才能の発見と評価の過程から、バイアスを除外せよ(勘で評価を行うな)
これまで登壇の機会やnote、KEENのWEBサイトでコミュニティやKEENの開発する「KEEN Manager」について発信してきました。
KEENにとって大きな節目を迎えるいま、改めて私から見える企業やコミュニティを取り巻く環境や、KEEN Managerの設計の基礎となる理念を書き記します。
いま、コミュニティに大きな注目が集まっています。
AWSやGoogle Cloud、ウイングアーク1stをはじめ、多くの企業がユーザーコミュニティを積極的に活用し、企業のマーケティング活動に組み込むようになってきました。
この、企業と個人の「あいだ」にあるコミュニティという集団は、とても面白い性質を持っています。
コミュニティは特定のリーダーやオーナーが牽引する集団ではなく、基本的には興味関心で人々が集まった、オープンな場です。にもかかわらず、その影響力は無視できないほどに大きくなっています。
ユーザーは、企業のオフィシャルな情報よりも、コミュニティというサードプレイスでやりとりされるユーザー視点の情報を、より信頼するようになってきているのです。
いまやコミュニティは、企業側がコミットすべき最重要メディアに成長しています。しかし、それを活用するためのメソッドは、まだ確立できていないケースがほとんどです。
企業が発信する公式情報よりも、ずっと詳細でリアルな生の声に大量にアクセスでき、誰とでも情報交換できてしまう現在。企業は、どのようにコミュニティという集団にアプローチすべきなのでしょうか。どのようにコミュニティのポテンシャルを引き出すのか、という問いには、まだ解がありません。
こうしたコミュニティの課題解決にあたって、KEENは「スター」という概念を提案してきました。
ロールモデルから「スター」へ
「スター」は、これまでの「ロールモデル」という枠組みがコミュニティの時代にはもはや機能しなくなったという認識から生まれました。
たとえば企業なら、これまでは自分のキャリアについて考えるとき、先輩や上司などと比較するのが常でした。つまり、社内のものさしで自分の成長や成功を測っていたわけです。このとき憧れたり、目標にしたりしていた対象が、ロールモデルでした。
しかし現在は、おもにSNSの普及によって、あらゆるタイプや業種の成功例が可視化されています。その結果、「こうありたい」という理想のイメージは、かならずしも同業者とはかぎらない外部の人々へと、大きく拡大しました。
コミュニティは、まず社内なら出会わないような多種多様な人たちが出入りするサードドアです。そこでは、いままで触れてこなかったような才能や魅力を持つ人たちとの交流が常に発生しています。自分とはまったく異なるルートで成功してきた人たちとのコミュニケーションを通じて、さまざま視座やヒントなど、新しい刺激が得られるのが、コミュニティです。
このような場において、その多種多様なメンバーたちに広く影響力を発揮できるカリスマ的な存在が、「スター」です。
企業と個人の「あいだ」にコミュニティがあり、その中心となって様々な業種の人たちからのリスペクトを集める、「スター」。この最重要プレイヤーをいかに発掘し、いかに育成できるかが、今後の企業マーケティングの鍵を握っているのです。
「スター」とコミュニティ・ビルディング
「スター」は、企業にも、顧客にも、そしてもちろんコミュニティにも、欠かせない存在です。
コミュニティ内では、ユーザーが製品やサービスについての意見を交換します。そこで「スター」が発信するUGC(User Generated Contents。ユーザーによって作成、発信されたコンテンツ)は、ユーザーが求めるコンテンツそのものであり、絶大な影響力をもっています。なかには辛口のレビューもあるわけですが、そういった情報が混在しているからこそ、その場への信頼感が生まれます。
もちろん、コミュニティ内での影響力に応じて、メンバーは企業やブランドに対して強い発言権を持ちはじめます。たとえばサービス改善の際にヒアリングを受けたり、新機能、新製品のパイロットユーザーとして選出されたり、製品開発に関わることができるようになるわけです。
