屋号とビジョンを考える
個人事業主になる際に、屋号をつけるか、ビジョンや事業をどこまで考えるかは、独立する方なら悩む方もいるかと思います。私は悩んだ末に、屋号とビジョンを設定することにしました。
本投稿では、まずは結論、何の屋号とビジョンにしたか、ビジョンとは何か?を定義した上で、屋号とビジョンを作成したプロセスと考えを共有します。
決めた屋号
屋号(企業名に該当)・・HARU(ハル)
HARU(ハル)としました。春を意味し、新しい始まりと成長を表します
ビジョンとは
所謂、会社のMVV(ミッション/ビジョン/バリュー)に近い考え方ですが、このあたりの考え方は、企業によって考え方や位置づけが異なるので「これ」という正解はないそうです。そのため、自分にあった考え方やフレームワークを見つけて考えるのがよさそうです。私は企業活動のすべてがビジョンを起点として動くべき(普通そうだと思いますが)と考えており、ジム・コリンズとビル・ラジアー著書の「ビジョナリー・カンパニーZERO」に解説されている「ビジョン」のフレームフレームに倣って考えることにしました。
ビジョンを構成する要素
ビジョンのフレームワーク(コリンズ・ポラス式)に則ると、ビジョンは3つの要素で構成されています。
コアバリューと理念 … 会社の指針となる原則と信条の体系。事業と人生に関する哲学
パーパス(存在意義)… 組織が存在する根本的理由。コアバリューから生まれる。組織の行方を照らす星のように、常に努力すべき目標ではあるが、完全に達成されることはない。100年間にわたる会社の指針
社運を賭けた大胆な目標(BHAG*) … 高い山に登るときのようにゴールが明確。成功の確率は100%ではない。能力を大幅に向上させる必要がある。人々の心を揺さぶり、意欲をかき立てる。容易に理解できる。理想的な時間軸は10-25年
ビジョンのメリット
書籍「ビジョナリー・カンパニーZERO」によれば、ビジョンをつくるメリットは4つあります。見てわかるように、ビジョンとは会社・組織の向くべき方向、考え方、行動の原動力となるもので、非常に重要な定義となります。
ビジョンは通常では考えられないほどの努力を引き出す
ビジョンは戦略的、戦術的判断を下すコンテクスト(文脈)となる
共通のビジョンは一体感、チームワーク、共同体を生み出す
ビジョンは企業が一握りの中心人物に依存した状態から脱却する基盤となる
決めたビジョン
ビジョンフレームワークに則り、決めたビジョン(一旦24/6時点)は、次のとおり。
コアバリューと理念
パーパス(存在意義)
社運を賭けた大胆な目標(BHAG)
屋号、ビジョンを考えた思考と改善のプロセス
あくまで私のケースですが、屋号、ビジョンを考えるにあたっては、事業内容とも関連するため、屋号・ビジョン・事業をそれぞれどうするか?というのを粗々でドラフトし、それぞれを行ったり来たりしながら調整し、全体の整合性を確かめながら精度を上げていく作業をしました。
アイディエーションの方法
具体的な屋号やどんなビジョンにするか?などのアイディアは、発散と収束のプロセスをよく使いました。まず最初に発散フェーズとして、過去の経験や、今後やりたいことを基に自分の中からアイディアやキーワードを出して、そのコンテキスト(文脈)をChat GPTに与えて、アイディアの深堀や別の観点でのアイディア出しなどを行います。ある程度アイディアが出たら、自分の中で整理整頓してグルーピングしたり関連付け足りしてアイディアをまとめてきます。大体3つぐらいのアイディアにまとまったら、最後に収束フェーズです。総合して「つまるところそれは何か?」を一文で表現すると、アイディアがまとまります。
屋号の探索
過去の経験値ベースでキーワード洗い出し
屋号を考えるにあたっては、発散と収束のプロセスを使いながら、過去の経験知ベースで、アイディアを探索し、重要なキーワードは何なのかを探しました。
私は、クリエイティブ支援・マーケティング支援・システム導入支援などの業務経験が多いため、過去の実績を振り返りながら、クライアントへどういった価値を提供していたかを整理し、つまるところそれは何か?を定義していきました。
これが自分が過去にやってきたことではないかと思い、そこから「あたらしい始まり」「事業の成長の支援(事業の支援)」というキーワードが出ました。
屋号の要件の洗い出し
