幸せを手に入れる最後の方法 ~2年間のカウンセリング実録~ 14.待ち続けた言葉
咲笑ちゃんと連絡が途切れてからも、僕は彼女が投稿するSNSで近況を知ることができた。
そこには、いろんな場所で、たくさんの友達と笑顔で過ごしている咲笑ちゃんの姿があった。
でも、その笑顔は僕を安心させてくれるものではなかった。
悲しに暮れていた時も、咲笑ちゃんはSNSで笑顔を振りまいていた。
だからどんなに幸せそうな姿を見ても、僕には彼女が無理をしているように思えて、その笑顔を見ながら「咲笑ちゃん、頑張れ。」とつぶやいていた。
でも、年末の投稿はいつもと違う内容だった。
「ドラマチックだった一年が終わります…。
何度も挫けそうになったけど、やっと、やっと、生きてて良かったと言えそうです。
みんなほんとにありがとう。
たくさんの愛と優しさとお祈りを感謝します。
一人では到底無理だった。
紅白もガキ使も年越し蕎麦もない大晦日は、スカイツリーから今年最後の夕暮れを見て、泣きそうになったよ。
みなさま、良いお年を。愛してる!」
これは、ひょっとすると…。
僕は一年の終わりを本当に幸せな気持ちで過ごすことができた。
そして遂に、咲笑ちゃんから連絡が来た。
ドキドキしながらそのメッセージを開いた僕は、きっと満面の笑みを浮かべていたと思う。
「まーくん、あけましておめでとう!
たくさん心配かけてごめんね。
私きっともう大丈夫だ。」
待ち続けた言葉が、「大丈夫」の文字がそこにあった。
「咲笑ちゃん、あけましておめでとう。
昨年は僕にとっても激動の年だったけど、年末の投稿を見た時に『1年間で最も嬉しい出来事だ。』って思いました。
多分僕が知らないつらい事もたくさんあったと思うし、それを感じさせられる事もたくさんあったんだけど、僕は敢えて悩みを訊きませんでした。
実は話したいってずっと思ってた。
でも、咲笑ちゃんが僕の力抜きで『大丈夫』って言えるようになったことが本当に嬉しい!良かった!わざわざ報告してくれてありがとう。
そして、おめでとう!またご飯食べに行こうね。」
「今ね、まーくんとのやり取りを見直してたんだけど、やっとまーくんの言葉の意味がわかる気がして、涙がどんどん出て、ほんとに、終わったんだなって思った。
finishじゃなくてoverな感じ。
ずっとずっと気にかけてくれててありがとう。
必要なときに必要な言葉をありがとう、まーくんは私の最高のカウンセラーです。」
「ありがとう。咲笑ちゃん。
咲笑ちゃんが自分の力で立ち直ったのに、カウンセラーとして最高の言葉を貰いました。
カウンセラーとしての僕の記念日にします。
前に日本人の感覚や表現の話をしたけど、言葉(文字)にしても違いがあるよね。finishじゃなくてover、とてもしっくりきます。
嬉しいな。ほんとに嬉しい。きっと目の前に居たら抱きしめてるんだろうなってくらい。
咲笑ちゃん、僕と出逢ってくれて、話してくれて、心を開いてくれて、僕の最初のクライアントさんになってくれて、本当にありがとう。
僕もとっても幸せです。」
「(号泣)私ほんとにいろんな人からの愛情もらって生きてるのに何で気付かなかったんだろう。
いまね、中学時代の塾の友だちのおうちに泊まってるの。
その子はお仕事に行くから私が勝手にいろいろ使わせてもらってるの。
こんなこともすごく恵まれてるよね。」
「人によって必要な時期やタイミングがあって、それが今、咲笑ちゃんに訪れたってことなんだろうね。
それと、目の前にある、恵まれていることに気付ける人って実は少ないのかもしれない。
咲笑ちゃんはつらい思いをした分だけそこに気付けるから、きっと人一倍幸せになれると思うよ。」
「ありがとう。」
「まーくん、東京から帰って来てしばらくして、お仕事に戻ったよ。
周りのみんなが『おかえり。』って迎えてくれて、『元気になってよかった。東京のみんなに感謝だ。』って言ってくれて、東京のみんなは今周りにいるみんなに『咲笑をよろしく。』って思ってくれてて、とても幸せ。」
「咲笑ちゃん、良かったね。幸せを噛み締めてるんだね。
咲笑ちゃんはずっと周りに愛されてたけど、やっと受け入れる事ができた感じかな?
仕事をするのも前とは違う楽しさがあるのかもしれないね。
咲笑ちゃんが幸せで嬉しい。伝えてくれてありがとう。」
「好かれているのかもしれない、から信じて始めてみようと思う。
いま、みんなにお土産を配ってるの。それも幸せ。
みんな『おかえり』って、可愛がってくれた。
まーくんにはお知らせしなきゃと思ったの。」
「ありがとう。その気持ちが嬉しい。
咲笑ちゃん、踏み出したね!
幸せな未来に向けて、歩き続けてるね。
もう一度、おめでとう。」
幸せを手に入れる最後の方法
~2年間のカウンセリング実録~
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
この時、僕は本当に幸せでした。
ところがカウンセリングはここからが本番。
そして僕自身の変化と気づきもこの先にありました。
次回はまた明日更新します。
よろしければ引き続き、新米カウンセラーの奮闘におつきあいください。