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クリストファー・ノーラン監督作【オッペンハイマー】を見た。

 パチンコでお金が無くなったので、今日で映画感想ブログは終わりかも知れません。(レインボー文字)

 

 原爆と言うシビアな話題。世の中に忖度をする時代へと変わりきってしまった昨今。日本での公開は無いだろうと公開してから半年…公開についての情報が出る事も無く、海外じゃバーベンハイマーだとか言う奇天烈なmemeが流行っている最中、公開を踏み切ろうと行った日本の配給会社様には頭が上がりません。作品を作った監督に先ずは尊敬の意を示すと共に、様々な批判が上がるであろうと言う危惧を感じる世間の波もある中、踏み切って下さった事に感謝を。

 IMAX戦争と言う物に辟易をしており、ギャンブルで水原一平氏の2000分の1程度とは言えど、その程度を2週間で擦り切ってしまい、生活の危機感と負けた自責で危うい精神状態の中で見てきたオッペンハイマー。本当に公開されるんだなぁと言う自分の映画のバイブル…メメントから始まり、インセプション、ダークナイト、インターステラーと言うバイブルを、何作も作ってくれているクリストファー・ノーラン監督に対しての期待だけで見て良いのか?と言う気持ちも正直ありながらも、日本人として見なきゃいけない節もあるんじゃないか?と思い見てきました。

 本当にノーラン監督に対して万歳三唱したくなるぐらいのとんでもねえ映画だなって思いましたね。賞レースを総嘗めしてる理由が分かると言うのが素人ながらにでも分かると言いますか。天才の倫理観をぞんざいに扱って、人は建前と自分の都合だけで生きてる描写を、兎に角ぶつけてくるんですよ。

 クリストファー・ノーラン監督作品を見ていると、哲学に量子力学と言った偶に訳の分からないとんでも理論とかが展開されるのは結構ある事だと思うんですよね。TENETとかいい例で、現象の逆光とかから生み出される意味の分からないとんでも理論。その映画の良さ自体はSFじみた何かしらの理論の美しさもあるけれど、随所に混ざるやり取りのエモーショナルな節を感じるって言うのが、インセプションも含めて良さになるとは思うんですが…今回はそういうエモーショナルを全体的に散りばめている。シーン一つ一つの良さが異常なんですよね。

 今作において色々とやり取りを行う上での倫理観の欠如や様々な理論は議論されるべき節はあるかも知れないけれど、俺は被爆二世、三世と言う立場で発言をする訳では無いから、当事者意識が足りてないとは言えど…オッペンハイマー氏が核爆弾を作った上での倫理は、ドイツから迫害を受けたユダヤ人の血筋があると言う節を考えたら、理解出来ない事では無いと思う。自伝映画でしか無いし、当人の本当の考えなんて当人でしか理解出来ないけれど…今作が賞レースを総嘗めした理由は【当事者では無い人間が攻める道理が無い】此れに尽きるんじゃないかとも思う。審問会の様なシーンを見せられている最中、オッペンハイマー自身が語る言葉は綺麗事ではあったと思うけれど、それを僕達が攻める事の意義は日本人だったら!って事も無いんじゃないかとも思う。

 完全な悪を描かない所に重きを置いているこの作品の凄さはある。滲み出る悪意と倫理観の欠如の嫌悪感。日本が有ると言った矢先に「僕らは理論屋だ」って後に続く言葉の建前。一億総玉砕だとか掲げる日本の脅威も考えれば、強ち間違っていない建前がまた強くこの映画を印象付ける。オッペンハイマー氏自身が、自分の唱えた理論の苦手な実験を叶えたいだけの自慰行為に等しい節も感じながら綴られる言葉には、悪意よりも天才の好奇心だったんだろうとも。これだけ書けば「オッペンハイマーは作ったから悪!」と断罪出来るけれど、原爆を落とすに至ってはシーンの一部であったトルーマン大統領って言う事実もある。本当に何を咎めても膿が滲み出る様に悪の断罪が出来ないこの映画は、改めて核の恐ろしさと反核について描いてくれているのかも知れない。


 色々と日本人として、この映画を見るべきだとは思う。映画が好きなら尚更。クリストファー・ノーラン監督の作品のシーンの一部にはエモーショナルがあると前述で書いたんですが、色々と挙げるとキリが無いものの…インセプションの回り続けるコマ、ダークナイト三部作の最後のブルース・ウェインのシーン、インターステラーにおいてのモールス信号、TENETでの最後…色々と感慨深い物ばかりあって。

 オッペンハイマー氏が語る言葉の一つにインドの聖典から抜粋した「我は死なり、世界の破壊者なり」と言う言葉があるんです。今でも思い返せば目眩がする程に気が狂っていると思うんですけれど、その言葉をなぞらせながら性交を行うシーン馬鹿でも分かる程に破壊者を生誕させたって言うメタファーをぶっこんでるんですよ。正直、今回において色んな会話を行うシーンの中で印象が強すぎたし、監督自身のセンスに慄いた。

映画は娯楽であるし、エンターテイメントだとは思う。だけれど今回は映画と言う括りで楽しむにも、楽しめる題材ではない事実もある。それでも圧巻される物ばかりが羅列して、少しだけ自分の頭をアップデート出来る機会に恵まれた気がするいい作品だったと僕は言えるかな。

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