いつかきた未知( 後編 )
僕は大学を卒業し、奈良で仕事をし、結婚し、大阪で仕事をし、離婚し、傷つけ傷ついて帰省。
弟と妹、そして両親に協力してもらい、実家でパソコン教室を起業することになりました。大きな借金を抱えながらも、なんとかうまくいったのは弟が社長になってくれて矢面に立ち、妹が僕らの頭脳になってくれたおかげです。
起業から9 年後、会社は低空ながらもなんとか安定飛行に移り、僕は38 歳になっていました。
「一途」の結成
2008 年の春、兄妹で音楽バンドの「 一途(いちず)」を結成。
テーマは、いじめ撲滅、自殺防止、夢の叶え方。これらを歌とトークで伝えるボランティア活動がクチコミを呼び、結成から3 年後には年間120 回ペースで学校コンサートを開催するようになっていました。
そんなある日、小学校で演奏をしているときに、ふと頭をよぎったのは山川先生の姿です。
「いま僕はまさに『子どもたちを笑顔にしたい』という中学時代の夢を叶えているんだ。ああ、山川先生。いつかこのコンサートを見てもらいたいな。。。」
大反響で盛り上がったコンサートが終わり、心地よい疲労感とともにみんなで体育館ステージの後片付けをしている最中、僕の背中を心地よくパーンと叩く人がいました。
驚いて振り向くと、見た目は少し小さくなったけど、間違いなくあの山川先生が立っています。
「元気?」
僕は一瞬、刻が止まったのを感じました。そして、
「うそ! 山川先生? 山川先生だああああっ!」
と絶叫し、瞬時に号泣。
思わず先生を抱きしめてしまいました。
「先生、会いたかった! 先生のおかげで、今の僕があります! ありがとうございまじだああああ!」
僕のうわずった声が体育館に反響しまくって聞き取りにくかったと思いますが、やっと、やっとお礼が言えた瞬間です。先生はこの日、近所で僕たちの小学校コンサートがあることを耳にし、お友達を誘って観に来てくれたとのこと。
僕は高校の間宮先生からの伝言「約束は守りました」というメッセージも伝えました。先生は、うんうん。とうなずき、笑顔で涙ぐみながら、僕の肩を抱いて、先生が連れてきたお友達の皆さんに僕を紹介してくれました。大きな声で。
「この子が私の自慢の生徒です。この子は、私の自慢の生徒。中学の時の、教え子。私の自慢!」
私の自慢、と何度もおっしゃってくれて、恥ずかしくて嬉しくて。また涙。
さらに先生は本当に嬉しそうに、先生のお友達に僕の経歴を紹介してくださいました。僕が地元に帰ってくるまで大学はどこで、仕事は奈良で、その奈良から大阪に行き、仕事は何をしていて、今なぜ一途という活動をしているかを。
衝撃の言葉
「先生、そんな詳しい僕の経歴、どこで知ったんですか?」
と聞くと、先生は笑って、
「あなたのことはいつでも見てますよ。あなたはこの社会を明るくする光ですから。どこからでも見えるんです。これからもどんどん輝きなさい!」
僕はこの言葉を聞いて鳥肌が立ちました。
実は一途を結成する前に、このセリフはそのまんま、ある場所ですでに聞いていたからです。不思議な気持ちと胸いっぱいの感動が入り混じって涙が止まらない僕の背中を、山川先生はまたパーンと威勢よく叩いてくれました。
ちなみにこの先生だけは、絶対に体罰をしませんでした。当時はどの先生も体罰を正当化していましたが、山川先生だけは、どんなに生徒が道にそれても、言葉の力を信じていました。今思うと、言霊というものを信じていたのですね。相手が理解できるまで、根気強く教え諭した人でした。
振り返ってみると、小学校、中学校、高校と、深く学ばせていただいた恩師は皆、国語の先生だったことが僕にとってはありがたい奇跡でした。人生が「言葉」というキーワードで全て繋がっていたのです。
いまこうやって自然におりられる毎日になって、その言葉の学びを活かし、メッセージを人々に丁寧に伝え遺していくことが自分の役割なのだと改めて強く思います。
とはいえ、僕も人間。聖人君子とは程遠い存在です。
気持ちも弱くなるし、萎えるし、飽きてしまったり、やけっぱちになり、ふてくされて、やさぐれます。きっと神様からみたら、どうしようもない間の抜けたおバカではありますが、なぜか愛していただけることがあるのです。
ではいよいよ、僕におりてくれる神様との出会いに話が進みます。
神様との出会い
ちょっと時間を巻き戻します。
