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【マダミス】蒸気の街には薔薇が咲く感想【ネタバレ】


※本記事にはオンラインマーダーミステリー「蒸気の街には薔薇が咲く」のネタバレがあります。作品の特性上、一度しか体験できないため現行・未通過の方は閲覧をご遠慮ください。

【作品紹介】
シナリオ:蒸気の街には薔薇が咲く
制作:ミヴの飛ばない飛行船(https://niseika.booth.pm/) 様

PC5 機械技師ノッキオ

メリークリスマス!
遅いですね、とっくに終わってます。今はもうクリスマスなど忘れ去った街がお正月モード一色、あれだけきらびやかに街を彩っていたイルミネーションの豆電球の欠片すら見当たりません。
さて、そんなクリスマス。みなさまどうお過ごしだったでしょうか。
私ですか? 私はマダミス一色でした。
色気は前世に置いてきた。
25日、13時からの昼の部と20時からの夜の部の二本立てで、一日中マダミスをしていました。ハッピーメリークリスマス!!!

さて前置きはこのくらいにしておいて、「蒸気の街には薔薇が咲く」。
こちらは「Twitterで行われた #2022年上半期マダミス十選で本作が13位にランクイン」した作品(BOOTHより)。販売ページに行けば分かりますが、スチームパンク×マダミスという非常に相性のいい、素敵なイラスト達がまず出迎えてくれます。ストーリー概要だけでも心を掻き立てられる人は多いのではないでしょうか。かくいう私もその一人。一目惚れでした(^q^)
そして実際にプレイしてみて納得も納得!むしろもっと上位でいいのでは?! と思うレベルで面白い作品でしたね。

セッション概要

12/25 20:00~
PL1_館の主人サム:ゆう
PL2_館の少女レイラ:うしお
PL3_館の女中ジル:まか
PL4_館の執事トムソン:かつお
PL5_機械技師ノッキオ:セト
PL_6死体埋めベア:おせんべい
※敬称略。

配信

セッションは生配信しました。サムネとてもお気に入り。

事前準備

とはいっても、今回はGMレス。
あらかじめキャラ希望を取ってもらい、それによってキャラ決め、HO配布して事前読み込みという流れ。
個人的に、HO事前配布なしの場合はダイスでもアミダでも、キャラの決め方は何でもいいのですが、事前読み込みありの場合は希望制が好きです。前もって気持ちを入れ込むキャラは、やはり自分が選んだキャラがいい。
ちなみに私の希望は、第一ノッキオ、第二レイラ、第三以降は特になしという感じでした。ノッキオは「機械技師」という肩書と見た目に惚れた(^p^)
そして晴れて、第一希望のノッキオをやらせてもらえることになったわけです。
が……。
「今回の殺人事件の犯人はあなたです」
はいキターーーーーー!!!赤字HO!!!!!!!!!!!!
どんだけ犯人役引くん?!?!今年やったマダミスの犯人役率えげつない気がするな?!
またかよ~~~とリアルに椅子で仰け反りましたね。え、どうして?
希望したキャラがだいたい犯人なのでもうそういう星の元に生まれたのかもしれません。もしくは中身が犯人的思考
いいだろう、望むところだ。
こうなったら逃げ切ってやるよ。機械技師ノッキオ、殺害人形と暴走絡繰を止めて蒼のユニオンで上り詰めてやる!
時系列を整理し、アリバイのない時間帯の誰かの目撃証言の有無チェック、問われた時の嘘などを壁打ちしていくのですが……。
ちょっと待て? 殺害人形ってもしかして――僕か?
最終的に、HO事前読み込みを終えた私の思考はそこに行きついていました。というのも、

  • 殺害時の状況描写があまりに少ない。ナイフを握ったことも刺したことも描写がなく、「上体を起こす」と「ガスはその場で息絶えていた」

  • 殺害直前に謎の「調光」。「視界が狭くなる」

  • 殺したはずなのに手にすら血は付いていない

  • 殺害人形の生みの親である父は、自分にさえ殺害人形の顔を見せていない=自分は息子であるのに殺害人形の顔を知らない

  • 殺害人形はナイフで一突き、対象に抵抗されることなく確実に殺す

ね?
これらを組み合わせると、「機械技師ノッキオ自身が殺害人形である」という仮説も成り立ってしまうわけです。
そうなると、ノッキオのメイン目的である「殺害人形を無力化する(60pt)=自分で自分を止める」という、大変エモエモのエモなことになります。
は~~~最高か。
それならそれで最高にエモいし目的達成になるしええわ(^p^)
わくわくしながらセッション当日を待ちました。
ま、全然そんなことなかったんですが(笑)

