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サカナクション《ドキュメント》の分析と解釈
この記事はサカナクションの名曲《ドキュメント》を音楽的な分析を踏まえた解釈を試みたものです。
イントロ〜Aメロ
イントロとAメロでは(譜例1)に示す2小節のギターアルペジオが繰り返し演奏されます。そのサウンドはとても不穏に響き「絶望」や「不安」を想起します。
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この箇所が不穏に響く理由の一つとして、主和音(この場合Eのコード)が登場しないことがあります。2小節目のA→Am6というコードは本来ならEに進むべきなのですがEには進まずC#mに進んでしまいます。また、C#mに後続するA とAm6のせいでC#mを主和音に解釈することも難しいのです。そのためこの箇所を聞くとなんとも不安で居心地が悪い、居場所がない感覚を覚えます。サウンドで表現される不安感は見事に歌詞に対応しています。
今までの僕の話は全部嘘さ
この先も全部ウソさ
何か言って何か聴いて僕は生きてる
このままでいいのかな?
イントロのギターの背景でメロトロン・フルートの音がバッキングをしていますが、ただでさえふわふわして不安定なメロトロンのサウンドが裏打ちで鳴らされることで、さらにその不安感が増していることも指摘しておきましょう。(譜例2)
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Bメロ
Bメロに入るとそれまでの不穏な雰囲気が一点して、すこし光が差したような感覚を覚えます。その理由はコード進行をみれば明らか、主和音であるEのコードがここで初めて登場するのです(譜例3)。ただし主和音がすべてて転回系(低音がルートを弾かない)であることにより、どこかまだ足元がおぼつかないニュアンスを感じさせている点に注意が必要です。
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ずっと前の君の思い出は
どこか昔の自分を見るようで
サビ
Bメロの終わりで初めてドミナントVが鳴り響き、サビの頭で基本形のIに進行します。それと同時に「この世界は僕のもの」という力強い言葉が歌われます。しかしその力強さもIVmのサブドミナントマイナーのサウンドによりすぐに揺らがされます(譜例4)
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この世界は僕のもの
どこからか話してる声がするよ
すぐ何かに負けて涙流す
君と僕は似てるな
エンディング
これまで分析してきたプロセス、葛藤を経て辿り着くコーダは感動的です。
2小節ループで主和音が鳴らされることがなかったギターアルペジオを4小節パターンとなり、主和音Eがしっかりと鳴り響いています(譜例5)。そして、裏打ちで不安定だったメロトロンは表打ちに変化します(譜例6)。
不明確だった主和音が明確になり、不安定な裏打ちは安定した表打ちになりエンディングを迎える。その意味は最後の一節の言葉を読めば明確でしょう。
愛の歌 歌ってもいいかなって思い始めてる。
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