Vol.21「数え年」
新年のごあいさつ
新年のあいさつといえば?
「明けましておめでとうございます。」
ですよね。
それではいったい
何が「明けた」のがめでたいのでしょう?
① 年が明けた
② 夜が明けた
③ 喪が明けた
↓
↓
↓
正解は、
②番、「夜が明けた」です。
年を越して初めての夜明け、つまり「初日の出」を迎えられておめでとうございます、という意味です。
昔は、夜明けが一日のはじまりでした。
新年の夜明けは一年のはじまりという大切な日でした。
昔は家族総出で新年の夜明けを待ちました。
新年の夜明けと言えば初日の出。
初日の出と共に現れる神様がいます。
その神様こそ『歳神様(としがみさま)』。
お正月にやって来て、一年の幸せをもたらすために家々を訪れる神様です。
歳神様
お正月はそもそも、歳神様をお迎えし、お祀りする行事です。
例えば、年末の大掃除は歳神様をいつでも迎え入れられるように準備する、家を清めるための神事です。
歳神様が迷わずに家にやって来るように目印として玄関に立てるのが門松。
しめ飾りは家の中に歳神様がいるという“聖域”を表し、外から悪いものが入るのを防ぐ“結界”の役割も果たします。
おせち料理は歳神様へのお供えでした。
鏡餅
もう一つ、お正月に欠かせないアイテムが鏡餅(かがみもち)。
三種の神器のひとつ、鏡に似せて丸く作られたお餅は、歳神様が宿る依代(よりしろ)になります。歳神様は鏡餅に魂を宿します。それが歳魂(としだま)と言われ、この一年を元気に過ごす力の源となります。
歳魂が宿ったお餅を、家長が家族に配ります。
これが、「お年玉」の起源です。
歳神様からお歳魂をいただき、一年を過ごす元気をもらい、歳を得ます。
こうして、お正月にはみんな一斉に歳をとります。
数え年
数え年の特徴は、生まれた時点で1歳ということです。
極端な例で言うと、12月31日に生まれたら1歳で、次の日の1月1日で2歳。
生後2日でもう2歳ということです。
「お腹の中で過ごした十月十日(とつきとおか)をカウントするから」という説もあります。
『数え年』ですから、年を数えます。
生まれて一年目、二年目、三年目、、
学校に例えるとわかりやすいかも。
入学したら一年生、四月になったら二年生。
これと同じで、生まれたら1歳、
お正月を迎えたら2歳、というふうに。
カレンダーがなかった時代は、「田植えの頃に生まれたなあ」くらいの感じで、「誕生日」にはそんなに意味がなかったと思います。それよりも、家族そろって新しい年を迎えることの方が、よっぽど幸せだったのでしょう。
誕生してきた命が「0(無)」はありえない。
そんな概念の違いもあったのではないでしょうか。
(イラスト きむら)
ちなみに「数え年」は、韓国や中国でも使われています。
中国では旧正月に年齢を重ねます。
享年と行年
位牌を見ると、故人の年齢が書かれています。享年(きょうねん)と行年(ぎょうねん)がありますが、違いはわかりますか?
言葉の意味から言えば、享年は「何年生きたか」。
行年は「何歳まで生きたか」。
結局はどちらも「亡くなった年齢」です。
享年は、天から享(う)けた年数でなので、数え年で表し、「享年◯◯」と「歳」を付けないのが正式とされます。
しかし、享年も行年も明確な区別はなく、長寿がめでたいとされた慣習に従って数え年が多く見られますが、最近は満年齢で書くお寺さんも増えました。宗派による違いはありませんが、真宗大谷派では「寿算(じゅさん)」を使うことがあります。
人はいつ歳をとるのか
現在のように誕生日からの年齢を数える満年齢を使い出したのは、戦後です。1950(昭和25)年に施行された『年齢のとなえ方に関する法律』により、数え年から満年齢に変更するためにこの法律が制定されました。こうする事で「若返り」をはかり、戦後の混沌とした日本人の気持ちを明るくさせる効果を期待したそうです。
ところで、年齢が加算されるタイミングも法律で明確に決まっているのですが、何時かご存知ですか?
① 誕生日前日の午後12時(24時)
② 誕生日当日の午前0時
③ 誕生日当日の生まれた時間
④ 誕生日当日の午後12時(24時)
↓
↓
↓
正解は、
① 誕生日前日の午後12時(24時)です。
①と②は、厳密に言えば同じ時刻ですが、日にちが違います。
なぜ、①なのか。
それは、2月29日生まれの人のためです。
4年に1度しか誕生日が来ない人のために、2月28日午後12時に年齢を加算できるようにと法律で定められました。こうすれば、2月29日はなくても3月1日には歳を重ねることができるわけです。
この法律によって、4月1日生まれの人は3月31日午後12時に年齢が加算されるため、今度は学校教育法「満6歳に達した翌日以後で最初に迎える4月1日に入学する」に従い、「早生まれ」扱いになります。
小学校に入学する年齢を数え年で考えると、
4/2~12/31は数え年8歳、1/1~4/1は数え年7歳で一年生になります。
1年早く入学するから、「早生まれ」なんですね。
ちなみに、日本人の誕生日で一番少ないのは2月29日生まれですが、二番目に少ないのは1月1日生まれだそうです。次いで1月2日、12月31日と年末年始は少なく、五番目が4月1日生まれ。
逆に、同じ誕生日の人が多いランキングの1位は12月22日、2位は4月2日生まれ。昭和40年頃までは1〜3月の冬生まれが多く、ここ最近は7月の出産が一番多いそうです。
命の別名
それでは最後に、
次の長寿のお祝いが何歳の祝いか知っていますか?
還暦(かんれき)
古希(こき)
喜寿(きじゅ)
傘寿(さんじゅ)
米寿(べいじゅ)
卒寿(そつじゅ)
白寿(はくじゅ)
↓
↓
↓
答えは、
還暦…満60歳
古希…70歳(以下、数え年)
喜寿…77歳
傘寿…80歳
米寿…88歳
卒寿…90歳
白寿…99歳
このあとも、百寿(100歳)、茶寿(108歳)、皇寿(111歳)、大還暦(120歳)と続きます。
「百」から「一」をとると「白」になる。
すなわち「白」寿は99歳のお祝いです。
ほかの言葉の由来も、わかれば納得すると思います。
興味があれば調べてみてください。