いざ開始

場の主導権を握る

犯人役は、基本的にはどう逃げ切るかが一番の目的になるかと思います。
今回は、逃げ切ることより前述の「殺害人形を無力化する」ことが一番の目的だったので、議論の展開で逃げられないとなれば、それは否定せずに誰か他に人形を止めることができる人物を探ろうと思っていました。
が、しばらく議論していても、どうも他に絡繰を止めることができそうな人物はいない雰囲気……。
サムがワンチャンそうかな、と思ったのですが、ジルが殺害人形であること及びサムがジルに入れ込んでいることは火を見るより明らかだったので、仮にサムに絡繰を止めるスキルがあったとしても、ジルを止めることは無理だろうと判断。ここから、何としても逃げ切るしかない立ち回りになります。
そうなると、犯人としてやれるのは議論の場の主導権を握ること
しかも、それとなく。
今回は、あらかじめ他のキャラから暴走絡繰か殺害人形の話が出るまでは、一切ノッキオからそれらに関する話は口にしないようにしていました。誰かが口にしたらそれに乗っかって、「実は僕がこの館に来たのは偶然じゃない。暴走絡繰(又は殺害人形)を止めるためだ」と告白する。そうすることで自分の目的は殺害人形や暴走絡繰を突き止め、最終的に止める(=殺す)ことである、と印象付けるわけです。
これ、結構有効なんですよね。
自分からではなく、場に出てしまったから仕方ない。さも隠していたが……風に自分の目的を語る。そうすると、たいていは「そうだったのか」と納得させることができる。特に今回の場合、ノッキオの絡繰を止める行動というのは、その絡繰本体にとっては自分が殺されることになるわけで、ガス殺害の犯人特定より、自分が絡繰ではないと証明することにリソースを割く羽目になる、というわけです。
いやらしいですね。仕方ないだろ?! 逃げ切るためだ!
実際、そこから割と議論は「殺害人形と暴走絡繰は誰か」を特定することに集中していきました。
機械技師であるノッキオが絡繰の扱いに長けているのはカードから証明されているため、話題が絡繰のことになれば、自ずと主導権を握れるってわけです。大げさに「暴走状態の絡繰は誰なんだ……?」と悩むふりをすることで、割と会議でもほっといてもらえるし自分のカードも守れる。
そう、正直、3枚目に配置したカード(サファイア。自分が蒼のユニオン側だという証拠)が誰かに取られると一気に動機面でクロになるので、これだけは誰にも渡したくなかった。なので、そこまでに自分が今回の事件には無関係だと思わせる必要があったわけですね。
ここは上手く立ち回れたと思います!

暴走絡繰の正体

前述のとおり、ジルが殺害人形なのは明白。重要なジルの証明書(XE-01)を自分で引けたのは今回大きかったです。いつもゴミカードばかり引くのに珍しく運が良かった!
そして、もう一体の絡繰がトムソンなのも分かっていた。
のですが……。
暴走状態の絡繰がどちらなのかは、議論の最後まで分かりませんでした。
というのも、ノッキオ自身がちょっと殺害人形と暴走絡繰の情報を混同してしまっていた部分があり、ジルの状態は暴走などではなく正しいプログラムなのだと思い出すまで時間がかかってしまったのです。
これは偏に私の脳内がうまく整理できてないせいでしたね。反省。
そう、ジルは殺害人形。
そして殺害人形は、殺害対象から「完璧に愛され」ることで完璧に対象を暗殺する絡繰……。
畢竟、サムがジルを愛していたことも、ジルがサムに愛されるように行動していたことも全て、殺害人形ジルの正しいプログラムだったわけです。
暴走などしていない。
となると、暴走しているのは確実にトムソンということになる。
しかし、トムソンが暴走しているとして、どうして「ラブ・ギア」などという愛に関わる疑似心部を入手しようとしていたのか……。
ここは、投票の場面になってハッとしました。
「トムソンは暴走状態である。サムを慕う気持ちは本物だが、Aタイプの絡繰ではそれが理解できないし、なんなら疑似心部の命令違反である。本来は工場に帰らなければならないが、そうするとサムと離れることになる。それはイヤだ。そのため、愛に関する新しい疑似心部と自分の古びたそれを取り換えようとしていたのではないか」
ピタリと考えがハマった瞬間でした。
ああトムソン……きみは本来ないはずの感情を持った絡繰だったんだね……。
この時、ノッキオはトムソンが暴走状態であることを告発すべきかどうかものすごく悩みました。機械技師としては書くべきなのだろう。しかしトムソンの気持ちを慮ると、それをすることが道義的に正しいことなのか――。
さんざん悩んだ結果、ノッキオは告発します。
彼の、機械技師として、蒼のユニオンの人間としての矜持が、暴走状態の絡繰を見逃すことができなかったから。
この先、トムソンが別の形で暴走しないとも限らない。
もし見逃して、その時に後悔しては遅いのだ。
――これが、エンディングにてモロぶっ刺さることになるとは、この時の私は予想だにしませんでした。

