幸せを手に入れる最後の方法 ~2年間のカウンセリング実録~ 24.呪いの日①
「今週土曜日が誕生日です。
今週に入って友達やお客さんからプレゼントを貰うようになりました。
誕生日前日は大好きな友達と会う予定です。
誕生日も7人が集まってパーティーをしてくれます。
でも私の心には重いです。
誕生日を迎えていいのか、生きていていいのか、いつになったら死ねるのか、バロンを撫でて涙を堪えています。
私はやっぱり、生まれたこと、受精して発生してしまったことを後悔しています。
誰にも言えません。叱られるからです。」
「咲笑ちゃんは生まれたことを後悔しているから、誕生日を迎えることや祝ってもらうことに対する抵抗が消えないんだね。
でも咲笑ちゃんを知る人にとって、誕生日はとても大切な日なんだよ。
誕生日は生まれたことを喜ぶ日じゃなくて、祝ってくれる人に感謝する日にしたらどうだろう?」
「養父の誕生日を祝うと、怒鳴られてきました。
母が『お父さんは生まれたことを憎んでるから誕生日が嫌いなの。』と言っていました。
養父と同じになってしまいました。
無理して無理して、祝ってくれるみんなに『ありがとう』と言って、おうちで泣いています。
感謝は本当にしてるし、そう伝えてます。
でも、もっと根本のところ、存在してごめんなさい、という思いが拭えません。」
「生まれたことを後悔する気持ちは、咲笑ちゃんの素直な気持ちだから、今は仕方ないんだと思う。
存在してごめんなさい、は伝えにくい言葉だよね。」
「言い過ぎると、友だちを泣かせてしまう。
そんなこと言わないでって、泣いてくれるの。
それでも分からない私は馬鹿なんだと思う。
誕生日、つらい。誕生したくなかった。」
「僕は咲笑ちゃんに会えて本当に良かったと思ってるけど、そう言われるのもつらいのかな?」
「つらいというより、申し訳ないの。
まーくんには、まだカウンセラーとしての一サンプルとして役に立つかもしれない、でも友達や、ましてや彼なんて、時間と労力の無駄遣いを申し訳なく思うの。
もっと他にいい子いるよ?って。でも選ばれたいっていう矛盾があります。
先述の映画のケイティも、他の子にしたら?ってキャメロンに言いました。」
「友達としては、聞きたくない言葉だよね。きっと。
好きな気持ちって、やめようと思って止められるものではないし、好きな人に生きていて欲しい、生きていてくれて良かったって気持ちは、そう思ってくれる人がいるっていう事実を受け止めることしかできないんだろうけど。」
「騙してる気がするんです。
私、『あー言えばこー言う』ですね、ごめんなさい。
治療することに気乗りはしません。
このまま限界まで放置して朽ちるのもいいけど、日々まわりに毒を撒き散らすなら、早めに死にたいと思うところです。
私を本当に好きな人なんていないから、私の最大限の道化役(道化役は太宰治の表現、私にとっては『ぶりっこ』が道化として自分を守る手段だったのだと思います)が効果を成してみんな騙されてくれているのだ、と思います。
あーややこしい、めんどくさい。嫌な奴ですね、私。」
「大丈夫だよ。僕には遠慮なく、言いたいこと、思うことを言ってね。
咲笑ちゃんが愛情を求めて自分を作ってきたことは知ってる。
それが悪いことだとは思わないよ。」
「道化なんです。
私がかわいくいる理由は、かわいければまわりを明るくしたり癒したり出来て、存在する許しを乞えて、生きてていいかなって思えるんです。」
「確かに咲笑ちゃんは周囲を明るくしたり癒したり出来てるんじゃないかな?
道化だと思っていても続ける。
それが出来るのは凄いことだと思うよ。」
「ただの承認欲求オバケです。人に会うと疲れます。」
幸せを手に入れる最後の方法
~2年間のカウンセリング実録~
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
誕生日。
一般的には誰もが祝い、喜ぶ日ですら、苦痛に感じる人がいる。
人によっては、その理由も『そんなことで』って思うのかもしれない。
でも、人は『そんなことで』悩み、『そんなことで』死を選ぼうとさえする。
苦しみは結局、その人本人にしか分からないものなのかもしれない。
でも、だからこそ、『そんなこと』をきちんと受け止める。
そんな風にありたいな、と思います。
続きは明日更新します。
よろしければ是非おつきあいください。