ここは、大正区の南端、大阪市随一の鋼鉄まみれな界隈である。基調色はもちろん錆色。
錆色はときにモノクロームと同様に物事の本質そのもの、人間世界の根源的なものかもしれない。またそこに寄り添う安易な感傷のモノガタリ。
大正区・船町エリアである。中山製鋼所、日立造船、そしてランドマークは、片側ループというアシンメトリーでかつ巨大な新木津川大橋である。
また、縦横の運河が交差し、水の都・大阪とアナロジーも感じる。
ただ、コンビナートにおける無数の照明ごときフォトジェニックな要素には欠ける。
しかし、この地には大きなエロスがある。それは、工場から昼夜問わずたちのぼる大量の水蒸気である。未知の生命体の吐息のように。
また無数の赤茶けたパイプがあたかもこの寡黙で巨大な生物の血管であるようだ。
新木津川大橋は彼女の創造物である。
巨大な螺旋に従い天に近づいてゆく。
開けた視界に広がる暗闇の向こうにきらめく彼女の子供たち。境界で静かに錆びて吐息を付き続ける存在との美しい対比と、切っても切れない深い血脈。
または、私の真なるシュールレアリスムである。