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おさかなだお長崎ツアー第2弾開催!

10月5日〜7日 高島水産研究所視察や長崎漁港の競り見学など盛りだくさん

DAOメンバーの希望者が準備を進め、実際に現地に行き長崎のお魚事情を深掘る「長崎ツアー」が10月5日(土)~7日(月)の日程で開催され、無事終了しました。5月に開催した実地ツアーの第2弾で、今回も首都圏から参加したDAOメンバーらは、長崎市役所の方々をはじめ、地元大学教員や漁業関係者、経営者らと繋がり、親交を温めることができました。ツアーレポートをお送りします。

高島港ターミナル

【DAY1・5日(土)】

 初日、メンバーが長崎港から船で向かったのは、かつて炭鉱で栄え、近くには軍艦島も見える高島。養殖DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により若者が集まり活気づく海と生きる地域社会の実現を目指すプロジェクト「ながさきBLUEエコノミー」の代表機関、長崎大学が養殖研究を行う高島水産研究所を見学する機会に恵まれました。

 長崎港から伊王島を経由し、約30分で到着した高島港から歩みを進めると、研究所の外観が見えてきます。かつて長崎市水産センター高島事業所だった場所を借り受け再整備し、稚魚育成棟や親魚養成棟など複数の施設で構成。今年3月からブリなどの稚魚の飼育の実証実験を開始しているそうです。

高島水産研究所外観

養殖事業をゼロから始めると、通常、成魚として市場に流通させるまでに2~3年はかかるとされ、その間は施設やインフラの投資のみで収入は無く、万一、海上養殖で赤潮などに見舞われると全滅するリスクがあります。
このため、同研究所では種苗生産を行うとともに、養殖期間を稚魚期(孵化仔魚~300グラム)、幼魚期(300グラム~1キロ)、および養成期(1キロ~5キロ)までの期間を別々の養殖業者が各々1年間で実施する分業養殖の実証実験を進めていく計画です。

水槽内の魚にメンバーも興味津々

 同研究所で養殖魚の生育を見守る長崎大学共創の場「ながさきBLUEエコノミー」形成拠点副PLを務める室越章氏の案内で施設に入ると、大規模な水槽が複数稼働し、10センチ程度に成長した真鯛の稚魚(約2万尾)、さらに30~40センチ程度に成長したブリ幼魚(1500尾)を飼育しています。
今後取水工事が完了すると毎時200トンの海水を取水することが可能になり、30万匹ほどの稚魚の生産が可能になります。
メンバーは、水槽内を忙しなく回遊する魚の姿を見ることができましたが室越氏曰く「ずっと動いているわけではなく、普段は海流に流されない程度の速さで泳いでいます」と説明を受け、一同納得する場面も。

詳しく解説する長崎大の室越氏

3月にスタートした事業ですが、早速、試練が訪れたといいます。開始時は順調だったものの、夏場の海水温の高さに悩まされたというのです。昨夏は平均海水温が28度程度だったのが、今夏は8月上旬以降30度超が続くことに。陸上養殖ではありますが、温度コントロールはせずに海水を水槽に入れて飼育しているため、今後の検討課題になっているといいます。
おなじみのブリの飼育の場合、適温は18~25度とされており、室越氏は「今後、大きな問題になる」と警鐘を鳴らします。さらに、海水温上昇による長崎近海魚の魚種の変化が起きている点をはじめ、陸上養殖の場合、エネルギーなどインフラコストがかかりすぎる点などを指摘。今後高島での研究を加速させ、将来的には、「光による成長と産卵の制御」といった従来にない養殖魚生産技術などを活用した環境保全型の効果的養殖技術や低コスト飼料の開発、DX技術を用いた養殖クラウドマネジメントサービスの開発などにつなげたいとしています。

室越氏の話は、魚の世界から見た地球温暖化問題や養殖ビジネスの課題に発展。ノルウェーサーモンを事例に、「これまでも養殖技術自体は常に日本が先行しつつも、海外勢がそれを一般化する術に長けていて、結局、日本の技術がガラパゴス化していくという悪循環に陥っている」と指摘しました。

