見出し画像

東京03リモート単独公演「隔たってるね。」を大いに楽しむ

イライラしたときや、モヤモヤしたときは、自分が何に対してそういう気持ちになっているのか文章に書いてみるといいですよ、そうすれば少しは気持ちが落ち着くし、解決策も見えてくるかもしれません……みたいな、僕が書かなくても、どこかで誰かが書いていそうな、ぬるい説教くさい記事を書こうと思ったんです、先日ヒマだったので。で、最初の書き出しのところで、東京03の飯塚さんが、あるネタ中に発したツッコミのセリフを持ってこようと思ったんです。

「それ一回文章に起こせ。めちゃくちゃだってわかるから」

あるネタの中で、飯塚さんが豊本さんに対して、こう言うんです。このツッコミが、僕、すごく好きなんですよね。
で、このセリフを冒頭で引用しつつ、「気持ちを文章に書くことの効用」みたいな話に、まあ無理やりですけど展開させようかなと思ったわけです。でも、このセリフ、東京03さんのどの単独のネタだったかなぁ……あ、『図星中の図星』だ。一応確認のためにDVD観ておくかな、というわけで、棚から引っ張り出した『図星中の図星』のDVDを観始めた……ら、結局引用したいセリフの出てくるネタ以外も全部観ちゃって(だってスゲー面白いから!)、観終わったあとは、もう説教くさい記事なんか書く気もなくなってて、ただひたすら「03さんってやっぱりすごいわ」「俺もすごい台本書きたい!」という幸せな気持ちになっていましたとさ。

前置きが長くなり、すいません。そのやっぱりすごい東京03さんが、先日(2020年5月27日)、リモート単独公演『隔たってるね。』をユーチューブで生配信されたのですが、その公演がやっぱりすごかったという話です。

https://www.youtube.com/watch?v=AFKtj88mhTk

リモートと謳っている通り、お三方がZoomを使ってコントを演じられたわけなのですが、この公演がまあ素晴らしく面白く、「Zoomを使ったコント」というくくりの中では、現時点で東京03さんのこの公演が最高作なんじゃなかろうか、と思えるほどの完成度でございました。いかつい。クオリティが。

ネタの面白さはさることながら、まずもって東京03さん、並びにスタッフの皆さんのサービス精神に頭が下がります。Zoomを使ったコントがいくつか出来たから、単にそれを生配信でやる、というんじゃないんです。そこは単独公演と銘打っていますから、普段劇場でやる03さんの単独公演と同様、主題歌もあって、ネタ間のブリッジVもあって、エンディング曲もある、という豪華な仕様になっています。
「手作り感満載なので、大目に見て、いつもの単独よりはハードルを下げてね」的なことを、前説で飯塚さんが仰っておられましたが、いやいや、これ無料で観られるの!?というぐらいネタも歌もVも充実しておりました。しかも準備期間が一週間(!)だというんですから、関わった皆さんの仕事ぶりには驚嘆します。すごい人の近くには、すごい人がいるんですね。

本編のコントは、どれもZoomでつながる人たちの人間模様を描いたもの。友人とのオンライン飲み会、上司と部下のオンライン会議、そういう場で起こりがちな様々なシーンが、単なる「あるある」じゃなく、ちゃんとしたコントに仕立てられているところが、さすがの一言。しかも準備期間がさほどなかったにも関わらず、作り急いだ感じが全然しない。いつも通り練られた脚本、安定感のある演技、インスタントじゃない、まさしく「謹製」のコントばかり。

そして、Zoomを介した人間模様なので当然といえば当然なのですが、まさしく「今」を反映したコントばかりです。外出自粛要請が出ておよそ二ヵ月、その間にZoomというツールが普及し、ぼちぼち定着してきて、そんななか緊急事態宣言が解除された……そういう「今」の世の中の空気感を詰め込んだコント集になってます。だからこれは、今観ておいたほうが、一ヵ月後に観るより面白いんじゃないかな。いや、一ヵ月後でも十分に面白いのは確実だけど。でもって、一年後とかに観ると、「そうそう。あの頃は世の中こんな感じだったよねー」なんて、ある種アーカイブを見るような楽しさも生まれているかもしれない。

というわけで、日本一のコントグループが本気出すと(てゆーかいつも本気なんでしょうけど)いかついんだな、というのをまざまざと見せつけられた一時間強のリモート単独公演でございました。やっぱり他とは「隔たってるね。」東京03さんの実力は。これ、もう誰か言ったんだろうな。おすすめです!!

いいなと思ったら応援しよう!

大崎知仁
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?