“隻腕”クライマーのパラクライミングTALK③
片腕のクライマー・大沼和彦が主催する、パラクライマーたちによるインスタライブ。日曜日の夜に不定期でゆる~く開催。悪ふざけだったり、パラクライミングへの熱い思いだったりが繰り広げられています。
今回は、ふだんのトレーニング方法について語り合いました。
▼“鯉のぼり”ができても体幹が弱い!?
大沼和彦(AU1):どれくらい練習してます?
高野正(RP3):仕事終わって3時間くらい登る。
大沼:最寄りのジムは実家から近いが、よく行くジムは車で片道1時間。そこで2時間くらい登る。
高野:あんまり登ると体がぶっ壊れてしまう。週5~6日で登っていたが、それだと体が壊れる。肘とか肩とかいっちゃう。
大沼:登る以外にトレーニングは?
高野:前回のジャパンシリーズ秦野大会で、腕は張ってなかったが、フットホールドが下を向いていたでしょ。めちゃくちゃ悪かった。あれって体幹で支えている。そうすると体がよれてくる。腕は生きていたけれど、体がヨレて落ちた。
大沼:持ち手はそんなに悪そうじゃなかった。
高野:カチだったんで、悪いは悪かったがプッシュして足を上げていかないといけない。 その時点で体がよれていた。体幹が弱いんだなと思った。
大沼:鯉のぼりとかやってる高野さんの体幹が弱いなんて信じられない。
高野:それがボディブローのように効いてきて。だからいまは体幹トレーニングをやっている。
大沼:自分もプランクやってみたが12分で限界だった。
高野:大沼くんは片手だから大変だよ。俺もプランク基本で、ほかにいろいろな形をやってる。体幹のスタミナが必要。
大内秀之(AL1):ケガはしていない?俺は右手の薬指がパキッとしてる。中指と薬指をテーピングして登っている。
大沼:頭がおかしいだけでケガはしてない(笑)
高野:大きな筋肉が使えてないのでは。
大内:指懸垂してたら、いっちゃった。やり過ぎたらあかん。
大沼:3本が限界。
高野:中指1本で行けますよ。片手懸垂もいけます。
大内:片手懸垂はどうしたらいいの?
高野:コツはある。中心に持っていくとけっこうできる。
大沼:中心に持っていって脇をしめる。大内さん、コンペで登っているとき、たまに片手懸垂みたいになりませんか?手首を持って。
大内:手首を持ったらそれって両手で懸垂するのと同じになる。余裕。
大沼:胸筋は鍛えたりしていますか?
大内:キャンパする時は胸筋の方が使う。背筋は筋肉痛にならん。
大沼:胸筋を鍛えておくと引きつけるときにグッと力が入れられる。
▼上腕二頭筋に何個、大福いれてるん?
大内:大阪バムに、12.5mある壁があって、そこを5月のアメリカ・ソルトレイクシティのワールドカップまでに完登するのを目指している。でもアンダーがあってキャンパだとめっちゃきつい。いま二頭筋を鍛えていて。二頭筋頼みで一瞬でガッといく。
高野:二頭筋を鍛えておくと有効。レストするときに、手首にひっかけて上腕二頭筋で支える。前腕の筋肉を使わない。よく使ってる。
大内:上腕二頭筋に何個、大福いれてるん(笑)
大沼:鏡餅みたいになってる(笑)
大内:いろいろ勉強したところで明日からのトレーニングにいかします。
大沼:大内さんがいろいろできるようになったら最強ですよね。
大内:まだまだ試行錯誤せんと。無理したらあかん。ケガとの兼ね合いが第一。
大沼:自分もひとつのことだけトレーニングするというより、筋肉を使うトレーニングを複数やって、足りない部分を慣れさせるように鍛える。
高野:あと、あの高さに慣れていない。
大沼:上の方に行くと足腰が効かなくなってくる。
高野:10mを超えると途端にきつくなってくる。
大沼:6月のオーストリア・インスブルックでのワールドカップはやっぱり10m以上あるでしょうね。
▼“パラクライミングのTシャツ”があったらで着たい
大沼:前々回のフランス・ブリアンソンでの世界選手権では、AU1とAU2が統合されてしまった。インスブルック大会はどうなるだろう。
高野:ヨーロッパだし人は集まるじゃない?
大沼:ブリアンソン大会のときは、スペインにAU1は1人だけ。RP3は?
高野:俺のクラスは大体成立している。RP3で20人くらいいる。
大沼:RP3は激強のイメージがある。
高野:強い人が入ってくれるっていうのがいいよね。
大沼:ブリアンソン大会は出しきれなかった。
高野:雰囲気に飲まれた。国際大会は初めてだったから。
大沼:楽しかったが、いざ登り始めると何も考えられなくなっちゃった。余裕がないというか。
高野:ブリアンソン大会の後はコンペにいろいろ出るようになった。
大沼:コンペには出たいがなかなか自信がない。というか結果を気にしてしまうので、出るのをためらってしまう。
高野:クラスをひとつ下げてビギナークラスなんかで出てみる。俺なんかは実力で言えばマスタークラスに行ってもいいんだけれど。そうすると左足を使わないと攻略できないルートが出てきてしまう。そうすると不可能になってしまう。あえてミドルクラスに出て足を使わずに、力でねじ伏せられるクラスに出る。ちょっと申し訳ないと思うが。前に出たコンペでルートが全部左だった(※高野選手は手術の影響で左足首が曲がらない・力が入らない)。手も足も出なかった。俺を殺しに来たのかなーって(笑)こうなっちゃうと力ではねじ伏せようがない。
大沼:コンペに参加したいな。
高野:俺がパラ選手だっていうのはみんな分かっていないと思う。終わった後に「そうだったんですか!?」っていうパターンが多い。パラクライミングのTシャツがあったらで着てコンペに出たい。
大沼:僕の場合は、片手なので分かりやすい。知り合いの店長さんにTシャツを作ってもらった。「全部デッド」って書いてある(笑)
高野:結城周平くん(AL2)なんかも、足がないから分かりやすい。
大沼:いろいろなジムを遠征していて、結城さん、なんかめちゃくちゃ強いクライマーとして有名になってる。
高野:この間、結城くんとジムで一緒になったけれど、片手でピンチとか半端ねえ、尋常じゃない。化け物だよ。
高野:俺の場合、足がくっついちゃってるから。半ズボンで登らないと分からない。でも、そうすると傷口がいっぱいあるから気持ちいいもんじゃない。人にはあまり見せたくない。足の太さが全然違う。放射線治療も行っていたから、傷口がふさがらなくて。
(了)
▼障害別クラス分けについてはこちらの記事を↓
▼“パラクライマー”大沼和彦【日曜日のインスタライブ】22年4/10
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