「DX白書2023」でDXの現状を知る
「DX」もう耳にタコができている方も少なくないかもしれませんが、DX推進は引き続き国策となっており、重要な取組の一つです。今回、私はDXについて改めて理解を深めようといろいろと調査したところ、経済産業省や独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)から多くの有益なレポートやガイドラインが公開されていたため、この情報を振り返りながら、国が提示しているDXの本質や現状、目指す方向性を理解しつつ、これからどうしていくべきかを考えていきたいと思います。
DXの取組状況
まず最初に現状の概観です。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が出している「DX白書2023」によれば、日本のDXに何かしら取り組んでいる企業は、2022年度 全体で69.3%となっており、米国の77.9%に近づいてきている状況です。この数は年々増えており、良い傾向にあります。コロナ禍やAIの登場がこれを後押ししていることでしょう。
しかし、この数字はあくまでも全体感を表すもので、これで日本は大丈夫だ。と言えるものでは一切ない。というのが私の所感です。
「DX白書2023」の中でも同様の見解が述べられていますが、
大事なのはこの中身はどうなっているか?です。
DXの取組状況(従業員規模別)
例えば、従業員別規模の取組状況を見ると、中小(1000人以下)の規模の企業のDX取組状況は米国と比較して低い傾向にあり、引き続き全社戦略に基づくDX推進を進める必要がある状況です。
日本の中小企業数は全体の「99.7%」なんて言われることもあるので、その割合から上記の数値を考えると、結構な割合で実は進んでいないのでは?という憶測をしています。
参考)日本企業の従業員別の構成比
参考までに、中小企業の従業員別の構成比は、以下です(若干古いですが)
9割くらいの会社が従業員100人以下に属していることがわかります。
日本は本当に中小企業が多いんですね、、それはさておき
DX白書2023の100人以下規模のDX取組状況では、40%が何かしらDXに取り組んでおり、60%は何も取り組んでいない状況のため全体的な底上げが必要な状況だと言えます。
DXの取組内容と成果
次にDXの取組内容と成果についてです。日本のDXはデジタル化・業務効率化中心となっており、新しい製品・サービス創出や顧客への提供価値向上やビジネスモデル変革までに至っていない状況です。
DXの本質は「新しい製品・サービス創出や顧客への提供価値向上やビジネスモデル変革」を実現することです。米国はその点に取り組み、成果を出してきている状況ですが、日本はこれに対して遅れている状況です。既存システムの入替や効率化などを行って、その後のデータ活用したビジネスモデルの変革という点への意識や取り組みが希薄になっていないか?という点が懸念されます。
DX 推進アプローチ、体制、予算
次にDX推進するアプローチや体制、予算などの観点の数値です
アジャイルアプローチの活用状況
DXはニーズの不確実性が高く、技術の適用可能性もわからない状況化で推進が必要なためアジャイルアプローチが推奨されますが、日本では5割未満の採用となり米国と差がある状況です。アジャイルの考え方はIT・開発だけでなく、経営企画、事業部門、マーケティング、経理・人事・総務などのバックオフィス部門でも広く利用できる考え方で、最近当たり前のように耳にしますが、開発業務以外に浸透しているケースはまだ少ない状況と言えます。
IT見識のある役員の割合
DX推進は、経営層の積極的な関与やDX/ITへの見識と、経営層、業務部門、IT部門が協働できる組織作りが必要となりますが、ITに見識ある役員は3割未満の企業が約7割という状況です。日本の経営層のIT対する理解が不十分であることがDXの取組の阻害になることが懸念されます。
経営者・IT部門・業務部門の協調
上記と関連し、DX推進時に、経営者・IT部門・業務部門で協調して推進ができているかという点については、連携して進めている企業は4割未満で、米国の8割に対して大きな差があり、全社的にDXを推進できていないことが伺えます。本来DXは経営トップダウンで実行し、全社的な取組で一気に実現していく必要があるなかで、各部門同士の協調がうまくとれていないとなると、部分的なシステム更改や業務効率化に留まる取組をしている可能性がある、且つ全社的なデータ活用を見据えたグランドデザインがされているか懐疑的な状況と言えます。
予算確保状況
DXは一回の施策で終わりではありません。全社的にデータ活用可能な状態までインフラを整えて、そのデータを活用して新しい製品・サービス創出や顧客への提供価値向上やビジネスモデル変革を行っていくことを目指します。そのためには経営として中長期的な投資をし続ける必要がありますが、日本では必要に応じて都度申請された費用でDXしている企業が多い状況で、一過性とならない中長期的なロードマップ作成や予算確保が必要だと言えます。
顧客への価値提供などの成果評価の頻度
顧客への価値提供の成果評価の頻度(評価しているか)の結果ですが、日本においては「評価対象外」との回答の割合が3割半ばから7割程度となっており、取組の成果がそもそも測定されていないことが大きな課題となっています。取組の評価をしないということは成果があったかどうかわからないまま、DXに取り組んでいるということなので、結果が見えていないので継続的な予算確保にもつながっていない?のではないか。とも憶測します。
まとめ
DX白書2023を読んで、日本企業のDXは着実に進行しているものの、以下の点に課題があると認識しています。
DXが経営トップダウンでの全社的取組になっていない
DXの取組が既存ビジネスのデジタル化・業務効率化に留まり、新しい製品・サービス創出や顧客への提供価値向上やビジネスモデル変革に至っていない
DX投資が一過性となっており、継続的な投資になっていない
大企業と中小企業ではDXの取組状況に差がある
これらの課題を踏まえ、これからどのようにDXを推進していくか、支援していくべきか。をDXレポートを振り返りながら、引き続き考えていきたいと思います。
つづく。