『Wローズ』簡易版
門倉直人『ローズ・トゥ・ロード』(2010年版、『Wローズ』)簡易版
デザイン:岡和田晃 Ver1.4
プレイヤー人数:2人 所要時間:約30分
必要なもの:『ローズ・トゥ・ロード』(2010年版)ルールブック、筆記用具、愛読する書籍
★本作はナラティヴ・デザインのRPGであり、国産ゲームポエムの先駆作とも言える(2006年頃から、雑誌等でコンセプトが練られてきた独自作)『ローズ・トゥ・ロード』(門倉直人著、エンターブレイン、2010年版。『The Wander Roads to Lord』、略称『Wローズ』とも)を、30分程度でプレイできるような簡易版として再デザインしたものです。プレイにあたって、参加者のうち最低1人はルールブックを所有していなければなりません(収録の各種シートを使います)。
★もともとは岡和田が受け持ちの大学のゲームデザイン講義で使うため、門倉直人さんに許可をいただいて作成・運用したもので、レポートは日本SF作家クラブの「SF Prologue Wave」に公開してあります)。このたび改めて、遠隔講義等への運用に資する目的で本noteへの公開する許諾を得まして、以下に掲載するものです。
★『Wローズ』は魅力的だと思うものの、どこから手をつけていいか迷うという向きのため、最低限の要素のみで回るように換骨奪胎したものでもあります。
★ざっくり簡略化して、かつ2人用の協力型ゲームとして割り切ったダウンサイジングをしていますが、もともとが素晴らしいので、短時間でも充分に雰囲気を味わうことはできます。ただし、時間が許す方は、この簡易版を足掛かりとして、オリジナルのルールにも触れてみて下さい。
【1:ゲーム・コンセプトと目的】
・『ローズ・トゥ・ロード』では、プレイヤー演じるキャラクターは中世ヨーロッパ風の幻想世界ユルセルームに生きる「魔法使い(逍遥舞人アムンマルバンダ)」になります。J・R・R・トールキン『指輪物語』やアーシュラ・K・ル=グウィン『ゲド戦記』、あるいはユルセルームを舞台とした小説「ホシホタルの夜祭り」や「グンドの物語」のような世界です。
・逍遥舞人アムンマルバンダは、混沌の呪縛で不安に揺れる地を「自らの旅を通じて安堵」させていく、特殊な魔法使いです。「混沌から言葉や旋律などの「意味」を分かち、それにより詩歌や舞踊や物語などを生み出して、世界に「より見えやすい風景」を与え、鎮めていく……。そんな魔法を使う旅人と言い換えることもできるでしょう」(門倉直人)
・タクティカルなRPGとは異なり、レベル・ダメージ・ヒットポイント・マジックポイント等の数値的な要素はありません。参加者相互の勝ち負けもありません。協力して物語を紡ぐのが目的です。2人1組でペアになり、1人が魔法使いに、もう1人が語り部(ゲームマスター役)になります。つまり、魔法使いはキャラクターを作り、語り部はマップとシナリオを作るわけです。事前に、「PCシート」と「冒険マップシート(から好きな舞台)」、「シナリオ背景シート」を、それぞれ1枚ずつコピーします。
【2:根幹のルール:言葉決め】
・魔法使いが使用するキャラクターシート(PCシート)に埋めるステータスや、冒険マップ&シナリオ背景シートの項目は、原則的に「言葉決め」によって抽出されます。
《「言葉決め」のやり方》眼を閉じて「言葉決め表」(ルールブックp.126~177)か手持ちの本の好きな箇所を指さし、ランダムに言葉を抜き出して下さい。手持ちの本の場合、2つの言葉をくっつけて造語してもOKですが、その際には言葉の語尾周辺を、前後の言葉の接続が自然になされるよう、使いやすく変化させて下さい(ただし、言葉そのものの意味を変えるのはNG)。
【3:〈魔法使い用〉PCシートの埋め方】
・PCシートの名前、「●●●の●●●」は、好きに入れていただいてかまいません。「●●●の」は通り名です(例えば「疾風のアヴェリャネーダ」といった具合に)。思いつかない場合は、言葉決めで選んで下さい。
・性別、年齢も自由にお決めください。「クステ」は空欄にして下さい。
・「魂の故郷」には、「魂の故郷と風景言葉表」(ルールブックp.16)から好きに選んだ地名(例:西方守護ストラディウム、大草原ラムザス、魔大陸ヒュノーなど)を1つ入れて下さい。
・「強運時」、「不運時」には、どのような時にそうなるのかを1つずつ自由に決めて下さい(言葉決めした言葉を入れるか、任意で決めて下さい)。
