おりぞめ染伝人流遊術「例のあそび」について
●「例のあそび」のモデル
「例のあそび」というのは,おりぞめをする,あるいは,学校に慣れ親しんでいる人からすれば,違和感があると思います。ひとことで言えば,〈教えない〉,〈自由な活動〉という感じで,どうしていいのかという感じになる人がいるかもしれません。〈教えない〉〈自由な活動〉といっても,どうすればそうなるのかわからないということだと思います。
わたしの遊術「例のあそび」のイメージに近い遊びがあります。それは,砂場遊びです。砂遊びではなくて,砂場遊びです。どう違うのと思われたかもしれません。ここでいう「砂場」とは砂のある場所という意味ではなくて,公園や幼稚園にある「砂場」です。
●「砂場」遊びのヒミツ
「砂場」で遊ぶ子どもたちの様子を見ているとまったく自由です。山のように高く積み上げる子,川を作る子,動物や何かをイメージして作る子,食事ごっこを始める子,そして,「砂場」であそばないというのも選択肢です。
これらの姿は,素材としての砂のすばらしさもありますが,「砂場」の存在が大きいのです。砂をただ置いただけでは「砂場」とは言いません。簡易的なものではなくて,公園や幼稚園にある「砂場」というのは,どのような構造をしていると思いますか。
「砂場」の砂を掘っていくとどうなると思いますか。どこまで行っても砂ということはないと想像できると思います。では,どこかでかたい土になると思うかもしれません。実は,砂を掘っていくとここで終わり,底と思うところがあります。その底は,砂利だったり,石だったりシートだったりします。それは水はけをよくするためのもので仕様はいろいろですが,要するに底があってそこに砂を入れているというわけです。「砂場」には枠があります。実は,公園や幼稚園の「砂場」には枠の下に壁のようなものがあり四方が囲まれています。プールのような形をしていて,その中に砂が詰まっているというわけです。
砂遊びが効果的に楽しめるように「砂場」を作って楽しめるようにしているというわけです。
●「例のあそび」のために
自由に好きに楽しむ「砂場」遊びのように「例のあそび」も「砂場」と同じような「おりぞめ場」というようなものが必要です。それは,「砂場」のようにどこかに設置するというものではなくて,おりぞめをする場所に必要なモノは次の三つです。
1 モノ(紙と染料などの材料と容器などの道具)
2 実物標本(examples)
3 ガイド
1 モノ
具体的にどのようなモノを用意するかというのはありますが,おりぞめをするための材料や道具が必須です。
2 実物標本(examples)
こんな風に染めたらこうなるという実例です。「広げ水 例のあそび」を8月からあちらこちらで実施していく中で実物標本を作り直して最新版になりました。
大きく変えたのは,初代は染め方をのせてはいますが,何色という指定がしていません。最新版では伝えるときに,色の名前を書いてあります。
これは写真だったり,染め方が分かるようになっていれば実物はいらないのではと思われるかもしれません。
それに関しては,そうしてやってみたらいいと思います。染伝人流遊術としては,〈実物〉であることに意味があると考えています。ただ染め方を学ぶだけでなく,実物を見る楽しさがあると思うからです。
「例の学び」ではなくて「例のあそび」なのでたのしいということが重要なので〈実物〉にこだわります。
3 ガイド
モノと実物標本だけでは「例のあそび」にならないです。どのようにして遊ぶのかを案内する人が必要です。
ガイドとは「例のあそび」の案内であり,進行係であり,相談に応える人です。
将来,「例のあそび」が広まれば,特にガイドがいなくても,「例のあそび」の経験者がガイド役を引き受けてくれます。
しかし,今は,モノと実物標本を使って効果的に「例のあそび」を進めるには,ガイドの能力が大きく影響すると思います。
「例のあそび」は何かを教えるということではなくて,場所とモノと実物標本を提供して遊んでもらうのが目標です。
案内・進行・相談の係としてできるにはそれなりのガイドの力が必要なことは想像できると思います。
わたし自身は,実物標本とともにガイドのトレーニングも現時点では必要だと考えています。
●「例のあそび」をやってみよう
わたしは「例のあそび」に今までとは違うおりぞめのたのしさの可能性を見ています。
それは,「自分なりの楽しさを満喫する」ということです。
以前から,「おりぞめは人を選ばない,人がおりぞめを選ぶ」といっています。
こんな人でなければおりぞめをたのしめないということはない,その人それぞれにおりぞめをたのしめる,という主張です。
今までも,それを実現してきたと自負していますが,「例のあそび」はその典型になると予想しています。
一番最近の12月14日に実施した「例のあそび」に参加したモエさんの感想。
「広げ水 例のあそび」、とても楽しかったです。
「ここをこう染めたら、こんな模様になるんだ!」という新しい感覚でした。いつもはでたらめというか好きなように染めるだけだったのが、染める場所、染める色を意識する楽しさも味わうことが出来ました!!(でたらめでも十分楽しめるのですが(笑))どこをどう染めてもみんな綺麗に仕上がるのがおりぞめの良いところであるが故に、それに戸惑う子もいます。だから、標本があることでそういう子たちも楽しめる良きヒントになるだろうし、自由に染めることはできるけど、標本をアレンジする楽しさも味わえる「例のあそび」がとっても心を奪われました!!標本をコンプリートしたいという気持ちにもなりました(笑)。
〈染める場所,染める色を意識するたのしさ〉〈でたらめでも十分楽しめる〉〈戸惑う子もいます。だから,標本があることでそういう子たちも楽しめる〉〈自由に染めることはできるけど,標本をアレンジする楽しさも味わえる〉
モエさんの言葉から,「砂場」でたのしんでいる子どもたちの姿と重なりませんか。
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わたしの自宅で実施しているおりぞめ来楽部,2025年は〈遊者のParty〉と題して実施します。その1月と2月に「広げ水 例のあそび」の体験と標本づくりをする予定です。
詳しい案内は,後日します。