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謎めいた職業「古本屋」になりたいあなたへ

三重県名張市で古本屋「古書からすうり」を営んでいる中田と申します。

職業について、イメージと実際は違うというのは良くあること。
では、古本屋というと、やっぱり違うのですが、何しろ珍しい類の職業なので、実情は謎めいているかと思います。
実際、開業してから「そうだったんだー!」と初めて解ったこと、「ぜんぜん違ったなあ…」と反省したこと、とにかく発見だらけでした。
古本が好きで職業にしたいと思っている方の後押しになればと思い、自分の経験を踏まえて、大まかな概要編と細々した実践編の2回に分けて書いていきたいと思います。

【概要編】

古本屋のイメージと言えば…、
薄暗い店内と天井までの棚にぎっしり詰まった本、並んでいるのは何だかよく解らない古い本、おやじさんが難しい顔をしてレジに座っている、そして「儲からない職業」。
そんなところでしょうか。

問題になってくるのが、最後にあげたイメージ「儲からない職業」(笑)
でも、正しくは「きちんと頑張れば成り立つ職業」というのが、自分が抱いている実感です。

先輩古本屋さんから伺うと、80年代初頭は古本屋業界の黄金期らしく、今からすると信じられないくらい売上があったようです。その頃と比べると、確かに食べていけなくなってきた感は出るのは自然です。
あと、読書人口の減少や、大型チェーン店との競合で街の古本屋さんが消えていったこともあると思います。

実は、一口に古本屋さんと言っても、いろいろな形態があるのはご存知でしょうか?
お店ひとつ取っても、実店舗がある場合もありますし、実店舗なしでネット販売だけの古本屋さんもあります。扱う本のジャンルだって、一般書から専門書、古典籍、あるいはCDやレコードとさまざまです。
売上もネット販売が主であったり、イベント販売がそうであったりと店舗販売だけとは限りません。
お店のあり方を選ぶのも「頑張るところ」で、ただの何でもありだと大型店に太刀打ちできません。

商品を揃えていくのも「頑張るところ」です。
だって、新刊書ではありません、仕入れただけでは、まだ商品ではありません。
選別したりクリーニングをしたり、値段を付けたり、商品となるまでとにかく作業があります。
しかも、注文した本が届くなんてのはありませんので、買取や業者市などで地道に仕入れていかなくてはいけないので大変です。

だから、たくさんの商品を揃えて、売上を安定させるまで少々時間はかかると思います。
副収入があったり、家族が別の職業についていたりすれば、経営を安定させるまでの道のりが楽です。
古書からすうりの場合、カフェを併設することで解決を試みたのですが、古本屋的には失敗でした。
このことは実践編でもう一度触れたいと思います。

大事なことは、お店の特色を出せる古本を仕入れ続けることだと思います。
個人から買取りを増やすには、広告などを使ってお店の存在を広めないといけないので時間がかかります。
好みの古本をいっぺんに仕入れるには業者市に行くのが一番です。
古書組合に所属すれば業者市に出ることができますので、古書組合加入はかなり大事です。

「古物商許可」があれば古本屋として買取ができますので、古書組合に入らず「古本屋+副収入」という形式も選択肢としては勿論ありです。この形式でまず開業して、のちのち組合加入でがっつり古本屋をやっていく…これが無理のない古本屋の開業なのかなと思います。

どの職業もそうですが、古本屋も許可証ひとつで、たちまち成るものではありません。
むしろ「成っていく」という表現がより強い職業と思います。限られた紙面ですので、今回は「その流れ」だけでもお伝えできればと思いました。
実践編では、古本屋を営むにあたって、あまり取り上げられないけど、実務面で大事だなと思った点をご紹介したいと思います。

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