ドラマ『裸の街』と87分署シリーズ
海外の警察小説として有名なものに、エド・マクベインの87分署シリーズがあります。
これはアメリカにある架空の街アイソラを舞台に、その街の警察署(87分署)に勤める刑事たちの日々を描いた物語です。
警察小説と推理小説の違いについては、あとで書きます。
私がこのシリーズを知ったのは、高校生の時でした。
それも原作小説でなく、テレビドラマでです。
それが『87分署シリーズ 裸の街』でした。
主演は古谷一行さんで、舞台を横浜に移してのドラマ化でした。
古谷一行さんは、もともとわりと好きな俳優さんでしたし、恋人役の坂口良子さんも好きな女優さんでした。
エンディングを歌っているのが、町田義人さんというところにも惹き付けられ、ドラマ全体の雰囲気も好きで、毎週見るようになりました。
それで、原作にも興味を持って、そちらも読み始めたというわけです。
ただこの当時は今のようにインターネットがなく、またドラマも一般的な刑事ドラマに較べると地味だったためか、原作小説が書店に平積みにされるというようなこともなくて、手に入れるのが大変でした。
学校の図書館を利用する手もありましたが、好きな作品は手元に置いておきたくなるのがファンの心理というものです。
図書館で借りて読んだものでも、書店で探したり……ということもよくありました。
ともあれ、原作を読んでみると、ドラマのキャストやネーミング、登場人物たちの性格が、本当に上手に日本のドラマとして落とし込まれているなあと思いました。
ドラマの内容そのものも、上手に原作を使っていましたし、オリジナルな部分もちゃんと原作に馴染むような雰囲気に仕上げていたと思います。
まあ、だからこそ当時の日本の刑事ドラマとしては地味だったのかもしれませんけれども(;^ω^)
それでも、原作の87分署シリーズは日本国内でもそれなりに人気があったらしく、『裸の街』以外でもいくつか映像化されています。
中でも、富豪の息子と間違われて運転手の息子が誘拐されてしまう『キングの身代金』は人気があって、古くは黒澤明が映画にしています。
もちろん、『裸の街』の中でも扱われていました。
私が個人的に好きなのは、主人公キャレラの妻がピンチに陥る『殺意の楔』です。
エド・マクベインが亡くなったあと、日本で追悼として作られたドラマは、この作品が元になっていました。
そういえば、『裸の街』では各話のサブタイトルが原作の邦題であることが多くて、『キングの身代金』や『殺意の楔』はそのまま使われています。
あと邦題『クレアが死んでいる』は、ドラマの中でクレアが泰子となっていることから『泰子が死んでいる』となってたりと、基本原作ありきの姿勢も、原作を知ったあとでは『裸の街』が好きになった理由の一つかもしれません。
さて最後に、警察小説と推理小説の違いについて。
少なくとも87分署シリーズを読む限りでは、警察小説というのは、刑事や警官らがさまざまな事件に遭遇しつつも、それらを地道な捜査や時には直感で解決したり、時には解決できなかったり……といった、刑事・警官らの日常や心情に重きを置くもの、といった印象です。
対して推理小説は、探偵役がいて犯人はなんらかのトリックを用いて犯罪を行い、それを探偵役が推理によって暴くもの、といった感じですね。
あと、日本における刑事ドラマは、この両方の要素を含んでいると思いますが、『裸の街』が放送されたころは、派手なカーアクションとか爆発とか、人気のある若手刑事が非業の殉死を遂げるとか――といった感じのものがもてはやされていた気がします。
いやもちろん私も、そういった刑事ドラマも嫌いじゃないですし、推理小説も好きです。
これは、どちらが良い悪いの話ではなく、こういう違いがありますよ、といった話です。
――ということで、今日はなんとなく思い出したので、懐かしいなと思いつつ、書いてみました。
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