一途を結成する半年ほど前の出来事です。
その日僕は、人と喧嘩して、チックショー! と思いながらふてくされて、好きな音楽を聴きながら車でフラフラと走っていました。どこに行くあてもなく、ぼーっとしながら、とにかく心を落ち着けようとしたのです。
そうだ、海に向かおう。
そう思い、山越えの道を走っているところで突然、かけていた音楽が止まりました。ラジオではなく、CDなのに。あれ? おかしいな。壊れたのかな? と思っていると、声が聞こえました。
「右へ曲がれ。」
え? っと思いながら、思わずハンドルを右に切りました。スピーカーから聞こえる声ではなく、脳内に響く、透き通る声です。こんな声は今まで聞いたことがありません。
「まっすぐ進み、左に向かってカーブがある。」
確かにカーブだ。と思いながら、脳内の声ナビを頼りに走ります。
しばらく走ると今度は、
「右を見よ。」
と言われて一瞬見た風景は、緑色の草の中に100 mほどの階段が伸び、晴天の中に聳える神社の姿でした。
少し通り過ぎてしまった僕は急ブレーキをかけて、バックし、車から降り立ちました。
その時、びゅっと風が吹いて、緑の草花が一斉に揺れました。
「登れ。」
そう言われて、僕はドキドキしながら階段を登りました。
この声、誰なんだ?
いつも聞こえてくる霊的な怒鳴り声とは全く違います。その声の凛とした厳しさと、何度も修羅場をくぐり抜けてきたであろう落ち着いた雰囲気の喋り方は、まるで神様? と思えるような煌めきがありました。
「八幡神社」と書かれた鳥居を一礼してくぐり、声に導かれて長い階段を登りきります。御社を前にするとそこには相当古い木製の狛犬が置いてありました。それにも圧倒的な雰囲気を感じます。
「後ろに周れ。」
という声に従って拝殿の後ろに回ると、さらに古びた本殿が鎮座しています。
「ご挨拶を先に。」
とのことなので、自分の素性と生かされている感謝を述べました。すると、
「では、下に降りて探しなさい。」
と言われ、ここで初めて僕は質問しました。
探しものはなんですか?
「下とはどこまでですか? 何を探せばいいんですか?」
でも、その答えは出てきません。
しょうがないので拝殿まで降り、そこから階段を降りようとしたその時、
「戻れ。石垣の間を探せ。」
と声がしました。
石垣の間に何があるのか、僕は聞いてはいけない気がして「わかりました」と言って探し始めました。落ちていた小枝を使って、枯れ葉をどかし、石垣の間に詰まっているゴミを少しずつ綺麗にしていく作業をしばらく続けましたが、何も見つかりません。
かなりの時間、探し続けましたが、やはり何もないのです。
僕は焦り始めました。この声の主は、僕を使って遊んでいるのではないだろうか。僕は、ただ踊らされているだけなのではないだろうか。
その瞬間、
「汚れることを厭うなかれ。お前の探し方は、本気ではない。」
そうはっきり言われました。確かに、小枝を使って石垣の間を、まるで歯間ブラシで歯を磨くようにシュシュッとこそげ落としているだけでした。だって、手や爪が汚れちゃうんだもの。
しかし意を決した僕は、小枝を投げ捨て、袖をめくりあげました。そして両手を使い、石垣の間を覗き込みながら、蜘蛛の巣も、汚れも、溜まった土なども素手で剥がしていきました。
「そこだ。」
と一際大きな声で聞こえたその瞬間、小さく丸まった状態の昔の壱万円札が出てきました。
「うひゃあ・・・。」
僕は、出てきたものの意外さよりも、声の主がこの場所に導き、僕を動かし、この世の遺物を見せたことに大きな意図を感じて驚愕しました。
お前は正しい道を選ぶ
僕:「これをどうしろと?」
神様:「どうとでもせよ。」
僕:「持って帰ってもいいと?」
神様:「お前は正しい道を選ぶ。」
とは言ってくれますが、僕は少し天邪鬼(あまのじゃく)なところがありますので、この声の主に反発してみたくなりました。
僕:「僕はこれを使っちゃいますよ?」
神様:「使えば良い。」
僕:「じゃ、宝くじを買います。あなたが神様なら、これを大きく当てて、僕の正しい道だと思う報告に導いてください。」
神様:「やってみなさい。」
そう言われて僕は階段を駆け下り、車に戻りました。
そして40 分ほど走ったショッピングモールの宝くじ売り場で、削ればすぐに結果がわかるスピードくじに1 万円を投資。
