三点監視の応用.9 ―統合政府.6(ソ連という統合政府)―
統合政府の実態を垣間見るには、そのものを見ると良いでしょう。
というわけで、過去のソビエト連邦は正に統合政府ですので、それを見てみます。
ソ連時代の中央銀行の役割を担っていたのは
「ゴズバンク」
と呼ばれていました。
おや?中央銀行がある、ということは政府と分離した組織なのだから、統合政府じゃないのでは?
と思われるかもしれません。
資本主義国の場合、中央銀行とは確かに「政府の子会社」という立場はあるのかもしれませんが、同時に
「市中の民間銀行同士との接続銀行(銀行の銀行)」
でもあるので、
民間銀行の合弁会社
という一面も持ちます。
政府の子会社とはいえ完全に一体化した組織にはなりえません。
これはアメリカの「FRB」も、イギリスの「イングランド銀行」も同じです。
しかし、ゴズバンクは違います。
ゴズバンクという言葉、日本語では「ソビエト連邦国立銀行」と書きます。
国立、ということは民間銀行の影響を一切排除した「国営銀行」なのです。
これは確かに「政府の子会社」でしょうが、私たちの考えるような「同じ組織の傘下に入っている別組織」ではありません。
「同じ組織内に別部署がある」
というような環境になります。
その証明として、ゴズバンクと同じような部署がソ連にはありました。
「ゴスプラン」と呼ばれるソビエト連邦国家経済委員会
「ゴススナブ」ソビエト連邦国家原材料供給委員会
両方ともソ連財務省の下部組織です。
名前から分かる通り、ゴズバンクはその2組織と同じ
経済当局「3ゴズ」の1組織
だったわけです。
さて、ゴズバンクには「市中の銀行同士との接続銀行(銀行の銀行)」という機能はほぼありません(銀行間の貨幣の移動はあるかもしれませんが)。
まず、市中の民間銀行、というものがソ連には存在しません。
ソ連では市中銀行において利子をとることが認められていません。
それどころか、
自ら銀行業を営む、という商業的自由が認められていませんので、市中銀行の全ては「国営銀行」となります。
その国営銀行の親玉なわけですからゴズバンクという「国立」銀行はつまり、本当の意味での
市中の国営銀行の親会社
なわけです。
ソ連国民の全ての人の貨幣・お給料等は、市中国営銀行の銀行業務に携わっている人たちの給料も含め、ソ連政府が財務省とゴズバンクを通じて支払われます。
中央銀行は政府の子会社なら市中国営銀行は、ゴズバンクの子会社であり、政府の孫会社なのです。
つまり、
政府の権力が、
貨幣という形で、全国民に強力に行き渡っている
わけなのです。
さて、これまで私は再三、
統合政府は恐ろしい、
ということを訴えてきました。
財政ファイナンスを行い、国債廃止をし、統合政府を希求する、ということはソ連のゴズバンクを再び復活させるようなものです。
正直言って、何故そんな話がMMTという「現代」の貨幣理論の中でも望まれているのか?
私は
「今一度正気になれ」
という言葉以外には思い浮かびません。
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