エンディング

ノッキオの選択 その1

エンディングを語る前に、最初にいっておきましょう。
今回、ノッキオは満点の120点を獲得しました。
パチパチパチ。
あれ、浮かない顔してるって?
……そうなんです。
全ての目的を達成し、満点を取ったにも関わらず、ノッキオのエンディングは決して満足のいくものではなかったのです。
ノッキオの目的と配点は以下のとおり。

メイン目標
殺害人形を無力化する。(60Pt)
サブ目標
犯人として最多票を獲得しない。(40Pt)
殺害人形の説明書を入手する。(20Pt)

他のキャラの満点が100点なので、犯人役にはちょっとおまけしてもらっている配点なのはポイントが高いですね。けっこうキツいし(笑)
殺害人形を止め、犯人と拘束されず、殺害人形の説明書も入手済み。
正直、逃げ切ったことと殺害人形と暴走絡繰を特定したことで、もうあとはエンディングを見るだけだと思っていました。
ところがまさか、エンディングパートでの選択さえ、彼のエンディングに大きく影響するだなんて……。

さて、こちらの作品はエンディング分岐がえげつないことでも有名ですね。
40て!
ノードをマックス使った自作アドベンチャーゲームのエンディング分岐でもトゥルーエンド含めて37通りだったので、40通りのエンディングがどれほどのノードを用意することになるのか、想像しただけて眩暈がしました。本当にすごい。
混乱の中、投票と告発を終えエンディングを迎えた我々6人。
いざそのエンディング用のURLに飛ぶと……。
SUGEEEEEEE!!!!
もう6者6様、拍手喝采でエンディングを迎えます。文字通りエンディングに興奮し画面を「迎え」たわけですw
しかし……。
最初のチェック画面を見た瞬間、察しました。
「そういうことか……」
またしても仰け反ります。思わず天井を仰いだわ。
そう、HOにも目的にも一切書かれていなかった「あるモノ」について、ノッキオが所持しているか否か問われていたのです。
その「あるモノ」とは――そう、「疑似心部」。
トムソンが入手していた、「ラブ・ギア」。
それを見た瞬間、悟りました。
そうか、機械技師としてできることは、殺害人形を止めるだけではなかったんだな。止めるだけじゃなく、ジルの疑似心部をこの「ラブ・ギア」と入れ替えることで、サムとジルを両想いにしてあげることができたのか――。
これを見るまで、まったく気づきませんでした。
とはいえ、ジルが最多票を集めているため、今回のケースではどちらにしろサムとジルが結ばれることはありませんでしたが。
ただ、殺害の機能を止めるだけではなく疑似心部を入れ替えることができる、という点にまで気づけなかったのは悔しいの一言に尽きます。

ノッキオの選択 その2

そしてもう一つ。
今回、ジルを止めるための説明書は所持しているが、代替の疑似心部は持っていないノッキオ。
そしてエンディングを進めていき、自分のスキル発動のターンになるわけですが、ここでもある選択を迫られます。
それは、「ノッキオは『説明書』を所持しています 使用しますか?」
わざわざ、スキル発動のタイミングで改めてこれを使うかどうかチェックを入れる=選ばせる仕様になっているわけです。ちなみに他のキャラにはこのような選択はありません。
この時、すこし立ち止まって考えれば……。
この時のノッキオはもちろん、説明書を使いました。
鮮やかに発動するスキル「構造破壊(オーバーホール)」(かっこいい!)
「目にも止まらぬ速さでジルの殺害機構を分解」します。
分かりますか?
そう、説明書があるため、ただ分解するのではなく殺害機構のみを分解することができたわけです。
ここで、ノッキオのスキルを見てみましょう。

構造破壊(オーバーホール)
対象が絡繰だった場合、ネジを適当に抜く。(行動順:8)
説明書があれば何か選んで付け外しすることも出来るだろう。

もう分かりますよね。
そう、説明書がなければ絡繰丸ごと止めるしかできないが、説明書がある場合、問題のある部分だけ取り外すことができる。
つまり、説明書を所持しているが疑似心部は所持していない場合、説明書を使って殺害機構を取り除いてしまうだけだと、サムを殺害するという目的は失うものの(訂正。正しくは「サムを殺害するという目的は持ったまま、実際に殺人を行う機能を失う」です。いずれにせよ)ジル本体は解体されずまだ動けてしまうわけです。
あえなくジルは逃走。
ノッキオはジルを追跡しなければならなくなりました。
この後、スティメラに潜伏するノッキオは、いつまでもジルの影を追い続けるのでしょう。サムの元に戻ってくると信じて。
「もう失敗は許されない」
これがノッキオ個別エンディングの最後の一行です。満点なのに!逃げ切ったのに!殺害人形を止めて暴走絡繰を告発したのに!!!
か、過酷~~~;;
そしてここで、気づくわけですよ……。
もしかしてスキル発動の選択で、説明書を使わずジルごと解体していたら良かったのでは?
試しに、エンディングURLにセッションの時と同じようにチェックを入れて、最後のスキル発動時に説明書を使わない選択をしてみます。

オーマイガッ!

