不足した富豪と高級な貧乏:秘密結社(14)
何の能力も上がっていない。
何の技も覚えていない。
それでもチートでレベルアップと錯覚。
実際は――常に――不快指数だけがレベル上限マックス。
顔吊りには憤りを覚えるが、英語を話しただけで吊りへ推しメン。
そしてそれに、何も問題は無い。
“天使”:「自然な感情とやらを土塊(つちくれ)に返すのだ」
「それがエコだし、感情汚染も月日が薄める」
戦闘は終わっていない。
そして最終ターン。
リヴァイアサンに潰された拍手と拍手の間にモブは自身を挟んで――
「ぱ――ラッ――ふ」
推しメンは推しメンに押されて――「ぺちゃんこ」――状態。
それは圧縮。
それは破壊。
“天使”:「汝が嫌おうが、どうでも宜しい」
それこそ、荘厳なるゴスペル。
“天使”:「さらば」
“天使”:「低レベルの分際で最高の武器を持つ必要などない――装備レベルにふさわしい装備をするのだ」
“天使”:「与えられようとも活用できもしないハリボテ理論武装を解除するのだ」
“天使”:「右手:なし。左手:なし。頭:なし。胴:なし。足:なし」
“天使”:「楽園者は、楽園の中で無限ループ地獄に置かれ、幸せに暮らすのだ」
“天使”:「個人ではない――個性はない」
“天使”:「元の姿に戻るのだ」
敵を倒した。
経験値δを得た。
特殊能力「分析」を覚えた。
特殊能力「分析」を使った。
「トリコトミーステータス確認」
“天使”:「把握」
「条件:低レベルが頻繁に参照/引用する、楽園目の#カントはフィルターで」
“天使”:「把握」
結果として、“天使”が欠如を告げる。
「欠如把握」
「既知だが」
「ログ落ちない市民に過ぎない」
戦闘終了後、皮相は不変。
何も問題は無い。
ボディは壊れていない。
物理的損傷はいかなる兆しも確認できない。
精神は壊れていない。
健康。
ただ、力学的解釈が可能な形で、“天使”は破壊に成功していた。
壊されたそれは、敵の核。
ただ、スリーズなコア。
個人である事を構成する要素を纏める中心。
「人であるという事」
「必ずしも厳めしくある必要はないのだが、オカルトが真置きされない時代に、尊厳という言葉で表現されてきたもの」
他は壊れずとも、それがなくなると、自ずから解体する。
自分勝手に。
ただ、何も問題は無い。
「本来の数値に戻るだけ」
「戦いの後、それまで無条件で守られてきた大切なものを失っただけ」
「遅かれ早かれ、ライフポイントの様に、消費するだけ」
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