・「魂の故郷」に対応した風景言葉を、「魂の故郷と風景言葉表」(ルールブックp.16)から「言葉決め」でランダムに選び、「総合ステータス」の「表の風景」と「真の風景」に1つずつ記入してください。
・「見いだされた弱点言葉」に、「魂の言葉と風景言葉表」か手持ちの本から、言葉決めした言葉を1つ入れて下さい。
・「顔ステータス」から「表の風景」と「真の風景」を同じ列でどちらか1つ(両方でも可)、「体ステータス」から「表の風景」と「真の風景」を同じ列でどちらか1つ(両方でも可)、自由に決めて下さい。言葉決めによって選んでもかまいません。
・所持品は、一般的な旅人が持っていそうなものであれば自由に書いてもらってOKです。
・「今回、あなたが得た虫の知らせ」には、語り部と相談して、旅に出る動機を書いてください。
【4:〈語り部用〉冒険マップシート&シナリオ背景シートの埋め方】
・ここでは、冒険マップシート「とある村」を使う場合を記述します(それ以外に、「魂の故郷」に見合った冒険マップシートを使ってもよいでしょう)。舞台の「とある村」は、混沌の呪縛によって不安に陥っています。「とある村」は13箇所の場所によって構成されています。そのうち3箇所に、混沌の呪縛による悪影響が具体的に入り込んでいます。それがどのようなのものかを「魂の故郷と風景言葉表」から「言葉決め」することで書き入れて下さい。その際、「一見ポジティヴそうな変化でも、そこに呪縛を感じ、以前の風景を回復したい人がいるというのもWローズの生み出す物語なので」(門倉直人)、ポジティヴな内容であっても、そのまま「混沌の呪縛」として扱います。
・混沌の呪縛に陥った真相を設定してください。「シナリオ背景シート」の「クエスト目的」を自由に埋めることで処理します。混沌の呪縛によって3箇所に生じた具体的な影響から、想像力を働かせて真相を決めてください。
・シナリオ背景シートの「オプション」については、物語に深みを与えるために必要であれば自由に設定してください(ルール的な文章は無視してください)。「隠された真相は?」「塞ぐものは?」「鍵を握る人物は?」「その場所は?」「出発の日は?」「運命は?」など。
・「クエスト目的」の「2(面倒な/不都合な/不幸せなこと)」を解決するには、魔法使いが混沌の呪縛を生み出した真相を解決する「魔法風景」を放たねばなりません。鍵となる「魔法風景」を、混沌の呪縛の具体的な効果から想像を膨らませて書き込んでください。
【5:ゲームの進め方】
・魔法使いと語り部は対立する立場にはなく、協力して物語を紡いでいきます。あらかじめ定めた実時間内に(3つの)混沌の呪縛をすべて解き放ち、「クエスト目的」を達成することができれば、魔法使いと語り部は「勝利」したことになります。逆に、時間内に混沌の呪縛のすべてを開放して真相を解き明かせなければ、魔法使いも語り部も「敗北」します。敗北したら混沌が広がりユルセルーム世界は滅亡します!
・語り部は、冒険マップシートの舞台で魔法使いがどこへ行きたいかを聞き、うまく誘導してください。語り部が許可すれば、マップ内の好きな場所へ行くことができます(マップの外には出られません)。ただ、原則的には、道が通っている場所をす進めるものとします。マップの具体的な箇所で何が起こるのかを想像し、語り合って互いにコミュニケーションを進めてください。なお、最終的な決定権は語り部にあります。
・魔法使いは、自分の総合ステータス、顔ステータス、体ステータスのいずれかの風景言葉と、語り部が設定した混沌の呪縛の効果を、想像力と話術で一致させることができた場合、魔法を発動させて、汚染された場所を「透色(すきいろ)」に変えることができます。一致できたかどうかは、語り部が決定します。魔法使いはそれ以外、普通の人間と変わりません。
・透色になった混沌の呪縛は、魔法風景として魔法使いのうちに取り込まれます(「所有する魔法風景」に書き込んでください)。語り部が許可すれば、顔ステータスか体ステータスのどちらかの、表の風景か真の風景のどちらかに入れ込むこともできます。なお、取り込んだ魔法風景は、クエストの目的を解決するために、語り部が許可すれば解き放つことができます。効果は魔法使いと語り部が話し合って決めますが、最終的な決定の権限は語り手にあるものとします。
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