本気を出すと疲れるが、疲れずに生きのびるくらいなら本気を出し切って燃え尽きたい。
つかれた
本気で、疲れた
しかし、いい疲れだった
10月28日、私達の「分身ロボットカフェ」は、本年度の応募総数2,431点、ACC日本最大の広告賞「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS 2020(ACC賞)」、クリエイティブ部門でグランプリ(最高賞)を頂いた。
「寝たきりの先へ行く」
私が寝たきりのALSの患者さん達と出会って7年、寝たきりや外出困難の多くの仲間らと共に目指していた夢のひとつだった「分身ロボットカフェ」のコンセプトだ。
寝たきりの仲間らと共に発信し続けてきたその未来を現実にするために我々はOriHimeという分身ロボットや、ALSやどんな人でも操作できるOriHime-eyeといった技術も開発し、様々な事例作り、社会実装を行ってきた。
「寝たきり障害者として、明日生きるために何もするなと言われた生かされた20年だった。明日死んでもいいから今日僕は自分の人生を生きたい」と今は亡き親友、番田は言った。
2016年に私と2人で構想していた「分身ロボットカフェ」プロジェクトは、多くの仲間らや協賛企業が集まってくれて、カフェ期間中に国内外で500を超えるメディアに注目され、多くの政治家や芸能人も来店し、「なんだ寝たきりでも働けるじゃないか」と、それまで当事者すら思っていた常識を覆す事に成功したプロジェクトとなった。
時代を切り替えるために仕掛けた分身ロボットカフェが、ACC日本最大の広告賞「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS 2020(ACC賞)」の最終選考に残った。
最終審査は6分のプレゼンである。
この一週間、この6分の大会の為に全力で準備する事にした。
人生は”全力”をぶつける事の連続だ
「これは本気を出さないとな」と思うとき、今の私は過去の私と同じような”全力”を出せるだろうか?といつも不安になる。
分身ロボットカフェを実施した時ももちろん、今回のようなプレゼンでいうなら、高校生の時のJSEC、アメリカでのISEF、大学時代のビジコンの数々、1万人の前での夢AWARD、ICCグランプリなどでプレゼンをしてきた時などだ。
限られた時間で相手に想いを「伝える」という事は本当に難しい。
たまに「吉藤はプレゼンやスピーチが上手い」などと言われるが、上手いのではない。準備しているのだ。プレゼンは準備が9割なのだ。
頭を掻きながら、早朝を散歩しながら、身体を動かしたりして構成を考え、自分のスピーチを録音し何度も繰り返し聞きながら作り直す。正解もないし、どこまでやればいいという答えはない。
「伝える」という事は研究活動や商品開発に比べて簡単に見えてしまうが、全然簡単ではない。それがプロダクトではなく、ビジョンや未来などの抽象的なものであれば尚更だ。どこまで準備するかではなく、どれだけ準備の余地を見つけられるかで終わりはないし正解もない。
本気になれるか、諦めないかにおいて敵は自分だけなのだ。
勘違いされがちだが、こうしたプレゼンは持ち時間が短ければ短いほど難しく、準備が必要だ。本当は2、3ヵ月かけて念入りに作戦を立てて用意する。
ISEFは半年かけて準備し、夢AWARDは3ヵ月かけた。プレゼンターが私ではないが1分のプレゼンで5000万円の支援金を獲得したGoogleインパクトチャレンジでも、WheeLog!代表の織田さんらと共に相当な準備をした。
なので、今回1週間前にプレゼンが必要と言われた時、これは大変な事になったぞと思った。「これは本当にそれに値するだけの賞なんですか?」と議論が出た。結果は関係者の満場一致でGoだった。
謝りながら多くの予定をリスケした。
スピーチ構成を考え、スライド構成を考え、削れるところを1文字レベルで調整し、何度も読み返す。私はスピーチのプロではないのでとにかく練習が必要だ。
そんな全力で迎えた前日の夜、思わぬ想定外のトラブルが発生し関係者と少し揉めた。どちらが悪いという話ではない。今回の新型コロナとか様々な要因が絡んで起こったトラブルだ。
先方にも譲れないものがある。ここまでこちらも本気で考えて全てをかけて準備してきている。それを言っても平行線と、分かっていても言わずには居られない。
だいぶ交渉しても譲ってもらえず、その理不尽さに感情的になりそうになり、どこか心が折れそうになる。明日の集合は8時半。時間は既に22時になっていた。
それでも、なんとかそのトラブルを乗り越えてプレゼンする為、仲間は夜中に必要機材を買いに行き、知り合いに機材を持っていないか確認しに行き、私も最悪の事を想定し、徹夜し7時間で集中し機器を1から手作業で開発する事になった。もともと頭痛のあった日でもあったので、プログラムのデバッグしながら意識飛びかけた。(チクショウ)
結果として、その7時間で作った”プランD”は完成して持ち込んだが使わずに済んだ事で、徹夜に意味があったかどうかは解らない。
それでも、デモも成功、OriHimeで遠隔からのマサも素晴らしいプレゼンをしてくれて、プレゼン時間カウントダウン0秒ぴったりに終了し、終わった瞬間心の中で「よしっ!」とガッツポーズできる6分間になった。後悔はない。
今回、クリエイティブ部門でグランプリ(最高賞)を受賞したと言ったが、実はプラスがある。
別の部門、デザイン部門でもグランプリ、PR部でもブロンズ(4位に相当)を頂く事ができた(!)
本年度の応募総数2,431点の中から、2冠のグランプリ、3つの部門で賞を受賞したのはACC賞の歴史的にもあまりに貴重な事ですよとお褒め頂いた。
(素直に嬉しい。よっし!!)
賞の栄誉もそうだが、プレゼンに挑んだマサ、裏方のスタッフ、ADKのメンバーを始め多くの仲間らと一緒に得る事ができた賞だったと実感できて喜べる事が嬉しい。
本気にならずとも生きていけるよう先人らが作り上げてくれた世の中かもしれないし、基本的に体調を崩しやすい私が全力で頑張る事は多くの人に心配や迷惑をかける事になる事も多い。
理不尽な事で他の人がしなくていい苦労を背負わなくてはならず、誰にもその苦労は解ってもらえず、その苦労が果たして成果を上げるのか日の目を見るのかもわからず、悲しみを怒りをぶつける場所もない。この苦労が実ったとして1%も可能性をあげる事がないかもしれない。
それでも、私は本気で生きて行きたいと思う。
人生、本気で何かに挑める回数はきっとそんなに多くない。
「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS 2020(ACC賞)」
●デザイン部門 : 総務大臣賞 グランプリ
●クリエイティブ・イノベーション部門 : 総務大臣賞 グランプリ
●ブランデッド・コミュニケーション部門(PR) : ブロンズ
みんなお疲れ様!
私は疲れた!これからももう少し疲れに行こう。
2020.10.30
吉藤オリィ
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