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名古屋市減税のパワーを解説part3

 大阪市減税会 事務局 陰気なたまむし (@inkinatamamushi) です。関西で継続的に減税活動し活動報告をしますので、フォロー頂けたら幸いです。
 今回は、名古屋市で行われている住民税減税条例の政策効果の報告書を解説していきます。part3は減税条例の効果分析報告書の中の、減税による経済効果等を解説します。

前回の記事

 前回は、調査報告書の中のアンケート調査の結果を整理しました。その結果、減税政策の認知度の高さから議員にとって得票を伸ばすには良い政策であることを考察しました。よければ参考ください。


経済シミュレーションについて

 今回の報告書では、住民税5%減税による経済効果が整理されています。まず、経済シミュレーションについて説明します。
 今回の経済シミュレーションでは以下の項目について分析がされています。

  • 市内総生産(経済成長指標)

  • 民間最終消費支出

  • 企業所得

  • 人口の社会増減

  • 税収

 また、為替や株価など社会情勢もシミュレーションには反映されています。ですので、景気が良かったから減税がたまたまうまく行ったという批判はあたりません。今回のシミュレーションは、純粋に減税による効果のみを抽出して分析されています。


シミュレーションの考え方

 経済シミュレーションの部分は読むのが難しいと思いますので、噛み砕いて説明します。実際の報告書の構成とは異なる部分がありますのでご了承ください。
 まず、シミュレーションは合計3パターンされており、減税あり1パターン、減税なし2パターンです。以下に3パターンを示します。

  1. 5%減税(今の名古屋の状態) → 今の税率、経済状況からシミュレーションを行い、今後10年間でどれだけ経済成長するかを分析

  2. 減税なし(5%増税) → 1,で作成したシミュレーションの税率を5%増税させ、増収分をそのまま名古屋の支出に加算した場合、今後10年間でどれだけ経済成長するかを分析

  3. 減税なし(5%増税,特定財源考慮) → 2,で作成したシミュレーションの税率を5%増税させ、増収分とその3倍の金額を名古屋の支出に上乗せした場合、今後10年間でどれだけ経済成長するかを分析

  この3,減税なし(5%増税、特定財源考慮)というのがクセ者です。特定財源考慮というのは、例えばハコモノを作るために市町村が5億円支出するときに、国や県が交付金を出したり、市町村が市債を発行して資金調達をし、1億円に上乗せして支払います。そのため、地域には5億円以上のお金が入ってきます。今回のシミュレーションでは、名古屋市が5億円支出したらなんだかんだ15億円は上乗せされて、20億円の支出がされると仮定して計算されています。
 各シミュレーションのイメージは以下です。

シミュレーションイメージ

 1,2についてが単純に減税の有無で比較した結果で、3については特殊条件(ずるしてる)と考えるのがいいかと思います。


シミュレーション結果

 シミュレーション結果を表にまとめます。

 表の解説をします。ややこしいので①市内総生産、④人口の社会増減のみ解説します。
 まず、5%減税した場合減税なしの10年間の分析結果を比較すると

  • 市内総生産 :5%減税(4.27%)    減税なし (2.92%)

  • 人口の増減 :5%減税(87,490人)   減税なし (81,501人)

 となるため、どちらも5%減税の方が良い結果となりました。やはり減税した方が良いわけです。
 次に、5%減税した場合減税なし(特定財源考慮)の10年間の分析結果を比較すると

  • 市内総生産 :5%減税(4.27%)    減税なし-特定財源 (4.58%)

  • 人口の増減 :5%減税(87,490人)   減税なし-特定財源 (88,717人)

 となるため、どちらも減税なし-特定財源考慮が良い結果となりました。しかしこの結果は、国や県から交付金があったり、借金をした場合のシミュレーション結果なので、名古屋の支出に3倍の金額が上乗せされています。つまり、3倍の金額を上乗せしないと、5%減税以上の効果を発揮することが難しいわけです。噛み砕いて言うと、ずるしないと減税より効果的な政策はできないわけです。

 また、特定財源は国や県の交付金、市債の発行が財源となります。なので、金利上昇や臨時財政対策債などの問題で今後財源減少が予想される中で、それを頼りとすることは悪手です。
 しかし、特定財源によって市町村にとっては通常の支出より経済効果があるというのも理解できないわけではありません。なので、今回のシミュレーション結果から誰からも文句が出ない政策は、「特定財源に紐づかない事業を廃止して減税する」です。


注意点

 今回の経済分析に対する反論として、今回のシミュレーションは名古屋市における分析結果なので他の自治体で似たような結果が得られるかわからない、というものがあります。これはその通りです。わかりません。特に地方で減税してもそのお金が都会の自治体に流れるだけという意見も理解できます。
 しかし、減税しなくても都会にお金と人は流れるし、減税しなかったら名古屋のような減税した地域に、ものすごい勢いでお金と人が流れていきます。どちらにせよ地方は衰退傾向になってしまいます。
 ですので、地方のような自治体ほど、都会よりも魅力的になるくらい減税して人とお金を呼び寄せるしかないのです。有効な反論に対して先に反論しておきます。


最後に

 これまで、アンケート結果と経済シミュレーションの結果から、基礎自治体の議員や住民にとって減税が最適な政策であることが説明できたと思います。次回は、これまでに整理した結果を一枚の資料にして、勉強会や議員への説明資料として使えるようにしたいと思います。

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