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コロナ闘病記

梁山泊 島元草多   

7月某日
 休日。気まぐれで某逸翁美術館へ行く。幽霊絵画の企画展(主に浮世絵版画)をやっていた。
 拝観客はまばら。
 知らぬ間に鼻風邪をひいたようで、水っぱながズルズルと出るがその他に特に気になることもなく、一三記念館も軽く覗いて帰る。

1日目
 激しい頭痛とうなされるような気分、高熱が出ているらしい。
 美術館に同行した友人は何ともないらしく、とにかく病院へ行けと言われる。病院を調べるのも辛いと伝えると、近所の病院に片っ端から電話をしてくれた。しかし時節柄、とにかく発熱外来をうたっている施設はそもそも連絡がつながらないところがほとんど、たまにつながっても予約でいっぱいなので新規は受け入れられないと言われるらしい。
 とにかく頭がガンガン、意識はぼんやりとして夢と現の合間でうなされ続ける。
 手探りで体温計を探して体温を計ると39.3℃。
 病院にはいつ行けるかわからず、どうしていいかわからないので、とりあえずまた横になりながら、ネットで抗原検査キットを注文する。
 全身から悪寒、フラフラになりながらどうにか長袖長ズボンの服を探してきてタオルケット2枚にくるまって横になるが、寒気が止まらない。食欲がまったくないのでりんごジュースを胃に入れて市販の頭痛薬を飲み、冷えピタを貼って、少し寝て着替えてを繰り返す。

2日目
 11時に近くのクリニックで予約が取れたと友人から連絡あり。
 朦朧とする意識の中、パジャマで汗だくになりながら向かう。徒歩5分の距離がひどく遠く感じる。
 どうにか受付を済ませるも、先に2組の若い男と女の患者がそれぞれ看護師さんと談笑している。漏れ聞こえてくる会話では友人が濃厚接触者になったから一応自分も来たとか何とか。両者とも大変ほがらかである。こんな奴らが多いから本当に必要な人の予約が取れないのではないのか。元気なら来るな。
 腹立たしい気持ちで、待合ソファーに倒れ込んでいるのに限りなく近い態勢で順番を待つ。
 ようやく呼ばれて別室に入ると女医さん(死語)が簡単に聞き取りを済ませたあと、抗原検査キットの30cmくらいある綿棒みたいなのを信じられないくらい鼻に突っ込んできた。
 キットに採取した体液を垂らすと、数秒で縦線が2つ現れ、陽性ですね、と言われた。
 キットの写真撮りますか? と聞かれたので一瞬何を言われているかわからずぼんやりしていると、写真だと説明いらずで一目瞭然なので撮る人が多いとの説明。なるほど。

 薬は5分ほど歩いた別の処方箋薬局で15分ほど待つか、後ほど配達もできると言われたので一刻も早く横になりたいので配達を選び、帰宅。
 はっきりとは覚えていないが、とうとうコロナになってしまったという思いと、そうはいっても原因不明の高熱ではなく病名が付いて良かったという複雑な気持ちだった気がする。
 少し寝たあと、病院で言われたHerSYSというのに登録し、一人暮らしなので配食サービスも申し込む。
 夕方頃、薬局から薬が届く。食欲がないのでヨーグルトを食べて、薬局からもらったカロナールを飲む。眠る。
 そういえば翌日配達予定の抗原検査キットは届かない。もういらないが。

3日目
 ここから数日、8℃半ばの熱、断続的な偏頭痛、関節痛、強い倦怠感が続く。味覚はまったく正常。
 咳もほとんど出ないが、日を追うごとに喉の傷みが強くなる。
 冷えピタはすぐ底を尽き、アイスノンと絞ったタオルを凍らしたものを交代で頭にあてながら、汗をかいたら着替える、という古典的な対処療法を続ける。油断するとすぐ寒気がするため、基本は長袖長ズボン、タオルケットにくるまり、クーラーを付けたり消したりして温度調整をした。
 カロナールを飲んで、熱が下がって少し楽になったタイミングを見計らって〆切間近のパソコン仕事をする。一時間くらいが限度。少し眠って作業を繰り返す。
 近所に住む母親が食料を玄関先に持ってきてくれる。ありがたい。
 配食サービスは来ない。

4日目
 昨日と変わらず。とにかく一日中寝ている。
 数日風呂に入っていないため、トイレに起きた際に久々に鏡を見ると鼻の周辺に水疱のような透明のブツブツがたくさん出来ている。

5日目
 熱は薬を飲むと7℃台に下がり、しばらくするとまた8℃台といった具合。
何か鼻の下が痛いと思ったら、昨日の水疱が潰れて鼻の周りが血まみれになっている。
 いよいよ伝染病患者らしくなってきた。ひどく暗い気持ちになる。
 ネットの抗原検査キットが今頃届く。

6日目
 変わらず。いい加減汗で気持ちが悪いので、少し楽なタイミングで久々にシャワーを浴びる。首筋、腕、足、背中など、全身に蕁麻疹が出ていることに気付く。段々かゆくなってくる。カロナールがなくなる。

7日目
 熱は7度台から上がらなくなる。頭痛と倦怠感は増す一方。ずっと横になっているからしんどいのではないかという仮説を立て、なるべくソファーに座るようにするが、15分ほどで疲れて寝る。
 配食サービスようやく届く。弁当が来るのかと思っていたが、カップラーメンやフリーズドライの詰め合わせだった。
 蕁麻疹治まらず。

8日目
 友人が仕事帰りに色々買ってきてくれるというので、マクドナルドを頼む。
 二日酔いとか体調不良の時に限ってマクドが食べたくなるのだ。食欲が戻ってきた証拠かもしれない。
 玄関前に置いてもらい、食事をしてシャワーを浴びたら人間に戻った気持ちになった。
 蕁麻疹は治まらず。

9日目
 軽い微熱と倦怠感がいつまでも残っている。しかしそろそろ社会復帰する日も迫っている。こんな感じでいけるのだろうか。

10日目
 いよいよ本日で待機期間終了となる。体調は大分マシになったものの、出来ればすぐに横になりたいくらいの倦怠感と軽い頭痛。結局蕁麻疹は治まらないまま。

 自分はワクチンも未接種なので、重症化には当たらないものの、かなり強く症状が出たのかもしれない。そのことは自己責任なので何も言う筋合いはないが、とにかく熱が出ても病院に行くことが出来ない、配食は当てにならない、ホテル療養などの選択肢もなく、自宅療養一択で、一人暮らしには結構厳しい現状であった。
 みなさんもご自愛いただくとともに、防災も兼ねて水や食糧の備蓄をおすすめします。

おわり   

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