売り場のお姉さまに「当たりますように〜」と両手で手渡されたくじをドキドキしながらスクラッチしてみると、なんと 1 万円と1,000 円の当選。
収支は1,000 円のプラスとなりました。
僕はまたすぐに神社に戻り、お賽銭箱に1 万円を入れ、1,000 円を自分のお小遣いにさせていただきました。
これが僕への報酬だったとすると、僕がこれからこの声に従って行動を起こしたことには、報酬があることになります。となると、この1,000 円は有効に活用しないと、よくないことが起きそうです。
この声とともに
思えば僕は、ここで神様と契約したのです。
これから、この声とともに生きようと思いました。まさに現金な話ですが、この声は信用するに足りると、僕は強く感じたのです。
お名前もそこで教えてもらいましたが発音が難しいので、この神社の名前「八幡様(はちまんさま)」と呼んで良いですか? と聞くと、問題ないとのお答え。
気がつけば、日はもう傾きはじめています。夕陽が本殿を照らし始めた時、八幡様は言いました。
八幡様:「お前たちは、社会を明るくする光となれ。」
僕:「社会を明るく?」
八幡様:「言葉の力で、思いの力で、泣いている人々の希望になれ。」
僕:「僕になれますか?」
八幡様:「お前はこれから何度も召されることになる。」
僕:「召される? 天に? ですか? 死んじゃうってことですか?」
八幡様:「頼みがある。生きて、この世を照らせ。非難の誹り(そしり)は受けて立て。」
僕:「ええー! 非難されるのは嫌です。。。」
八幡様:「命は、都度救われる。数えて3 つ。乗り越えよ。」
僕:「3 回も死にかけるんですか!!!」
八幡様:「お前の透明な感性で、それを言葉にせよ。私たちを動かせる。」
突飛な情報量があまりに多すぎて、僕の頭の中は完全にパニックです。
僕:「透明な感性? 『それ』ってなんですか? あと『私たち』って、誰と誰のことでしょう? ていうか、さっき『お前たち』って言いましたよね?」
八幡様:「お前のことはいつでも見ている。お前はこの社会を明るくする光。私たちは、どこからでも見えている。汚れた膜がない透明さはその輝きを私たちに直接届けてくれている。濁るな。汚すな。穢れるな。そのまま、お前は生きよ。」
お前はこの社会を明るくする光。その言葉を聞いた僕はなぜか自然と涙がこぼれ、頭を深く下げました。
愛に囲まれて
僕は涙が流れるにまかせ、夕焼け空を見上げて深呼吸をしました。神社を見やると、西陽が屋根の上から差し込んできて、風に揺れる草たちをやさしく撫でています。
キラキラと光り輝く葉っぱが、涙で濡れた目にはクネクネと曲がって見えます。そこで僕はハッとしました。この風景はかつて、小学校の渡り廊下で見た「緑のグジョグジョ」です。
ああ、僕はこのシーンを見ていたのか。。。
なんとも言えない満たされた気持ちで目を閉じると、僕がいままで歩んできた道と、僕と出会い、愛してくれた人々の顔が浮かびます。
すると突然、小学校の時に会えなくなってしまった高野くんの声がはっきりと聞こえてきたのには驚きました。
高野くん:「こうちゃん。」
僕:「高野くん!」
高野くん:「俺がこうちゃんを教室の中に入れてやるから。」
僕:「あの時はありがとう。高野くんのおかげで、僕は今をなんとか生きてるよ。」
高野くん:「うん。今度は俺が、こうちゃんを外に出してやるからな。存分にやりなよ。」
僕:「外って?」
高野くん:「こっちまで来れるようにするからさ。」
僕:「こっちって? まさか! 死んじゃったの?」
高野くん:「俺は死んでないよ。まずは、10 年耐え・・・」
そこで声は突然消えて、陽も落ちて、あたりは暗くなっていました。
空には星が一つ。紫色の空に、飛行機雲の名残が一本。
すると今度は、高校の担任だった間宮先生の声が響きました。
間宮先生:「3 年連続の担任は本当はダメだったけど、押し切ったからね。」
僕:「間宮先生! 3 年間ずっと支えてくれて、ありがとうございます。」
間宮先生:「あなたがいたから、私はここにくることを選びました。」
僕:「はい、その言葉嬉しかったです。1 年生のキャンプの時もそう言ってくださいましたよね。学校の反対を押し切ってのクラスキャンプ。」
間宮先生:「そう。あなたに伝えたかった。大自然の中で聞こえる声はサインだらけだってこと。」
