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詩作まとめ

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詩たち。
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#素面

『鈍色の絨毯を織る』

『鈍色の絨毯を織る』

下じきになってしまった人のため
泣きうたい 鈍色の絨毯を織る
そのこころ 窓に映る今は鋭いイチョウの樹
そのうた かつて母が読み聞かせてくれた絵本

鉛のように冷ややかで ささくれたったこの床に
絨毯を敷き 膝を抱えた

飄々と海風が吹き抜ける
ーー黄緑色の原風景が
頭の中で 巻きあがる

その絨毯を売る

『Sjoop』

『Sjoop』

“お開けください お開けください”
心は広く なお狭く
その語に挟まれ 哭きもがく
振り返り 眼下に御出でになる像に
繰り返し 描かれる紐の譜を
唯一度だけ 歌ってる

「Sjoop 待つわ
動くわ
あなたの為に…」

偽も真も 何もない
有るのは 幾何学するあなた
閉口する僕

『ほころび』

子どもたちの まつりのなかで

いっそう かまびすしく吼えた!

君はいくぶん 優しくも

キチンとナイフを 隠してた!

ときどき 闇夜にまじっては

おまわりさんと 仲直り

きょうはどこで 寝るのかな

あしたは何を 視るのかな

あれからねころび 約9回

みんなとおしゃべり 覚えてからは

君はずいぶん まんまるだ!

僕らのほころび 数えきれない

このまま直さず いきてくよー!

『8号室』

わたしは ウソをつきました

ミナモにむかって コッソリと

いつしかウソが 糸を縫い

わたしは サナギになりました

ところが 膜があつくって

冬をも越せる あたたかさ

✳︎✳︎

そんなサナギは 息絶えた

✳︎

わたしの ちいさなポケットで

きらきら輝く みなさまへ

ーーこの部屋で あげたウブ声

いつまでも 憶えていてください

わたしは 忘れっぽいですが

おもい出すのは 上

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『のっぺらなだれ』

南に帰った わたしを追って

のっぺら雪崩が つららをつり下げ

歳末の街を 覆い尽くすの

あなたの顔が 見たくなって

西へ 戻ってきたのでしょう

怯えてちぢんだ おじぎ草

摘み取り逃げてきたんだよ

北に向かった わたしを抱いた

どっかのだれかが うずらのお家で

最後の景色を 飾りあげるの

あなたの顔が 見たくなくて

東へ 戻ってゆくのでしょう

抱えきれない お土産を

あたた

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