謎の獣脚類ヴェクタエロヴェナトル
(メイン画像は標本IWCMS 2020.407と IWCMS 2019.84、 IWCMS 2020.400、https://tetzoo.com/blog/2020/8/15/introducing-unexpected-isle-of-wight-air-filled-hunter-a-new-english-theropod-dinosaurより)
皆さんはヴェクタエロヴェナトル(Vectaerovenator)をご存知でしょうか?
イギリス産出の恐竜ということもあり、検索すると英語圏ではそこそこヒットするのですが、日本での知名度は……カタカナ表記で検索すると私が関わった記事しかヒットしないレベルのマイナー恐竜です。
今回はそんなヴェクタエロヴェナトルについて語っていきます。
発見
ヴェクタエロヴェナトルの化石は、イギリス・ワイト島の同じ海岸で別々に発見されました。
その化石というのが…
椎骨4個です。
椎骨だけで記載されると後々大変になってくるのでそういう意味では嬉しくない…
まぁ、尾椎一個で記載されたワルゲットスクスよりはマシですが。
骨格図やメイン画像からもよく分かりますが、相当に含気化が進んでいます。Vectaerovenator inopinatus(空気に満ちたワイトの狩人)の名はこの特徴に因んだもの。
グリーンサンド層群は海洋に由来するものであるため、捕食者や災害、事故などによって死骸が川、海に流れたと考えられています。(含気化が極まっている点からしても半水棲説は考えにくそうです)
分類を考える
系統解析では常にメガラプトラに近いティラノサウルス類という結果が得られたようです。
一方でこれは確実なものとはいえず、ヴェクタエロヴェナトルがメガラプトラ+グアリコクレードに属することを支持する特徴としてprezygoepipophyseal laminaの存在や仙椎前の神経管外側のpeduncular fossaの存在が挙げられますが、
これは基盤テタヌラやケラトサウルス類にも見られ、ヴェクタエロヴェナトルが不完全であること、メガラプトラの知られる共有派生形質が少ない(或いはない)こと、メガラプトラ以外のティラノサウルス類やカルカロドントサウルス類にも同じ特徴が見られることから、メガラプトラに分類することはできないとされます。
因みにグアリコをデルタドロメウスの近くに配置するとヴェクタエロヴェナトルメガラプトラ内に含まれます。ただし、扱いは上述の通り。
記載論文では、ヴェクタエロヴェナトルはテタヌラの不確実な位置に配置されています。
見た目を考える
ヴェクタエロヴェナトルの見た目について考えていきましょう。
椎骨4個、しかも上述の通り分類もテタヌラであろうことしか分からないというなんとも絶望的な状況ではありますが…
発見されたのは未成熟の個体で、全長約4メートルと推定されます。
ここから、羽毛が生えていた可能性が考えられます。羽毛のボーダーラインは6〜7メートルであるとされ、成熟してもおそらく5、6メートル程度でしょう。細かい分類は不明ですがメガラプトラかそれよりも基盤的でしょうから、羽毛が生えていたとしたらおそらく原羽毛です。
もちろん、これも憶測の域を出ません。
まとめ
・ワイト島の恐竜
・発見されたのは椎骨4個
・多分テタヌラ