Vol.6「お骨つぼ」
「喉仏」って、「ノドボトケ」じゃないの⁈
お骨あげに立ち会ったは事ありますか?
最初に「のどぼとけ」を探されますよね?
「のどぼとけ」がどこの部分の骨なのか、ちゃんと知ってますか?
それでは問題です。
「のどぼとけ」ってどこの骨?
①男性のは目立つ、のどの真ん中のでっぱり
②口を開けた時に奥にぶら下がって見えるアレ
③首のうしろ、いわゆる「うなじ」あたり
① アダムのりんご
①番だと思ってのどをさすっている人がいたら大間違いです。
ボーッと生きてんじゃねーよ!です。
医学的に言うと「喉頭隆起(こうとうりゅうき)」、甲状軟骨が突起しただけの部分で、
目立たないだけで女性にもあります。軟骨なので火葬をすると火力で消えてしまいます。
この部分を英語で言うと「Adam's apple」(アダムの林檎)。旧約聖書に出てくる、神が最初に創造した男性「アダム」に由来します。アダムが禁断の果実(りんご)を食べた際、神に見つかり、驚いたアダムは林檎を喉に詰まらせてしまいました。以降、男性の象徴として喉が突起してるんだそうです。
一方、最初の女性であるイブは、禁断の果実を飲み込みました。それが胸につかえてふたつに割れて乳房になり、女性の象徴になったんだとか。
2人が禁断の果実を食べたことが原罪として、今日まで人類全体に影響を及ぼしています。キリスト教ではその原罪から人類を救ってくれる
救世主こそ「イエス=キリスト」と説いています。
② のど◯んこの役割
②番と答えた方。
それ、ノドボトケやない、ノドチ◯コや。医学的には「口蓋垂(こうがいすい)」と呼びます。のどちん◯は主に筋肉で出来ていて、口から飲み込む際に鼻に侵入するのを防ぐという大切な役割があります。
③ 背骨の一部「第二頸椎(けいつい)」
正解は③番、
背骨は椎骨という骨がいくつも積み重なっています。背中に連なる背骨の、上から2番目にあたる「第二頚椎」が喉仏です。
第二頚椎は人間にとって、とても大切な骨です。第二頚椎のことを「軸椎(じくつい)」と言いますが、人が頭を動かす時の軸になる最も重要な部分です。この部分がきれいに残ると、仏教における最も尊い座り方「結跏趺坐(けっかふざ)」の姿に見えます。突起した部分が頭で、あぐらをかいて座る姿です。
お骨つぼに納めた後も、その姿が正面を向くように安置をします。
斎場の職員さんが喉仏の向きを教えてくれるので、骨箱の中で喉仏が正面を向くように納めましょう。
◯寸ってどれくらいの大きさ?
お骨つぼの大きさはセンチメートルではなく、
「尺(しゃく)」や「寸(すん)」で表します。
1寸の長さは約3.03cm。
一寸法師はこれくらいの大きさということです。もともとは親指の幅にちなんだ長さでした。
10寸で1尺(約30.3cm)です。
肘から手首までの骨を尺骨と言いますが、この長さに由来します。
親指の幅や腕の長さは人によってまちまちなので、国や時代によってその長さは異なりました。
現在の長さは明治時代の「尺貫法」で1尺=10/33メートルと定められました。
本骨、胴骨、総骨、分骨?
大きさですが、一般的には2寸〜5尺、7寸、1尺のサイズがあります。このサイズはお骨つぼの直径を示します。
一番小さなサイズが直径2寸(約6.06cm)の
「本骨」です。ちなみに、一般的な印鑑の長さが2寸です。
3寸以上のサイズを「胴骨」と呼んでいます。
7寸と1尺のサイズを「総骨」と言い、お骨を全て拾う場合に使用します。
本来、「本骨」は喉仏のことを指す言葉です。本骨以外の部分を胴骨と呼びます。
骨上げの際に、寺と墓など別の場所に納骨するために2つ以上のつぼに分けて納めることを分骨と言います。
関西と関東の違い〜骨つぼ編〜
葬儀に関する常識は、地方によって全く異なります。これはお骨つぼに関しても言えます。
関西は全ての骨は拾わず、残った遺骨は斎場が供養する一部収骨が基本です。
ところが関東では、全ての骨を拾う全部収骨が一般的です。喉仏も遺灰も全て同じ骨つぼに納めます。喉仏以外の部分を「本骨」と呼ぶことが多いそうです。
分骨は、主に関西の風習です。
京都の本願寺や和歌山の高野山といった宗派本山が近い関西では、本山に骨を納める本山納骨をされる方が多く、骨をあちこちに納めることに抵抗がありません。関西は火葬場と墓地が同じ場所にあることが多く、焼骨をその場で墓地に納めて、家には必要な分だけ持ち帰るという風習が分骨として根付いたのかも知れません。
お骨あげのお作法
お骨あげの作法も地域によって異なります。
たとえば、収骨に使う箸は一本は木、一本は竹でできた材質の違う箸を対にして使います。これを「違い箸」と言います。
二人一組でそれぞれの箸で一つの骨を拾ったり、リレー形式で箸から箸へ骨を渡していくところもあります。「箸渡し」と言います。
どちらも「嫌い箸」といって食事の席ではマナー違反です。
日本は火葬最先端の国
アジアの火葬率を見れば、中国が67%、韓国が49%。そして日本は、99.9%。和歌山県や三重県、山梨県などのごく一部の地域で土葬の風習が残っているようです。
焼骨がこれだけきれいに残るのは日本だけのようで、他の国では火力が強すぎてほぼ灰になります。
遺骨を仏様として扱う日本の火葬技術は、世界でも最先端レベルです。
遺骨の数え方
遺骨の数え方は「柱(はしら)」です。
毎年、お盆の頃になると硫黄島で戦死した方の遺骨を探して帰還させるニュースが話題になります。太平洋上に浮かぶ硫黄島には今も1万柱を超える遺骨が眠ったままだそうです。
位牌も「柱」と数えますが、日本ではもう一つ「柱」と数えるものがあります。
それは、神様です。
神様は、地面に立てた柱に降臨すると考えられていました。亡くなられた人も同じく、地面に立てた柱に降臨すると考えられました。
亡き人の遺骨を神様として拝む。
日本人にとって、遺骨がいかに大切なものなのかがわかりますよね。
世界のお骨事情
カトリック(キリスト教)では火葬はタブーとされ、40年前にようやくローマ法王庁が許可を出しました。
それでも、アメリカやヨーロッパは土葬が主流です。
死者が復活した際に肉体が必要とされるユダヤ教、イスラム教では、火葬はいまだに禁忌です。
アメリカのワシントン州では2019年5月、亡くなった人を堆肥化する法案が成立し、火葬や土葬に変わる新しい埋葬法として注目を集めています。
遺族は骨の代わりに堆肥化された土を持ち帰り、花や野菜、木を植えることができます。
まさに、「土に還る」。
近い将来、日本でも…?
まとめ
・のど仏は第二頸椎という大切な骨
・納骨する場所を確認しましょう
・寸(約3.03cm)も覚えておきましょう
イラスト 木村
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