【研究紹介】「俺か、俺以外か」のアンケート調査
俺以外の皆さんこんにちは、俺です。
皆さんはROLANDさんを知っていますか?歌舞伎町でホストをされている(いた?)方のお名前です。これを書くにあたって軽く調べたのですが、ホストのROLANDさん、という呼び方が正確なのかわからないので保留しておきます。
有名な話ですが、彼のホストとしての自信が「俺か、俺以外か」という名言を産んだそうです。
話は変わりますが、”MECE”って聞いたことありますか?英語で”Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive(漏れなく、ダブりなく)"を意味する略語です。
例えば、渋谷駅利用者の年齢層を知るためにアンケートを取りたいとします。
A.10-20歳/ B.20歳-30歳/ C.30歳-40歳
という選択肢があったらどうなると思いますか?
「20歳はAとBどっち選べば良いんだよ!」
「ボクは2歳でちゅが選択肢がないでちゅ」
という声が上がるのではないでしょうか。
この選択肢の問題点は
①20歳がAとBに、30歳がBとCにダブっている。
②10歳未満、41歳以上が漏れている。
の2つです。つまり、”MECEではない”と言えます。
このままでは、渋谷駅利用者の年齢層が知りたいのに、2歳が存在しないことになったり、20歳がAとBどちらにも数えられたりするため、正確なデータが得られません。(そもそも選択肢に10歳分の幅があるってどうなの?という意見は一旦置いておくとして)この選択肢を”MECEである”状態にする必要があります。
そこで、上記選択肢を少し修正してみます。まず、ダブりを解消します(問題点①)。BとCが他の選択肢とダブらないように修正すると、
A.10-19歳/ B.20歳-29歳/ C.30歳-39歳
になりますね。
次に、漏れを無くします(問題点②)。選択肢以外の年齢も選択肢に含めれば良いので、新たな選択肢Dを追加し、
A.10-19歳/ B.20歳-29歳/ C.30歳-39歳/ D.それ以外
になりました。いかがですか?これで漏れもダブりもありません!
ところで、このアンケートの結果はどういう場面で便利になるでしょうか。例えば、「A. 10-19歳」の回答が多ければ渋谷駅は10代の利用者が多いと言えるため、ティーン向けの広告を打ち出すのに有効な駅だと考えられます。
では、「D. それ以外」が多かった場合は何がわかるでしょうか。恐らく、何もわかりません。10歳未満が渋谷駅を利用することは少ないでしょうが、それにしても40代の利用者が多いのか、50代の利用者が多いのか、他の選択肢への回答が多かった場合に比べて言えることがありません。「漏れもダブりもない」状態だからといって、良い状態とは限らないということです。
国際協力学の研究では、研究対象地域に赴いてアンケート調査(フィールドワークと呼ばれるもののひとつです)を用いることがあります。アンケートを取るだけなら誰でもできますが、何のために、どんなアンケートを取るか考える作業は非常に奥が深いと思っています。上手なアンケートを準備できれば、その回答がたくさんのことを教えてくれますが、下手なアンケートの回答からわかることは限られています。当然、わかることが少ないのは残念なことですし、アンケートに協力してくれた人々に申し訳が立ちません。上手なアンケートを準備することは、回答者に対するリスペクトの表れでもあるのです。
インターネットが発達して、SNSなどで簡単にアンケートを取れる時代になりましたが、「MECEになってないなあ」「MECEにはなってるけど、この結果は何に使えるんだろう?」と思うようなアンケートを目にするようになりました。皆さんもアンケートを取る機会があったら、”MECE”というキーワードだけでも思い出してください。
【まとめ】
①” MECE(漏れなくダブりなく)”で情報を整理できる。
②MECEであれば良いわけではない。「俺か、俺以外か。」はMECEだけど質は良くない。
③誰でもアンケートが取れる時代だけど、実は意外と奥が深い。
【おまけ:「俺か、俺以外か。」という分類の問題点がわかる画像】
歌舞伎町ホスト100人に聞いてみた!「俺か、俺以外か?」