オリックスの捕手起用に関する一考察
みなさんこんにちは、いっちです。
先日公開した「福田周平はなぜ一軍昇格が遠かったのか」というnoteへのリアクションとしてこのようなリプライを頂いたので、まず共有したいと思います。
「(先程のnoteで書いたように)中長期的な視野を持って今シーズンを戦っているオリックスが、伏見を捕手で使うのは非合理ではないか」との指摘です。
今回はこれについて私なりの考察を簡単に述べていきたいと思います。
伏見寅威という男
伏見寅威は先日31歳を迎えたプロ9年目の捕手で、昨季も結果を残した打撃力と、投手を引っ張る強気のリード、前向きな性格というようにチームに欠かせない存在です。
通算成績(プロ入り〜21/5/13)は
273試合 142安打 10本 55打点 OPS.641
という感じで、2018年には捕手だけでなく一塁手としても試合に出場していました。
ここでライバルである若月選手を見てみると
528試合 266安打 6本 106打点 OPS.539
という数字を残しており、
打撃面では伏見の方がリードしているものの、出場試合数は若月の方が断然上です。
これを踏まえて次の章からの考察に入ります。
オリックスの捕手起用
今季オリックスで捕手として出場しているのは開幕から一貫して頓宮裕真、伏見寅威、若月健矢の3選手のみになっています。
出場試合数と成績は以下の通りです
最も出場機会を与えられている頓宮が打撃で存在感を示し、
伏見がそれに次ぐ出場数、
若月は試合数と先発出場の差から分かるようにバックアップ要員と考えて良いでしょう。
なぜ打撃が低迷気味の伏見が少ないチャンスで結果を残している若月よりも優先してスタメンに起用されるのか、その理由をまとめると
①打席数がまだ十分に与えられていない
②若月を先発出場させる際のリスク
③瞬間的にアドバンテージになる年齢
この3つが挙げられます。次の章から詳細に解説していきましょう。
理由①-中嶋監督のチーム方針-
先日公開した先日公開した「福田周平はなぜ一軍昇格が遠かったのか」というnoteでも書いたように、中嶋監督をはじめとする首脳陣は中長期的な視野を持った上でペナントレースを戦っています。だからこそ一軍で実績のある福田周平を二軍に降格させ、太田や紅林らプロスペクトには競争をさせずに一軍で起用し続け、中川や佐野、宗といった中堅に差し掛かる選手を一軍で「今後の戦力になるかどうか」試したのです。
先日5月12日で31歳の誕生日を迎えた伏見もまた中川らと同じく「ふるいにかけられている中堅」の立場であると考えても良いでしょう。したがってシーズン序盤で伏見が出場機会を多く与えられているのも、「見極め」でありそれに応える必要があります。
ではどれくらいの機会が与えられるのか、椅子が一つしかない捕手と複数ある他の野手とでは難しい比較になりますが、参考程度に考えていきましょう。
これは福田のnoteでも用いた、開幕から福田が一軍に復帰するまでの間で彼と同じポジションの選手がどれくらいの出場機会を与えられ、どのような結果を残したかをまとめた表です。これに加えてここ最近のスタメンからも考えると
・特に起用の優先度が高い太田と紅林は100打席に立ち、紅林は攻守である程度の結果を残したが攻守に精彩を欠いた太田はここ最近スタメン落ちが目立つ
・優先度が上記の2人ほど高くなかった中川、佐野、宗については70打席で佐野が代走と守備要員に降格、中川と宗は100打席で結果を残しレギュラー残留
というイメージが掴めるでしょう。
捕手争いにもこの見方を当てはめると、
・24歳3年目の頓宮をプロスペクトとして優先的に起用し、守備では課題がある一方、打撃では規定打席に未到達ながらパリーグ内でも屈指の長打力を発揮している。
・31歳でこれまで出場機会が少なかった伏見には昨季後半から多くの機会が与えられ、打撃では低迷が見られるがまだ59打席と決断を下すには早いため戦力になるかどうかの見極めが行われている最中である。
・25歳8年目の若月は昨季まで多くの試合でマスクを被ったという実績があり、実力はある程度把握されているため、現在優先してスタメンにする必要性が低い。
