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袴田事件再審無罪判決!長崎市議会の「再審法改正を求める意見書」採択に関する請願

袴田事件再審無罪判決

本日2024年9月26日。
逮捕から58年を経過して、再審により袴田事件が無罪の判決となりました。
この事件については日弁連のこちらのページから詳細をご覧ください。
 🔴袴田事件

そもそもなぜ58年もかかってしまったのか。
一人の人の人生にとって取り返しのつかない時間です。
濡れ衣で58年間も犯罪者としてのあらぬ疑いをかけられながら戦い続けてこられたというこの事実は強烈に重いものであると感じます。

なぜ再審は難しいのか?4つの条件

なぜこれほどまでに手こずってしまったのか。
再審が難しいのかについて考えてみます。

再審法とは?

再審法という名前の法律があるわけではありません。
再審手続きに関わる条文は「刑事訴訟法」の中に定められていますが、
わずか19条しかないものとなっています。
そして実際に再審に持ち込むためには、下記のようないくつかの非常に大きなハードルが存在します。

弁護側に求められる証拠の新発見

まず一つ目として、再審に持ち込むためには非常に厳格な要件が求められます。
再審開始には、「無罪を言い渡すべき明白な証拠」の新発見が必要とされているのです。
これは非常に高いハードルであり、新たな証拠を見つけること自体が困難な上、その証拠が「明白」であると裁判所に認めさせることも容易ではありません。

検察による不十分な証拠開示

二つ目に、証拠開示の不十分さがあります。
検察側が保有する証拠の開示は限定的であり、弁護側は必要な情報を入手しにくい状況にあります。
検察は自分たちの主張に都合のいい証拠を並べるわけですから、当たり前と言えば当たり前です。
これにより、再審請求の準備が難航しますし、先に述べた新たな証拠発見の機会も制限されてしまうことになります。

消極的な裁判所の姿勢

三つ目に裁判所の消極的な姿勢があります。
裁判所は、過去の判決の正当性を重視する傾向があり、再審開始に消極的な場合があります。
日本は判例法の国ではありませんが、判例は非常に重要視されるものです。
特に、自白や状況証拠に基づく有罪判決の場合、新たな証拠がなければ再審開始を認めないケースも見られます。

検察の不服申し立て制度

四つ目に、検察側の抵抗、不服申し立てがあります。
これが非常に良くないシステムなんです。
検察側は、再審開始によって過去の捜査や裁判の誤りが明らかになることを恐れ、再審請求に強く抵抗する場合があります。
不服申し立て制度とは、裁判所が再審開始を決定した場合に、検察側がその決定に対して異議を申し立て、上級裁判所に判断を仰ぐ手続きのことを指します。

検察側が不服申し立てを行うことで、再審開始決定が覆る可能性があり、再審手続きが長期化することがあります。
これは、冤罪被害者にとって大きな負担となり、迅速な救済を妨げる要因となっています。

そしてこの検察による不服申し立て制度に対して、大きな批判が集まっているわけです。

守られない冤罪被害者の人権

検察は犯人だと決めて申し立てるわけですから、捜査そのものに難癖がつくことをよしとするわけがありません。
普通に考えて、捜査の結果を否定された側の検察が、それを大人しく受け入れて素直に再審に入るわけがないわけです。
それにも関わらず、現在の法制度では、その片一方の側の当事者である検察の権限が非常に大きく強く存在しており、そのために、冤罪被害者の人権が不当に扱われてしまっている状況です。

長崎市議会としての再審法改正を求める

令和6年9月議会において、長崎県弁護士会さんによる請願がありました。
「再審法の改正を求める意見書」の採択に関わる請願です。
全会一致で可決され、意見書が長崎市議会議長毎熊政直の名前で関係各所に送付されました。

6月議会からの経緯

先の6月議会でも国民救済会さんから再審法改正を求める意見書に係る請願が出されていました。
私は総務員会の副委員長として、こちらの請願人の方に対し、委員会の中でいくつか質問をさせていただきました。
ディスカッションの上で意見書案の文面に修正を加えるなどして対応することができるかどうかお尋ねしましたが、それについては来られている請願人の方ではできないとのお答えでした。
そこで、趣旨に対しては賛成ではありましたが、私も含めて委員会として否決をいたしました。

しかし、私も法学徒として学んできた身であります。
再審法改正については非常に思うところがあり、このまま終わらせてはならないと強く思いました。
そこで当時の議長に相談をし、長崎県弁護士会さんに掛け合うようにとのご助言をいただきました。
早速長崎県弁護士会さんにお伺いし、会長の中村尚志弁護士とお話をしました。
すると、弁護士会さんとしても再審法改正への意見書提出を求める請願を出したいとの思いがあられるとのことでしたので、9月議会で提出できるようにそこから動き出しました。

請願には紹介議員というサインが必要になります。
今回は全ての会派の皆さんにご説明にあがりました。
そこで、自民創生、公明党、日本共産党、ながさき次世代の党の皆さんが紹介議員を出してくださいました。
そして議会でも全会一致での可決をしていただくことができました。
本当にご協力いただき、ありがとうございました。

意見書の意味

意見書は中央に送られても誰かの机の上に積み重なっていくだけのものかもしれません。
たった5gの紙に過ぎません。
けれども、この一枚を通すためにかけた時間は非常に多く、弁護士会さんの方での協議や文書作成など含めても懸けていただいた時間と労力は決して小さなものではありません。
見えないところで何十人もの方々に関わっていただいてやっと通るものなのだと知りました。

また、たとえ地方の小さな意見であったとしても、こうしたプロセスを経てまとまった声を軽んじてほしくはないものだと自分が当事者として関わったからこそ思うようになりました。

どうか中央の方達には、その机の1枚がそこに届くまでの何十時間と大きな思いを想像していただけると幸いです。

多少ではありますが法律を学んだことのある人間としての一定の役割を議会人として果たすことができたのではないかと思っております。

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