高島は、現時点で定住者が少なく、港から離れると廃墟などもあり寂しい部分もありますが、養殖を核に人材育成と連携した宿泊・研究施設の整備や、参画企業、民間養殖業者、高島漁協と連携した研究や施設運営などを進めて高島を活性化させる「サイエンスアイランド高島」構想も打ち上がっています。

高島ではあちこちに猫の姿が

 ツアーメンバーは、島内で移動中、何匹もの猫に癒されつつ、室越氏の案内で高島を高台から見下ろせる展望台に行き、間近に迫る軍艦島の姿に興奮。短時間ではありましたが、高島という場所や長崎近海にとどまらず魚を取り巻く現状などを多角的に考える有意義な時間となりました。

高島から軍艦島を望む

初日の夜は、室越氏や長崎純心大学人文学部教授で地域連携センター長を務める水畑順作氏ら長崎在住の皆さんと東京から参加したメンバーが長崎市内の居酒屋「旬彩 ながや」で懇親。
新鮮な魚介類の刺し身やフライにとどまらず、カリカリ梅のように楽しめる小さなひょうたん型の漬物「ひょうたん漬け」や、地元ではおなじみの雲仙ハムを焼いたものなどが続々と登場し、遅くまで語り合いました。

長崎の美味しい魚や料理に舌つづみ(ゆうこう真鯛、ゆうこうシマアジなど)

 今回のツアーは、長崎市内の中心部から車で約20分で到着する漁師町、茂木(もぎ)町に宿泊です。かつて料亭街として栄えたこの街は、のんびりとした漁港や街並みを散策するだけで心が洗われます。

茂木から望む橘湾


宿泊は、この茂木の地でまちづくりにも尽力する株式会社toitoitoiが運営する宿泊施設「Nagasaki House ぶらぶら」と「月と海」の2棟を利用しました。
いずれも、かつては料亭だった施設を前の経営者がフルリノベーションしたそうですが、シンプルながら洗練されたデザインの内装や機能性の高さもあって終始快適に過ごすことができました。オーシャンビューの部屋からは対岸の雲仙普賢岳の山並みと橘湾が一望でき、天候に恵まれれば朝日が昇る姿を部屋でくつろぎながら楽しむことができます。

「Nagasaki House ぶらぶら」
「月と海」


【DAY2・6日(日)】

朝の茂木漁港

ツアー2日目は、茂木エリアをゆったりと深掘る狙いで、宿で貸し出してくれるスポーツサイクルに乗って散策。漁港を横眼に見ながら途中、地元スーパーで東京では見かけない食材や総菜を見つけたり、雲仙と往復するフェリー乗り場などを見て回りました。

メンバーは茂木エリアをサイクリング

昼御飯は茂木の日本料理「茂木いけす川正」で定食に舌つづみ。隣のお客さんが豪勢な伊勢エビ定食を食されていて、メンバー内に「自分も注文します!」と立候補者がいたのですが、店員さんに「予約制ですぐには用意できないんですよ」と言われあえ無く断念。

西海市も訪れました

 午後、メンバーは車に分乗して西海市に。途中、海上に小島が点在する絶景や深い山並みなどを見つつドライブを楽しみました。西海市では、長崎から食文化を作っている地元の川添酢造をはじめ、DAOメンバーが勤務するデザイン会社「クリエイティブカンパニー」などもあり、メンバーも街の様子を視察しました。

BBQではサザエも登場

 夜は茂木の「ぶらぶら」内にあるオープンスペースでBBQを。茂木の無添加干物「梅のや」のサバ、アジ(塩、みりん干し)のほか、西海市からの帰路にある「がんばランド」で購入したサザエやエビなどぜいたくな食材と、シャンパンや日本酒などとのマリアージュを堪能しました。焼き物マスターとしても活躍した株式会社toitoitoi代表取締役の大島徹也氏は「地域活性化には外部の方からのアイデアが重要。長崎にとってありがたいことで、これからも繋がってほしい」とあいさつし、この日を締めくくりました。

