ある母子への歌
秋になってきましたね。
この季節になるとオルは個人的にある事を思い出します。
僕がシンガーソングライターとしてもまだバリバリ活動をしていた頃に、仙台市の某温泉街にあるホテルのラウンジで週に3〜4回、弾き語りコンサートの仕事をしていた事がありました。
設営から音響から撤収までひとりでやる、MCなどもおらず、ひとりで喋って始めるなど、かなり過酷な現場だったと回想します。
中でも、リクエストに応えながらライブをするというスリリングな内容も盛り込まれていました!
今だったら、もし歌えたとしてもやりたくないです。(笑)
そんなコンサートをやっていたある日、聴く人も人も少なかった日に目の前に年配のお母さんとその息子さん親子が座りました。
お酒も召し上がっていい気分になっているようで、ニコニコ聴いてくれていました。
「リクエストにも応えているので、聴きたい曲がありましたら教えてくださいね」
と話しかけると、息子さんが陽気に話し出す。
「いやぁ〜実は僕マザコンなんですよ!」
…
…
そうだろうね!!!(笑)なかなか二人で温泉旅行なんていきませんがな。
さらに続きます。
「母の誕生日なので、母のことを歌った曲を一曲お願いします!そんなに有名じゃなくてもいいので!!」
ほう。。
当時のオルは徐々に発声障害が酷くなっていってる時期だったので、あまりレンジが広くなくキーも高くない曲を頭の中で思い浮かべた。
あまり間を開けるわけにもいかないので焦ってとっさに思いついたのが、
福山雅治さんの「誕生日には真っ白な百合を」
でした。
これ、大正解でしょ。
そう思ったんです。深く考えもせず、母のことを歌ってるし誕生日ってワードも網羅している曲はこれしかない、我ながら天才的だなぁと思って歌い始めたんです。
福山雅治さんの曲が似合うと言われていた声質だったのも手伝って、いい雰囲気になるお二人。
曲もいよいよ佳境で、歌詞を追っていると、驚愕の事実に気がつく。曲の本当のエンディングの部分。
「真っ白な百合を写真に飾ろう」
…え
……え???!!!
そうじゃんこの歌の世界の母ちゃん既に亡くなってるんじゃん!!!!
ラストセンテンスの前の間奏部分で衝撃の事実を知ったオルは、ニコニコしている二人を尻目に冷や汗ダラダラ。
いかん、この文章歌ったら笑顔が凍りつく。。
また咄嗟の判断で、最後の問題の歌詞の前の間奏をエンディングにしてそっと曲を終わらせました…
半分作り笑いみたくなりつつ演奏を終えて恐る恐るおふたりの顔を見ると、相変わらずニコニコ笑って、ありがとうございました😊と。
あの曲が間奏少し挟んで最後の歌詞にいく構成じゃなかったら…と思うと背筋がゾッと寒くなる、そんな一幕でした。