#33: こんなときだから♪ミニマル・ミュージック
トム・ジョンソン:「カウンティング・デュエット 」(1982)
#29 -35のテーマは「不自由は発明の母ー制約から生まれた音楽」。
「ミニマルはもう古い! これからはオプティマイズだ!」
このちょっぴり意識高い系のカタカナ用語。しかし,最適化を意味するオプティマイズという考え方は,不自由を強いられているからこそ自分の生活を見直すきっかけを与えてくれるかもしれません。
家主はこの活動名の由来にもなったように,16平米の小部屋に住んでいます。しかも「収納なし・ユニットバス」という,普通ならば敬遠される条件の物件ですが,一目見て気に入りました。ここならば,最小限の物で暮らせる! と。
自分で言うのもなんですが,生活ではマイナス要素をオプティマイズすることは得意かもしれません。
収納なし→見せる収納と手作り&隙間収納の合わせ技で解決!
ユニットバス→お風呂とトイレをいつでも水洗いでスッキリ!
狭い空間→冷暖房が効きやすくて快適!
などなど。視点を変え,自分好みにアレンジすることで,自分の好きなものに囲まれて生活する喜びが生まれます。
そうすると,自分にとって必要なのか,そうでないのかが選別できるようになります。
家主の場合,近所のスーパー が自分の冷蔵庫だと思っているので,ホテルにあるようなサイズの冷蔵庫(冷凍庫はなし)ですし,炊飯器もお米はフライパンで炊けるので持っていません。
ミニマルというと,ちょっと仙人っぽいイメージがありますが,オプティマイズというと,ワクワクしながら身の回りのものを最適化していくという楽しい感じがしませんか?
また,今頻繁に耳にする「自粛」という言葉ですが,本来ならば,自分から進んで行動や行いを慎むという意味です。しかし,なんとなく今は強制感をその言葉から感じてしまいます。もちろん,医療現場で働く方や,自宅ではなく現場で働かざるを得ない方もたくさんいらっしゃいます。今まで信じてやってきたことがそのままの形で行うことができない困難に直面していらっしゃる方も大勢いらっしゃると思います。そのような方の負担を少しでも減らすためにも個人の行動は「自粛」というよりも,オプティマイズを心がける必要があると思います。自分にできるオプティマイズな生活を心がければ,今問題になっている無駄な買い占めや買い占めによるフードロスも防げるのではないか,そしてなによりも,コロナから身を守ることにつながると思っています。
前置きが長くなってしまいましが,本日お送りするトム・ジョンソン(1939- )は,数学的な論理を駆使した音楽や,たった4音だけで1時間もののオペラを作曲するなど,自他共に認めるミニマル・ミュージックを代表する作曲家です。そんな彼の作品は,ワクワクがとまらないオプティマイズを体現する音楽であふれているように思います。
本日お送りする曲は,ただ,いろんな規則にそって二人で数をかぞえるだけなんです。
ジョンソンは子供の頃,色んな国の言葉で数をかぞえることが好きだったそうです。そして,いつ始めたかは覚えていないそうなのですが,スペイン語,ドイツ語,フランス語,ロシア語などで1から7まで数えることを始め,1963年に日本に訪れた時,日本語でも挑戦したそうです。この経験から,国によって違う歌(節)のようなものがあり,異なったリズムが異なった音楽を作っている,というのが面白い! と思い,もっといろんな国の言葉を学びたいと思ったそうです。
よくよく考えると,「いーち,にーい,さーん」と声に出して数を数える時,自然と節やリズムをつけていませんか? まるで歌うように。このように,ジョンソンはすでに持っているもの,備わっているもの,を生かしながら,音楽へオプティマイズする天才なのかもしれません。彼の音楽を聞いていると「不自由」とは無縁,遊び心さえ感じてしまいます。
でもね,わかります。これ,言うは易く行うは難し,だということも。
しかし,それを含めて,「うまくいかないなー」を楽しんでみませんか?
行き詰まりを感じたら,いろんな表現を試しながら数をかぞえてみましょう!