案の定、エンディングに表示される「ノッキオ成功END」の文字。
あそこで説明書を使わずジルごと破壊していた場合、「蒼の支配」という、サムを絡繰で支配し、スティメラ自体を蒼のユニオンが支配しようとするというエンディングになりました。
しかもメインエンド(この場合E)で、ノッキオはサムをジルから守る行動も見せてくれるし、なんとも美味しい。
く、くやじいいいいいいいいいいいいい!!!!!
説明書……持ってるから使えばいいってわけじゃないんだよ!!!
これは本当に悔しくて悔しくて、記憶消してもう一度ノッキオになってやり直したいレベルです。
機械技師になりきれなかった……。機械技師の立場で行動をちゃんと選択していれば「説明書はここでは使わない」選択ができていたはず。
持っているものをどう使うかだけでなく、そもそも使うべきか使わないべきかも考えること。その重大さを噛みしめた瞬間です。

ノッキオの選択 その3(暴走絡繰について)

さてさて、そんな選択に選択を迫られ続けるノッキオですが、個人的に一番響いたのは実は対トムソンへの行動だったりします。
今回のジルはサム絶対殺すマンのジルだったので、ネジ抜こうが解体しようが機械技師として迷いはありませんでした。
一方で、暴走絡繰であるトムソンについては、正直どうするか悩み抜いたところでした。
前述のとおり、告発すべきか否か本当に迷いました。
あの時点でトムソンが暴走絡繰であると分かるのはノッキオだけ。告発できるのもノッキオだけ。
けれど、確かに暴走状態にあるとはいえ、トムソンは純粋にただサムを慕っている。そのために自分を改造しようとさえしている。
そんな彼を、暴走状態だと暴いて何になるのか。
とはいえ暴走状態である以上、今後なにか問題を起こさないとは言い切れない。
機械技師として、これを見逃すことはできない――。
先にも書きましたが、トムソンを告発したのは、機械技師としての矜持でした。
そして、そのことを間違っていたとも思いません。
しかし、トムソンのエンディング。
それは、トムソンとノッキオの次のような会話で終わります。

「……すまないね」
「お世話になりました」

ここね、一番ぐっときましたね。
正直泣きそうになりました。
このトムソンの「お世話になりました」は、ノッキオと、何よりこれまで使えたサムへの言葉だったんだと思います。
しかも別にノッキオ側から言い出したのではなく、トムソンからノッキオに請う形で分解を望んだのがまたつらい。
告発された以上、絶対にトムソンはノッキオに分解される(ことを望む)エンディングになるため、本当にこの選択はつらかった。
後悔もないし、やはり間違っているとも思いませんが、ただただつらい。
このエンディングのタイトルにニーアみを感じたのは、きっと私だけではないはず。

総括

総じて、本当に面白い作品でした。
そしてこれは自分がやったからというのも大きいのでしょうが、このノッキオというキャラクターがまた本当に面白かったです。
前述のとおり、犯人なのに一人だけやたら選択肢が多い。
満点を取っても自分にとって良いエンディングにはならないし、最後の選択まで頭を使わされる。
他のエンディングーー例えばノッキオ大成功ENDでは、サムの傍らで幸せそうに眠りこけるジル、そして蒼のユニオンに正式に加入しにきたサムと協力して、蒼のユニオンの最高幹部にまで上り詰めるというものもあるのですが、そこに辿り着くには一体どうしたらよかったのか、今でも皆目見当がつきません。
本当に絡繰のように複雑な男ですね、ノッキオは。

最 高。

も~~~大好きこういうキャラ。
自分の力不足でノッキオを大成功に導いてやれなかったのが本当に悔しい(笑)
たくさんのキャラをやらせてらもいましたが、こんな気持ちになったのは初めてです。
もしかしたら、別の卓で、誰かが彼を大成功に導いてくれるかもしれないし、他の方の演じるノッキオをたくさん見たいので、これはGMでも積極的に回りたい作品だなと思いました。
最後になりましたが、ほぼいつメンの、ロールプレイつよつよメンバーには感謝しかないです。今回は特にトムソン。かつおさん演じるトムソンでなければ、あのラストはこんなに響かなかったかもしれません。
GMレスでも十分遊べますし、ひとりでも多くの方に遊んでいただきたい一作です。

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