獣脚類と四足歩行:アロサウルスとシュアンハノサウルス
(メイン画像:File:Quadrupedal Xuanhanosaurus.png)
獣脚類は現在、通常前傾姿勢の二足歩行で描かれます。獣脚類の中に、四足歩行の種はいなかったのでしょうか?
人間が手を地面につく場合、前腕にひねりを加えて手のひらを下に向けています(回内)。
獣脚類の前腕が回内できる構造か見てみましょう。
これは恐竜博2023で展示されたメガラプトルのマウント。前腕にひねりが加わり、掌が下を向いています。アウストラロヴェナトルでは回内ができたとする論文が出ていますが、橈骨が真っ直ぐなので考えにくいと思います。
獣脚類は構造上前腕が回内できないと言っていいでしょう。
とりあえず回内できないことはわかりました。
四足歩行していたとされていた恐竜はいたのでしょうか?
バリオニクスやスピノサウルスも一時期四足歩行が示唆されていましたが、面白いのがシュアンハノサウルスです。
シュアンハノサウルスは前肢が65センチ以上あり、84年の記載時に四足歩行したかもしれないと記述されています。
しかし、これには問題がありました。
「腕がデカい」だけで別に回内できる構造とは誰も言ってないのです。(これは前述のバリオニクスやスピノサウルスも同様)
ということで、シュアンハノサウルスらは現在二足歩行姿勢へと修正されています。
今のところ、前腕を回内できる獣脚類の骨は見つかっていませんでした。では、骨以外の証拠ではどうでしょう。たとえば、足跡、とか。
前足をついた足跡化石は存在するのでしょうか?
かつて、獣脚類が四足歩行できた証拠と考えられていたのがオーストラリアの足跡化石です。
しかし、これは複数の恐竜が歩いた跡が奇跡的に重なって四足歩行獣脚類の足跡に見えたことが判明しています。
しかし、獣脚類の前肢をついた足跡が全てが偶然の産物というわけではありません。
これはブリティッシュコロンビア州から報告されています。アロサウルス類が手首を回内することができた証拠だというのです。
手のひらが下に向いている問題は、回内を用いずとも、肩を広げることで解決できる可能性があります。現生のイグアナは、比較的柔軟な前肢を持っているとはいえ、同じ方法でほぼ回内させずに掌を下に向けることができるのです。
獣脚類も掌を下に向けることができることがわかりました。しかし、一時的に手のひらを下に向けることができても、歩くことはできないでしょう。実際、足跡化石も地面を引っ掻いているだけで体重をかけているようには見えません。
獣脚類って四足歩行できるの?という疑問の答えは現状、「4本足では歩けない」というのが結論のようです。