寝ても覚めても夫の頭の中はお魚でいっぱい
【職業】
鮮魚仲卸業、海鮮丼屋店主
【趣味】
釣り、サーフィン、ギター
【妻】
私の名前は「海」
これはできすぎた話。
四六時中、お魚のことを考えている。
水が流れているところなら、必ず覗き込んで魚影を探す。
お魚大好き、毎日首ったけ。
彼が寝ている間にもお魚の夢を見ているらしいことがわかった時は震えた。
「狭い、幅が狭い…ブリ…そのまま…よろこんでもらえるように…」
おそらく、ブリを発送するのにそのスチロール箱では小さかったのだろう。
箱が小さいと、尾鰭を切らなければならなかったり、胴の一番太い部分に氷が当たらなくて配送中に保冷状態を保てなかったりする。スチロール箱は、魚の身にストレスのない大きさのもので、十分に氷を入れられて保冷状態を保てるものが良い。
この後に、
「…日本がダメになっちゃうから…」
と続けた。
夫はブリの箱に日本の将来を見ている。
「アカヤガラ…そんな箱に入れちゃうなんて…やるじゃん」
またしても箱問題。
アカヤガラは、体長の1/3が頭部(ストロー状の口)であり、最大で2メートルにもなる細長い魚である。
年間通じて味は変わらないが、秋〜春が旬。頭部が大きいので、歩留まりを考えると高級魚の部類になる。吸い物の実にして美味、刺身でも絶品。しっかりした歯応えの中に旨味がぐんぐん押し寄せてくる。
夫は、アカヤガラのような特殊な形状の魚を送る箱に常々頭を悩ませているのだろう。
夢の中で彼は最適な箱に出会ったのだろう。夢から覚めた今や、それがどんな箱だったのか闇の中だ。
そのほか、
「魚離れもあるしね」
「5本あったらいいのに」
「箱が足りない」
「上身でちょうだい」
「サンマは見ないな」
「ピンでまとめて」
「28箱」
寝ている間もよくしゃべる夫である。