しかし、明らかにトップとして活躍する目立ったメンバーであれば発見も容易ですが、コミュニティにはさまざまな影響力をもつメンバーがいます。メンバーそれぞれのポテンシャルを見極め、最大限に引き出すのがコミュニティマネージャーの仕事のひとつですが、そのための方法論は確立していません。そもそも大きなコミュニティでは人力ですべてをモニタリングするのは不可能に近く、認知負荷も高いです。
KEENでは、これまで多くのお客様のコミュニティビルディングを支援するなかで、一定の再現性をもって「スター」を発掘できる方法を確立してきました。
「スター」発掘のポイントは、行動の質と量にあります。
「スター」は行動ベースで発掘する
コミュニティのメンバーたちの行動パターンは、じつに多様です。SNSでは発信しているけれどイベントに参加していない人、イベントに来ているけれど発信はしない人。数百人、数千人という規模に成長したコミュニティになると、コミュニティを一つの集団ではなく、細分化した小集団で見てゆく必要があります。
そのために開発したのが、KEEN Managerです。
KEEN Managerは、コミュニティをデータ分析するためのツールです。行動ベースで集計したデータをもとに、コミュニティメンバーの影響力を6種類にクラスタリングすることが可能です。
具体的には、「スター」、「ネクストスター」、「マルチアクティブ」、「イベントゴーアー」、「シェアラー」、「サイレント」という分類を提案しています。
たとえば、「シェアラー」は、発信量は多いけれどイベントに顔を出さないメンバーです。匿名で、厳しい評価を発信しがちなのが、その特徴のひとつ。彼らには、オンラインのミートアップを企画したり、直接コミュニティマネージャーが話をして接点ができると、イベントに参加してくれるようになるなど活動の幅が広がることが期待できます。
逆に、イベントに来ているけれど発信はしないのが「イベントゴーアー」。多くのコミュニティで人数の割合が大きくなるのがこのクラスタです。彼らにも発信を促す後押しをしたり、コミュニティで活躍する「スター」と引き合わせたりすることで、発信力をつけていくことにつなげられます。
そして「ネクストスター」は「スター」の候補層です。すでにコミュニティイベントへの参加や発信量といった行動量が多く、コミュニティの中で影響力を持ち始めます。コミュニティマネージャーは、彼らをいち早く認識し、それぞれの才能を見つけてスポットライトを当て、「スター」に押し上げていくことが求められます。
理念としての行動ベース評価
KEEN Managerが行動データに基づいた分析・評価を重視している背景には、それがコミュニティのメンバーやコミュニティマネージャーの個人的なバイアスを排除することにつながるという信念があります。
行動ベースでの貢献は、誰にでも可能なことです。そこでは性別や年齢、肩書などは問われません。しかし、コミュニティマネージャーも人間ですから状況把握や意思決定に、個人的なバイアスがかかってしまうことは避けられません。たとえば年配の男性の役職者だから説得力があるといった印象を抱いてしまうこともあります。
行動ベースでの評価は、こうした個人的なバイアスを排除し、良い行動をそのまま良い行動として客観的に評価することを可能にします。いわば、数字をコミュニティ内の共通言語にしようという発想です。
そもそもコミュニティという集団が持つ強みは、そこに多種多様な人間が集まっているところにある。そこは、普段の組織や上下関係から解放された、フラットでオープンな人間関係が構築可能な場です。もちろんコミュニティのルールは必要ですが、その範囲内で、互いに配慮し合いながら、誰もが自分本来の力を発揮できるような場。それがコミュニティであるべきではないでしょうか。
だから、コミュニティにおける活躍を評価するツールも、やはりフラットかつオープンであることが望ましいとKEENは考えています。
誰でも活躍できて、それがそのまま評価される、コミュニティという一種の理想郷。それを行動ベースでの評価を徹底したツールによって実現するところに、KEEN Managerの設計理念はあるのです。
おわりに
ここまで、「スター」と行動ベースでの評価、その考えの上に設計した「KEEN Manager」をご紹介しました。
KEENやKEEN Managerにすこしでも興味を持ってくださった方はぜひ一度お話させてください。
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