魚だけでなく肉など贅沢な食材に囲まれ話も弾みました

【DAY3・7日(月)】

 最終日の7日は、早朝3時半に茂木を出発し、車で約1時間。長崎市万才町にある長崎漁港の長崎卸売市場で競りや獲れたての豊富な魚貝類を見学する貴重な体験が叶いました。

長崎漁港


 漁港は荷捌き所や仲卸市場などを含め広さは約22万平方メートルに及び、全体で1日約250種類、約200トンもの魚を扱うといいます。色持ちの良さや食感が長崎の方々にも人気のヒラマサをはじめ、長崎ではヤイトと呼ぶスマガツオ、豆アジやシイラ、など長崎近海で獲れたものを中心に大小さまざまな新鮮な魚介類が目の前に広がり、圧倒されました。

競りが始まり場内も緊迫感が

 競り5分前の呼びかけで緊張感が高まるもつかの間、5時ちょうどに鐘の音とともに競りが始まりました。バショウカジキの競りでは、「30!」「60!」「70!」といった声が競り人から上がり、どんどんと落札されていきます。例えばこのバショウカジキの数字の場合、70ならばキロ当たり700円相当だそうで、1匹あたり9万~10万円程度になると説明を受けました。

長崎の魚貝類について説明を聞きました

このほか、水槽に入った伊勢エビなど活魚の競り場や、仲卸業者が集まる建物など活気あふれる様子を見ることができました。

 案内を頂いた漁港関係者によると「例年通りの漁獲量ですが、海水温の上昇の影響か、クエなど南方系の魚を見る機会が増えています」と話してくれました。

早朝の視察でしたが貴重な経験に

早朝のスタートだったため、メンバーは一旦休憩を取ったのち、長崎市役所にて活動状況の共有などを行いました。
長崎市側からは、「DAO」について深く知りたい、といったことや、ブロックチェーンの活用が長崎では十分とはいえず、本活動との接点を通じてWeb3の分野にも知見を得られたらうれしい、といった声がありました。
おさかなだおのメンバーからは、関西万博を発信機会として活用し、長崎にもゆかりの深いポルトガルと連携強化することで長崎の魚や食文化を発信するアイデアについてディスカッションさせていただきました。次のステップとして長崎側のポルトガル関係者とのつながりを深めることなどの提案がありました。

長崎市とのミーティング

 最終日の7日は、年に一度の大祭「長崎くんち」の初日、ということもあり、市内の至る所で山車や踊り手の姿が見られました。メンバーの滞在日程にばらつきがあったため、長崎市役所でのミーティングの終了をもって解散となり、ツアーの日程を無事終えることとなりました。

【番外編】

 筆者は野母崎方面にも行くことができました。

 長崎駅から車で向かうこと約30分。夏は海水浴場としても賑わう高浜エリアの高台に建つ施設「高浜アイランド」のコンクリート打ちっぱなしのおしゃれな建物が目に入ります。実はこの施設も、今回のツアーで宿泊した茂木の「ぶらぶら」や「月と海」を運営する大島氏がこの4月から運営を手掛けています。

高浜アイランドをバックに大島氏(左)ら

 何といっても、その魅力は施設から目の前に見える「軍艦島」の雄姿。ツアーメンバーで訪れた高島とは反対側から望むことができます。訪れた時間はちょうど日が落ちる瞬間で、少し場所をずらせば、軍艦島の真上に夕日が落ちる写真も撮影可能とのこと。

高浜側から見た軍艦島(右上)

高浜アイランドの施設では現在、カフェなどの営業をしていますが、11月3日には、魚種日本一の長崎の魚をアピールするため、軍艦島と同じ長さの480メートル分の軍艦巻を作り、来場者で食べつくす「軍艦大作戦」を実施するなど、話題づくりも欠かしません。コワーキング利用のほか、親子連れで楽しめる企画なども続々登場予定で、これからの展開が楽しみです。

執筆・写真 nasushin

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