僕:「僕は今、そのサインを受け取っています。キャンプ場で『あなたがいたから、これを企画したのよ』っておっしゃってくれたことも、忘れません。」
間宮先生:「山川先生からの言葉に撃ち抜かれたのは、あなただけではなかったのよ。私が一番感動したの。愛の言葉の中にある、本気。あなたを合格させてほしいという気持ちが溢れていた。長い間教師をやっていて、内申書にあんな文章が書いてある人はあなただけでした。」
僕:「そ、そうだったんですね。なんか、恥ずかしい。でも、やっぱり本気がないと、だめなんですね。」
間宮先生:「そうよ。でも本気でやり続けることは苦しいの。身体の疲弊もあるし、心を蝕むこともあるでしょう。本当にだめな時は、一旦やめたっていい。でも、あなたが社会の光になるまで、止めることはできない流れがあるの。」
僕:「やります。」
八幡様:「約束できるか?」
僕:「びっくりした! あの声だ。え? もしかして今までの声は、全部あなたが?」
八幡様:「お前の本気を、信じていいのか?」
僕:「はい、本気でやります。ただ、難しい時は、ごめんなさい。できるのかな。。。まだよくわかってませんが、やらなければならないことはわかります。育てていただいた皆様へ、恩返しをすることですよね。本当に未熟者ですが、色々教えてください。がんばります。」
それからの僕
その後すぐ、僕は弟、そして妹にすべてを話す機会を得て、これからのことを3 人で話し合い、まずはブログ「僕のアニキは神様とお話ができます」をたちあげました。
それと時をほぼ同じくして、仲間の力添えもいただき、3 兄妹バンド「一途(いちず)」を結成することになります。
そしてそれから数年後、冒頭の山川先生との再会と、まさかの八幡様と同じセリフにつながっていくのです。
思えばこの八幡神社における神様との不思議な出会いが、僕の人生を大きく旋回させるきっかけとなりました。感謝でいっぱいです。が、ここでひとつだけ言わせてください。
八幡様は僕に対し、激烈なるスパルタ先生でした。
ただでさえおバカな僕は別世界のお話にまったくついていくことができず、理解することも間に合わず、負担がかかりまくり、体を壊し、バチも当たり、死線を彷徨ったことも数回。
ただ、おかげさまで今は病気もほとんどが寛解し、健康状態はすこぶる良い状態です。
八幡様はいまも相変わらず僕だけには厳しいですが、僕に繋がってくださる方々にはとても優しく、紳士的です。今後、このマガジンを通して繋がってくださる皆様とは、なにかしらのサロン? を作れるくらい、八幡様と仲が良くなる気がしています。
今までのようにご質問にお答えして終わり、の関係ではなく、今後の皆様の奇跡の軌跡も追跡させていただき、さらに濃い人生を一緒に歩んでいけたら嬉しいなあ、なんてことを夢見ているおりられオジさんです。
それでは最後に、僕の八幡様を、開放いたします。
皆様の元へ、飛んで行けーー!!!
おわりに
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
2 話に渡ってお送りしましたが、いかがだったでしょうか?
ありがたいことに、前編で早速コメントをいくつかいただいたのですが、僕はその中の「くまちゃんは受け取り上手」というお言葉に、なるほど! と大ガッテンしてしまいました。
たしかにそうか。僕は受け取り上手だったんだ。。。またひとつ新しい自分の発見をいただきました。ありがとうございます!
さて、これからこのマガジンでも神様のことは「八幡様」とお呼びしていこうと思います。二人(?)とスタッフで引き続き精一杯頑張ってまいりますので、改めて、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
いつも「スキ!」をいただくたび、心があったかあくなります。もし可能であれば、ご感想など、コメントもいただけたらますます心の温活ができて嬉しいです。
では、次回。
明日の朝6 時にお愛しましょう♡
ここから先は
KAMI ing out マガジン
「僕のアニキは神様とお話ができます」「サイン」の著者、アニキ(くまちゃん)が執筆。天性のおりられ体質を活用し、神様からのメッセージを届けま…
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