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初秋リトリート〜融解乖離〜

ラグビーボール…よりも少し小さいくらいの楕円形の窓から外を見る。ピンと伸びた鉄の羽。その下にもこもことした鱗雲が幾つも点在している。さらにその下は山々がどこまでも広がっている。パノラマの景色。そう、ここは地上から遥か上空の飛行機の中である。

これを書いてる今現在、どういうわけか私は北海道に向かっている。どういうわけか。このフライトを予約したのも、成田空港に向かっていたのも勿論自分なのだが、宙に浮いてることもあって、なんだか地に足が着いていない状態で果たしてこれが現実なのかと戸惑っている。

今回の北海道旅へ行く目的は勿論、CYNHN(スウィーニー)のライブを見ることにあり、土曜から2泊3日を予定していたんだけど、2日前の金曜の夜にMY FIRST STORY(マイファス  )がZepp札幌でライブやることを知り、なんかの勢いで購入してしまい、チケット買ったらフライトを1日前に変更だ、と、あれよあれよと急遽金曜の朝から札幌へと旅立つことになってしまった。あまりの急展開に、心が追いついていないような。

なわけで計4日間の北海道旅行。3泊もする必要あるのか?そもそも、地元でのらりくらり過ごしてた方が楽な休日じゃないのか?と何度も自問自答する。いや、旅行なんてものは基本移動中心で面倒くさいものだ。いかにその移動中の暇を苦に感じさせることなく過ごすかの戦いなんだ。それが当たり前。このままだと、どこにも旅行なんていけなくなる気がする。やはり生きている内に色んな景色を見てみたい。北海道くらいで日和っていたら、遠いアメリカなんてもってのほかだ。ここいらで飛行機乗っておかないと。旅慣れしておかないと。

ライブ遠征はあくまできっかけにすぎなかった。本質的なことを言ってしまえば、シンプルに『現実逃避したかった』だけである。9月には週一のペースで楽曲をYouTubeにアップしたが、毎日仕事から帰って来て3〜4時間アレやコレやと作業した割にはそんなに変わっていないなと。頑張りに見合ったレベルアップできてないなと。それだとこの先続けていても成長する見込みはない。もう無駄な努力は出来ない年齢だ。ただの道楽やないねんから、着実にステップアップできる道を選ばないと。特に制作に行き詰まってるという訳ではないが、どうにもランニングマシーンのような、運動はしている、歩き走りでカロリーは消費してるのにその場にとどまっている状態。ならば一旦環境を変えて、外に飛び出して、自分が今本当にやるべきことを見つめ直せると思った。自分探しの旅、ではないな。自分見つめ直しの旅、といったところか。

いや、もっと言ってしまえば、飛行機に乗って旅をするという実質的なことをするトリガーになったファクターは、【トークイーンズ】である。ゲストSnow Manの渡辺翔太が、【旅館、飛行機、新幹線の予約が出来ないために旅行が出来ない】【スマホの機種変更ができない】【家電製品の配線ができない】等の話をしていて、女性陣から大批判をされていた。これを受けて、イチ成人男性として基本的な行動は出来ていると安堵すると同時に、一つの疑問が湧き上がる。「(あれ?そういえばもう何年も飛行機乗ってないな)」と。過去に自分で全部予約して旅はしたことがあるものの、最後に飛行機に乗ったのは8年も前なので、今やれと言われたら順を追って説明出来るのか怪しい状態、ほぼ初心者に近い感覚だったので、飛行機旅の手順を再確認する意味で、大人としての基準を取り戻すためにも。なので日頃薄ら頭の中には「(今年中には飛行機に乗る)」というイメージが残っていたのだ。

(中略)

そして3日後。実にのべ4日間の北海道旅を終え成田空港へ向かうフライト中。果たして自分を見つめ直すことは出来たのかは分からないが、多少選択を誤ることはあったものの、とりあえずは存分に心身を休めることはできたし、9年ぶりの北海道旅にしては満足いったといえよう。音楽面でも制作から離れることで、次に自分がやるべき事も見えてきた。脳内のゴチャゴチャしていたものが解けていった感覚。余計な贅肉が削ぎ落とされていったかのような(割と歩いていたがそれ以上に飲み食いしたのでリアル贅肉は増えたが)。北海道のエキスを吸い、新たに生まれ変わったかのよう茨城での明日からの作品作り、非常に楽しみになってきたよ。

それはそれとして、ここで非常にとある疑問が浮かんできた。【飛行機、こんな怖かったっけ?】と。揺れすぎやろ、と。飛びだってから、こんな旋回するもんか、と。ちょっと機体が揺れようものから、身の危険、いや死の危険を反射的に感じ全身に電撃が走る。往路と陸路の離陸・離陸の際、後方席の赤ちゃんが大泣きしていたけど、そりゃ泣くわな、と。ただでさえ轟音が響いている上に、雲よりも遥か高いところを飛んでるんだもの。小生は『大人だから』、数々の【死ぬほどの体験】をしているから、辛うじてこの非日常のスリリングな瞬間にポーカーフェイスを決め込むことができる。きっと、この機内にひとりだったら「(うぉー!怖ぇー!!高ぇー!!!しぬしぬしぬ、マジで死ぬ!!!」と、リアクション芸人ばりに声をあげていたろうな。

そんなこんな必死たる想い(笑)で向かった北海道旅、非常に有意義なものになったのは間違いない。やはり旅は良いな。まだ日本の津々浦々、見てない景色ばかりだ。死ぬまでに沢山見られるように、日々懸命にやっていかないと。そういうモチベーションで生きていくのも、悪くないだろう。まだまだこんなところで止まっているわけにはいかない。今をピークに折り返してたまるか。広い世界を見るのだ。

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