自分の大事なキーワードがでたら、具体的なアイディアを出す前に、屋号の要件は何かを考えました。私の場合、以下の様な内容です。
多くの人にとって親近感がありポジティブで呼びやすく短い日本語
SUSHIのように海外でも通用するワード
書いてある通りですが、覚えてもらいやすい名前で、何かよくわからない名前より、既に知られているワードの方が、すんなり受け取ってもらえるかなと思ったのと、海外展開も視野に入れているため、SUSHIやKAWAIIみたいに、あえて英語ではなく日本語を広めたいと思い、上記のように定義しました。
ChatGPTで具体的なアイディアを量産し、屋号候補リストを作る
キーワードと屋号への要件がまとまったところで、そのコンテキスト(文脈)をChatGPTにインプットして、具体的にどんな屋号の案があるか出してもらいます。
プロンプト例
#前提
・あなたはプロのコピーライターです
・クライアントが起業予定で、屋号を考えています
#指示
屋号への要件を基に、屋号のアイディアを50個作成してください。
#出力形式
屋号名: 意味
#屋号への要件
・あたらしい始まりや、スタートを表す
・事業成長の支援を表す
・多くの日本人にとって親近感がありポジティブで呼びやすく短い日本語
・SUSHIのように海外でも通用する日本語
・屋号はアルファベット表記とする
ChatGPT回答イメージ
承知いたしました。それでは、クライアントのご要望に基づき、屋号のアイディアを50個ご提案いたします。
Hajime: 新しい始まり
Tsubasa: 飛躍や成長を象徴
Hikari: 明るい未来を示唆
Kagayaki: 輝かしい未来
Asahi: 新しい日の出
Aozora: 無限の可能性
Hitomi: 明確なビジョン
Sakura: 春、新たな始まり
Mirai: 未来への期待
Kokoro: 誠実さと情熱
Hoshi: 夢と希望
Asagao: 朝の新鮮さ
:
:(略)
ChatGPTが瞬時にたくさんのアイディアを出してくれるので、気に入ったものがあれば、ピックアップし、なければ、追加で50個作って、という風にアイディアを出しまくってもらいました。変化球などで、「人名で出して」、「英語で出して」、「物の名前で出して」など、いろいろな観点でアイディアを出してもらうのもよいと思います。これを繰り返すことで、自分のお気に入りの屋号候補リストができるので、あとはその中から一つを選ぶという作業になりますが、その前に、
屋号候補リストから最後の一つを選ぶ前に、調べておきたい3つのこと
①とりたいドメイン名が空いているか確認する
屋号を作ったらホームページやメールアドレスを作ることになりますので、その屋号でドメイン名が空いているかチェックが必要です。有名なサービスでは例えば「お名前.com」がありますが、その他のサービスでも構いません。
自分が欲しいドメイン名が取得可能かどうかの調査結果も、屋号を選ぶ上での判断軸の一つになります(場合によってはドメイン名がものすごく高くて判断に迷う。みたいなこともあるかもしれません)
②その屋号名でGoogle検索して、名前の重複を確認する
屋号は基本的に重複していても問題ないそうですが、ビジネスが競合したり、類似商品を提供する場合は、相手から訴訟されるリスクも考えられます。どういった会社があるのか事前に確認しておくのが良いでしょう
③商標登録チェックをする
既に商標登録されている場合には、利用できない可能性があるため、商標登録状況を確認しましょう。ロゴなどを作成した際にも、表現が似ていないかどうかなど、チェックしておくのがよいでしょう。また正式な調査が必要な場合には、専門家への依頼を検討してください。
最後の一つを選ぶ
候補リストと、事前調査が終わったら、最後の一つを選ぶ作業です。私の場合は、いくつかある候補の中から、「HARU(ハル)」を選択し、しばらく時間を置きながら、屋号⇔ビジョン⇔事業を見返しながら、HARUが適切な言葉かどうかを見定めてから決めました。私は3か月くらいはじっくり考えていたと思いますが、長く考えていただけに、現時点では全く後悔がありません。
ビジョンの探索
次に、ビジョンを考えたプロセスを共有します。前段で記述した通り、ビジョンのフレームワーク(コリンズ・ポラス式)に則ると、ビジョンは「コアバリューと理念」「パーパス(存在意義)」「社運を賭けた大胆な目標」3つの要素で構成されており、一つ一つ思考のプロセスを共有したいと思います。