という状況が伝わるかと思います。
補論になりますが、ここで注意したいのが捕手の守備負担の高さとポジションが1つしかない特異性です。
それぞれに求められる資質が違いますが内野手ならポジションが4つ、外野手は3つと複数あるのでそのうちの1つか2つを育成に割くのは難しい話ではないでしょう。しかし捕手は1つだけしかなく、また守備負担が一般的には他に比べてとても高いのです。
つまり、定期的にメインの捕手を休ませる必要性が高いということです。これにより伏見は多くの出場機会を得ていたとも言えます。
よってチーム方針の観点から伏見が優先的に起用される理由は主に
①中堅として戦力化の見極め期間であること
②頓宮の守備負担の軽減が目的の一端にあること
③「実力の明白さ」でいうと若月>伏見であること
この3つが挙げられます。
理由②-若月の強み-
ではなぜ若月がスタメンで使われないのか、その観点から考察していきたいと思います。
若月の武器はなんといっても盗塁阻止率リーグ1位に輝いたこともある強肩と、ワンバウンドのボールでもしっかり前で受け止めるブロッキング技術、そして出場試合数に裏打ちされた経験値の高さでしょう。
一方アマチュア時代から定評があった打撃面に関しては守備負担の高さからか精彩を欠く打撃が目立ちましたが、昨季の前半は好調で3割に迫る打率と長打力を発揮していました。しかし開幕して1ヶ月半が経過すると打撃に陰りが見られたように、守備負担によるムラが大きいタイプと考えられます。
言わば若月は守備のスペシャリストであり今のオリックスでは松井雅人に並んで頼れる捕手です。
その若月が一番輝ける場所は、リードが難しい投手の先発時や抑え捕手でしょう。ブルペンデーとなった3/14の西武戦ではスタメンマスクを被り、合計10人の投手をリードし西武打線を0点に抑えたのは見事でした。
またオリックスは先発投手はとても充実する一方でリリーフ陣は強いとは言いづらく、試合の前半と後半で捕手に求められる技量の差がとても大きいのです。
つまり前半は打撃面で優れる頓宮や伏見にマスクを任せ、捕手としての技量が必要になる終盤は若月に交代させ逃げ切る。
という運用が理想と言えるでしょう。
理由③-立場の逆流現象-
ここでもう一度例のツイートを見てみましょう
25歳の若月と31歳の伏見、将来性を考えてちるチームで伏見を優先的に使うのは一見するとセオリーに反してるように見えますが、将来を見据えているからこそ年齢の逆転現象が起こっているとも考えられ、この章では理由①の補論的な記述になりますが説明していきます。
ここまで述べてきたように、数年後を見据えたチーム作りをしている現在やるべきことは若手の育成と共に現有戦力の見定めです。
福田周平や若月はこれまで多くの試合に出ることで首脳陣から「これくらいはやれるだろう」という評価を受けているように思えますが、伏見に関しては昨季の71試合と2018年の76試合がキャリアハイと言って良い年で、それ以外の年は2019年の39試合が最多になっているように、まだ十分な計算が立っていないのです。
ここで伏見が捕手として戦力の一角になることをアピールできれば若月や頓宮らの負担が軽減できる貴重な存在になり、また相性が良いとされている山﨑福也をローテで起用しやすいというメリットが確認できます。
つまり年齢も31でアキレス腱の古傷もあり、今後捕手として戦えるかどうかの瀬戸際にいる伏見の捕手を試せるの時は今しかないのです。
だからこそ、まだ未来が残されている若月に比べて年齢が高い分優遇されるという年齢の逆流現象がオリックスの捕手に於いても起こっているのです。
終わりに
ここまで読んでいただいて、いかがでしたでしょうか。
論争が起こりやすい捕手の話題で書くことには自分の中で少しばかり抵抗がありましたが、文章化し自分なりに論理的に組み立てることで皆さんの中にある蟠りを少しでも解消できれば、と思っています。
もちろんこれに対して、違うんじゃないかという意見ももちろん存在しますし、リプライやコメントでそういった声を聞かせていただけると幸いです。
ではこの辺で締めたいと思います。読んでいただき、ありがとうございました。