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“隻腕”クライマーのパラクライミングTALK⑮

片腕のクライマー・大沼和彦が主催する、パラクライマーたちによるインスタライブ。日曜日の夜に不定期でゆる~く開催。悪ふざけだったり、パラクライミングへの熱い思いだったりが繰り広げられています。

今回は、大会のルール変更や、選手の世代交代について語り合いました。


▼今晩のお相手は…

安良岡伸浩 選手(RP3)
ビーチこと濱之上文哉 選手(B2)
大谷武彦 選手(AU1)

▼新クラス“AU3”誕生!?

大沼:今度、“AU3”が新しくできて、安良岡さんのクラスが、RP3から、もしかしたら変わるかもしれない。
(※AUは上肢機能障害クラス。これまで、AU1とAU2があった)

安良岡:AU3は、指が3本ないか、指2本が手の根元からないか、のどっちか。

大沼:もともと、手の関節があると、AU2としては成立しなくなっちゃうということで、安良岡さんは、RP3に行ったんですよね?

事故による右手指の欠損がある安良岡選手

安良岡:AU2は、前腕部までの切断。肘を使えるとか、ガバに肘をひっかけて登るとかができたら、AU2で登録もできると思う。

大沼:海外には、肘だけでぶら下がる人がいました。大谷さん、AU2で一緒に頑張りますか!

安良岡:でもAU1が、RP1に行く可能性もある。大沼さんや、大谷さんが、岡田卓也さんと同じRP1になったら、あと1人で、クラス成立するんじゃん。
(※国内大会では、4選手以上の参加がクラス成立の条件)

右半身にマヒがある岡田選手

大沼:AU2ならまだしも、もしRP1になるとしたら、ちょっと不安ですね。RP1の人って、結構、指を使えるじゃないですか。

安良岡:海外の選手には、お前、本当にRP1かっていう人いますからね。
大沼さんといえば、足技。大沼さんを見ていると、RP2でもいいんじゃないかって思っちゃうけどね。

大沼:傾斜のある課題になると、不利な状況になっちゃうんじゃないかなと思ってるんですけど、そこはパワーでねじ伏せなきゃなって思ってはいますが。

去年のワールドカップで金メダルを獲得した大沼選手(AU1)

ビーチ:AU3は、国際的には成立する見込みはあるの?

安良岡:国際的には成立するんじゃないですか。僕の出た世界選手権のロシア大会では、RP3の選手は、足の障害と、手の障害、それぞれいた。手に関しては、関節の可動域の問題だった。そういう選手も、AU3に含まれるんじゃないかな。

安良岡:クラスが変わっちゃうかもしれないんで、高野正さん(RP3)を負かす機会がなくなっちゃう…でも、RP3とAU3がマージされたりする可能性もあるか。

左足首の可動域に障害のある高野選手(PR3)安良岡選手とは、毎回、優勝を争うライバル

安良岡:これから数年間は、クラスの変更は出てくるんだろうな。ロシア大会のとき、「来年もう1回クラス分け受けてね」っていう通知が来てたんですよ。進行性だったりだとか、薬を使うことで症状が変わったりというわけでもなく、症状が固定されてるわけじゃないですか。どうして、もう1回クラス分けを受けてねって言うのかなって。だから、絶対、クラス編成が出てくるなと思っていた。

ビーチ:視覚障害も、全クラス(B1~B3)が統合される可能性もあるかもしれない。
新しいクラスができることで、フェアな部分が強まる要素もあるけど、それができたからといって、選手が増えるかというと、そうではなくて、逆に、クラス成立が遠のく部分もある。ただでさえ、選手は集まってないわけだから。

▼ことしのW杯、世界選手権は?

大沼:大谷さんは、世界選手権とワールドカップは全部出る予定ですか?

大谷:正直ちょっと迷ってるんですよね。お金の問題で…

大沼:ビーチさんは、ワールドカップと世界選手権も全部出る?

ビーチ:一応そのつもりで、準備は淡々と。

大沼:僕は行けないみたいです… ワールドカップで金メダルを取ると、シード権がもらえるって話があったが、日本の独自ルールだったみたいで。IFSC(国際スポーツクライミング連盟)のルールでは、去年、金メダルを取っていても、今年、出場できるわけではないみたいです。

安良岡:IFSCには、指名選手みたいな選考基準があって、それに選ばれていないとシード権を得られない。

ビーチ:誰が選ばれるかよくわからない。世界選手権5連覇の會田祥くん(B1)でも選ばれていないので。

會田祥 選手

▼世代交代について

安良岡:ここ数年の、パラクライミングを見ていても、グレード感がどんどん上がっていて、確実に選手の実力が上がってくのを感じてる。みんなでワイワイ登るのもいいんだけど、ピりついた感じも欲しい。
国内の代表戦では、複数のクラスをマージしてもいいなと思っていて。個別のカテゴリーの、代表選手の選定は日本パラクライミング協会に委託するとして、大会自体は複数のクラスを1つにマージしてやるっていうのは、ありじゃないかな。1つのクラスを、1人2人より、多くの選手で競い合える環境があってもいいんじゃないかな。

ビーチ:それで、若い子が出てきて淘汰されていっても、それは自然現象というか、至極当然の話。我々より後に来る人たちは、当然、我々の登りをお手本にしていて、ショートカットしてトレーニングができる。
俺も、小林幸一郎さん(B1)が、NPO法人モンキーマジックの活動の中で、視覚障害者がふつうに一般のクライミングジムに行って登れるのが、当たり前だったところからスタートできた。社会的な環境もいろいろあるから、一概に、競技性とか、才能とか、そういうものの差だけでは測れない。

B1クラスの小林選手 前回大会での引退を表明した

大沼:安良岡さんは、まだ抜かれることはないでしょう、きっと。

安良岡:一瞬で抜かれると思いますよ。RP3のポテンシャルってすごいよ。

(了)

▼障害別クラス分けについてはこちらの記事を↓

▼“パラクライマー”大沼和彦【日曜日のインスタライブ】23年3/12

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