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解説の心得ー 小林宏(カーリング)

スポーツマンだった祖父の影響で、物心ついた時からテレビでのスポーツ観戦が生活に溶け込んでいた。スポーツを「する」楽しさよりも、「みる」楽しさを先に知ったものだから、自分がやろう、という発想はなかった、、、とは日頃の運動不足の言い訳にはならないか。。。

ともかく、ゴルフ、相撲、テニス、フィギュアスケート、体操などなど。これっぽっちも出来やしないくせに、人にその面白さを熱弁することだけは出来るようになった。

そんな私にとってオリンピックは、テレビでの観戦が難しいスポーツを一同に見るチャンス。ワクワクが止まらない存在となった。最近はオリンピックが抱える様々な問題が浮上しているため、両手を挙げて「オリンピック最高!」と言えないのが残念だが、やはりオリンピックはオリンピックであって、それぞれの世界選手権ではみることの出来ないドラマが繰り広げられる、四年に一度の大舞台であることは間違いないだろう。

そんなオリンピックで、私にとって忘れられないスポーツとなったのが、長野で存在を知り、トリノで気になり、バンクーバーで面白さにはまったカーリングである。解説者の語りに釘付けとなったのだ。

一見地味で何がどうなっているのかわからないルールを、的確かつフランクに解説。素晴らしいプレーに対しては敵味方関係なく絶賛し、調子が悪そうな選手には励ましの言葉をかけ、たまに我を忘れて「This is curling!」と松岡修造氏にも引けを取らないほど絶叫する解説者に、私はすっかり心を奪われた。それが競技者でもあり、日本カーリング界を牽引する小林宏さんだった。小林さんの解説聞きたさに、ほぼ毎日行われている予選の試合を見るようになったのである。オリンピックが終わる頃にはカーリングというよりも、小林さんのファンになってしまった。しかしオリンピックが終わってしまうと、残念ながらテレビで目にすることはなかった。

待ちに待った4年後のソチオリンピック。しかし、解説は小林さんではなかった。ショックからか、申し訳ないがこの時の印象はあまり残っていない。そして、再び4年後の平昌オリンピック。今度こそは!と思ったらまた違った。

気になって調べてみると、

2016年膵臓癌のために死去。享年68歳。


ショックだった。

ショックだったが、今回の解説者であった石崎琴美さんは、小林さんとは対極的に冷静で落ち着いたトーンの持ち主であり、その淡々とした語り口の中にも緊張する場面の後にはふーっと息をついたり、ナイススイープ!と声をかけたり、小林さんの魅力だった解説者の素直な表現が漏れるところがあって好感を持った。特に選手が今どういう状況なのかを解説する場面では、オリンピック経験者としての言葉の端々に説得力が感じらるものだった。その姿に小林さんも「ナイス、よし!」と声をあげていたに違いない。また、今回の男女アベック出場や女子の銅メダル獲得、そしてカーリングの普及と発展に貢献したすべての人々、これまでの軌跡に、小林さんも空の上で「This is curling!」と叫んでいるだろうと妄想して、喜びを噛み締めたいと思う。

審判が存在せず、選手のスポーツマンシップが重んじられる点や、Numberの記事が伝えているコンシードが表す競技精神など、カーリングならではの世界が、長さ約45m×幅約5mのアイスに広がっている。これまでにも増して女子選手への注目が高まった大会となったが、選手たちも、もっとこういった魅力を知ってほしいと考えているだろう。

競技や選手などがより一層輝けるように、解説者が色々な人やモノを繋ぐ魅力的なメディエーターになる必要がある。その大切さを小林さんは教えてくれた。勝手ながらその精神を胸に我が道を邁進したいと思う。

カーリングの精神を示す大切な言葉。「コンシード」を定着させた中継陣。http://number.bunshun.jp/articles/-/830101

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