていることを上手に書き出すことができない。そしてそれを伝えることができない。何より自分の中で全く考えがまとまりきっていないし理解しきれていないこともあるだろうから、きっとこの文章を読んでいる人にも有益なモノになる事は少ないだろう。
けど書こうと決めた。正直何かにつけて事情や状況を考え、行動で来ずにいたことが多い。それは常にだれかを意識してしまうからだと分かっていてもそうなってしまう。今回わずか5日目にして、もっと自分を信じて良いことがわかった。
俺は英語がほとんど話せない。そんな人間が全く違う国で、全く違う生き方をしている人たちに、全く話せないけど知る限りの英語を駆使しつつGoogle先生に支えてもらったり、機会を作っていただいた大切な場面では確りと通訳して頂きながらやり取りをした。結果お相手から「僕たちはこう考えて結論を導いていたけど、君はここから考えて価値を繋いでいる構想はとても面白いよ」と興味を持ってもらえた。そしてそれは次に大きく繋がった、これは事実なんだ。
以前からもずっと目の前の問題を盲目的に解決(したかのように見えてただ消費)するよりも目の前の問題を根本的に理解してビジネスに変えることが大切だと思ってきた。
だからこそ稼げないし時間がかかる。でもその理由が分かったし理解できたこととして「例えばオランダではこんな話がある」と教えてもらった。
どこまでも合理的
「トマトを効率的に育てて収穫する際に、天高くまでツルを伸ばし、収穫したトマトを下に落とし、下には水が流れていてそのまま流れていくシステムが必要だ。しかし水に浮いてしまうトマトは不味い。そこでオランダではこう考える。水に浮くトマトが不味いなら、水に浮く美味しいトマトを育てればいい。と。」
他にも、町のサインはカッコいいの方が機能するという超絶分かり易い利論に基づきクリエイターに仕事を出す行政、常に高速で駆け抜けることが出来る自転車を支える道路と交通認識、都会と田舎のコントラストが強いことで物流と情報など互いの価値を高める関係性、ポイ捨てを減らすより地面にゴミ箱を埋めてさらに掃除も仕事にして働く場所を増やそうという姿勢、土地代が高いし景観も損なえないなら階段を急にして高さを生かそうという建築発想、トラムで遅延が起きて怒る人に対して「あなただけじゃないわ」「もうすぐ動くさ」とどこまでも自分ごとなのに、気づけば席を立ち居なくなり他の人と話す干渉し合わない町の在り方。とは言え時代とともに起きる変化を捉え議論も起き続ける環境。
これはあくまでオランダの例であり他の国には他の解決があるんだろう。ただきっと共通しているのはうまく行った時は称賛し、うまく行かなかった時は次を考える、ただそれだけなのに日本にいると成功より失敗を過大視してしまう傾向がある、少なくとも小心者の俺はそう考えてしまっている。
だからこそ背中を押してもらえた感覚だった。ものづくり、ことづくり、まちづくりにおいて自分の中ではかなり大きい構想があり相談を始めているが、素直に早くやってみようと思えた。それはオランダでは議論が起きることこそイノベーションがあり、そのイノベーションがやがてソリューションになると教えてもらったからだ。
その議論は、過去か未来か、そして何を求めるかでスタンスや主旨が決まると思う。
「今まではこうだったから、これからもこうだ。」にはもう興味がない。少なくともこれだけ色々変動がある世の中だから興味云々の前に変わらないとマズイ。と思う。
MGNETを設立してからずっと言っていることがある。それは「ものづくりとは、ただ闇雲に物を作りつづけることではない」と言うこと。その結果「直接工場に入って作業しない人はものづくりを語らないで欲しい」と言われたこともあった。これこそ議論だ。
だからこそ俺が日本に帰ったら
「水に浮く美味しいトマト」を作ろう。
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