「コアバリューと理念」を考える
まず「コアバリューと理念」とは何か?をおさらいします。
コアバリューは、つくるものではなく、あなたの内側から生まれ、私たちの心の中にある価値観や理念は何か?を問うものであるということで、自分自身の人生哲学や行動の原則を言語化していくことが、「コアバリューと理念」につながることがわかります。
屋号でだいぶ自己分析した後に、さらなる自己分析の宿題です(笑)
やっていて思いましたが、屋号とビジョンを考えるということは自己分析の塊でしかありません。こんなに自己を振り返り言語化を迫られることは、転職活動以来でした。それよりハードです。雑談はさておき。
「コアバリューと理念」を考えるプロセスも屋号の時と同様に、発散と収束の手法を使いました。発散する際に、軸としたポイントは以下です
自他(自分とチームメンバー/クライアント)との接点で分けて考えて出すと、いろいろな観点を出せると思います。
自分自身の仕事、仕事内容の洗い出し
その仕事をしている際に、共通して自分が大事にしていることの洗い出し
他と仕事するときに、気を付けていることの洗い出し
自分にとって他の存在はどんな存在かの洗い出し
アイディアが一定まとまったら、収束(つまるところそれは何か?)を言語化させていきますが、私は、「コピーと補足説明」という構成で言語化しました。
この作業も一度ドラフトを作ってから、ずっとブラシュアップし続けておりなかなかFixしないのですが、時間をかけて見直しているとどんどん精度が高まり、方向性が固まってくるので、個人事業主で一人の間はアップデートし続けようと思います(笑)
「パーパス(存在意義)」を考える
まず「パーパス(存在意義)」とは何か?をおさらいします。
パーパス(存在意義)とは、決して完全に実現されることはないため、終わらない目標として考えると点と、だらだら書かずに簡潔に1~2文で表現する点をおさえて考えるのがよさそうです。
私は「パーパス」を考えるにあたり、書籍で語られている「私たちはXという製品をつくっている」という1文から出発し、「なぜ」を5回繰り返すという、「5つのなぜ」アプローチを参考に考えてみました。
スタートの1文は、「社会をよりよくする事業を支援・創出する」からはじめました。
このアプローチは恐らく正解が無く、人によって異なると思うのですが、パーパスの核心に迫る過程が難しかったです。なぜ?なぜ?でうまく繋げていくのですが、ぐるりと一周してしまったり、外れた方向にいってしまったり、途中でよくわからなくなってしまうこともありました。そのため、私は一旦書籍の事例にあるような流れを踏襲しつつ、自分色に染めるアプローチで収束させたのですが、これはもっと深堀りしてなぜ?を突き詰めていく必要があるほど重要な内容や指針だと考えているため、ドラフトをベースに今後アップデートしていきたいと思っています。
「社運を賭けた大胆な目標*BHAG」を考える
まず「社運を賭けた大胆な目標」とは何か?をおさらいします。
書籍の中では、具体的な例や、ミッションの類型なども語られております。パーパスが永続性があるものだったものに対して、社運を賭けた大胆な目標は、時間軸が明確にあることが大きな違いですね。理想的な時間軸は10-25年を目安に考えると良いようで、私は次のように設定しました。すでにこれまでのワークでやりたいことやキーワードがまとまっていたので、20年後を目途に実現したいことは何か?を考えました。
時期が明確、よりゴールが明確で、わくわく?の要素を意識して考えました。
最後に
最後に、屋号とビジョンは、個人事業主として活動をスタートする際は必須ではありませんが、これまでの過程を見ていただいた通り、独立するからには、自分は何者か?何の価値を提供してくれるのか?それはなぜなのか?意思決定するときの軸は何か?何を目指すのか?など、様々な問いを周囲から受けることがあると思います。その時に、しっかり答えられるように、判断の軸や目指す方向を見失わないようにと考えた際に、一人でもビジョンを持って行動をした方が、より良い結果が生まれるのではないかと思い、屋号とビジョンを設定することにしました。
もちろんゆくゆくは法人化したり、関与者が増えていくことも見据えているので、それに向けた準備の意味もあります。
これから起業される方の参考になれば幸いです!